7章-15 力の代償
「そろそろ来ると思っていたよ。」
スネークは拠点であるボロいテントの前で杖をついて立っていた。空いた左手で髭をいじりながらこっちを見ている。どうやら俺がここに来ることを知っていたらしい口振りである。
「賢者のあんたなら俺に『呪いの印』を入れられるだろうと思ってな。」
「『呪いの印』?ブレーメンがそう言っていたのか?」
スネークは立っているのが疲れたのか、近くのパイプ椅子に座った。
「あれは英雄と共に歴史を歩いて来た物、そんなものを『呪いの印』と呼ぶとはな。」
俺はブレーメンの言葉を思い出した。「『英雄の証』だとか美化している奴らもいるが、おっさん達騎士は『呪いの印』と呼んでいるよ。」このスネークは『英雄の証』と美化している一人らしい。
「その名前を聞いたというのなら、『それ』がどんなものか知っているのだろう?どのような性質を持ち、そしてどのような末路が待っているのか…。おまえにはそれを受け入れる覚悟があるのか?」
スネークはこちらを見ながらニヤニヤと笑っている。どうやら俺のことを試しているらしい。俺は覚悟を決めて来たはずだがーー。
「やっぱり痛いのか?」
一歩後ずさりしてしまった。ここまで来てこのチキンっぷりである、自分が嫌になる。
「さあ?儂の体には入れておらんからのう。」
スネークは髭をいじりながらをこっちをチラチラと見る。こいつはあれだ、エンマ大王みたいに外から人を見て楽しむタイプだ、質が悪い。
「しかし、どうするんじゃ?結局体にその印を入れるのか、入れないのか。」
スネークは悪い笑みを浮かべながら俺の答えを急かす。パーティメンバーのローズもランスも命を懸ける覚悟をしているのだ、俺も決心しないといけない。
「ああ、今日はあんたにその印を入れてもらうために来たんだ。俺の体にも頼む。」
「ふむ、その覚悟はよく分かった。だが、おまえは儂に何をくれるんじゃ?」
「は?」
俺はやっとのことで覚悟を決めたのだが、スネークの予想外の言葉に声を出してしまった。
「『等価交換』という言葉を知っておるじゃろう。儂はおまえに大事な『英雄の証』の力を与える。それなら、おまえは何か別の大切な物を差し出すのが誠意というものじゃないか?」
「大事な物か、何だ、金か?」
「そうじゃ!丁度いいのが在ったではないか。」
スネークはわざとらしく何かを思いついたような仕草をした。何だか嫌な予感がする。
「おまえが最も大事にしている物、『生前の記憶』を差し出せ。」




