7章-16 力の代償
「おい、ちょっと待て!」
今スネークは何を要求した?俺の『生前の記憶』を寄越せだと?それじゃ俺は何のためにここ地獄で働いているのか分からなくなる。転生するという『理由のために力を求めて』いるというのに、こいつは『力を与える代わりに理由を手放せ』と言っているのだ。そんな条件呑めるはずがない。
「何を慌てておる?力が手に入れば一気に完済に近づくというのに。それとも、おまえはあれか。」
スネークは懐から煙草を取り出すと何やら呟いて火を点けた。そしてそのまま煙草を咥える。
「おまえより小さな女の子やハーフエルフの少女が命燃やして戦っているというのに、おまえは影で見ているだけなのか?このままずっと。」
スネークは煙を吹きながら、ニッと笑った。こいつのペースに飲まれてはいけない、そうは分かっているのだが、こいつが言っていることも正しい。俺はローズやランス、その他の異世界の住人に何度助けられているのか。森の中でのスライム狩り、闘技場での化け物の騒動、洞窟でのミノタウロス退治、そしてこの前の村でのミノタウロスとの戦い。俺は相手が強いと分かると逃げてばかりいた。だが、その度異世界の住人達が命を懸けて戦ってくれていた。
「本当にこのままでいいのかい?本当に?」
スネークの言葉に俺の心が騒めく。このままで、いいはずがない。俺が何故ここまでこの地獄でやって来れたのか。無力な俺をローズやランスが見捨てず、ずっと協力してくれたからである。彼女達に見捨てられたら俺一人では何もできないであろう。
「どうするべきか、もう本当は分かっているんじゃろ?そして他に選択肢がないということも。」
そうであった。俺はここに覚悟を決めて来たのだ。俺のために命を懸けて戦ってくれるパーティメンバーのために。初めから迷うことはなかったのではないか。
「そうだ、『生前の記憶』なんてくれてやる!だから俺に力をくれ!」
俺の言葉を聞いたスネークは「ふむ」と煙草を灰皿に擦り付ける。そして懐から仮面を取り出す。それは鱗のような模様があり、真っ白な仮面であった。まるで蛇の顔のような形をしたーー。
「契約は成立だ。我はそなたら人を甘い言葉で惑わす者、よって『蛇』である。」
直後、俺の視界は闇で包まれる。




