7章-14 力の代償
俺とローズは娯楽街のベンチに座った。ローズは余程腹が減っていたのかサンドウィッチに夢中である。娯楽街はいつも通り罪人と移住者で混み合っていた。
「ここはいつも通りだな。」
「そうですね、いつチグリス様が攻めて来るか分からないのに。」
あちこちから客寄せの声や値切り交渉が聞こえていて反乱が起こっているとは思えない程平和である。
「でも騎士団の方々が巡回してくれているので安心してるんだと思います。教会の方々も手伝っているようですし。」
ローズが娯楽街を見回っている銀色の騎士を指さす。闘技大会の狼仮面や昨日見たブレーメンを思い出す。人間離れした戦闘能力を持っており、あいつらが所属している騎士団そのもののレベルが高いことが容易に想像できる。
「ミノタウロスを瞬殺したブレーメンには驚いたな、あとランスにも。」
今居ないパーティメンバーの名前を出すとローズは黙り込んでしまった。昨日のランスの暴れっぷりとそのあと死んだことに驚き、そして責任感を感じてしまっているんだろう。
「ローズに聞かなきゃいけないことがあったんだ。何で魔術師をしている?魔法を扱うのは危険だとキクノから聞いたぞ。」
俺の問いにローズは少し考えている様だった。
「私も初めは母と同じ剣士を目指していたんですが、全く才能に恵まれていなくて…。それでも私と母は急いでお金を貯める必要があるんです。少しでも早く戦えるようになるためには、危険を冒してでも魔法に手を出さなければならなかったんです。きっと、ランスちゃんもそうだったのではないかと。」
「才能がないならその命を懸けろ、他に懸けられるものもないだろう?」俺にこの短剣を渡した憎らしい誰かが言っていた、もう顔も思い出せないが。ローズもランスも「才能」が無いから周りに追いつこうと必死に命を懸けて戦っているのだろう。初めから覚悟していなかったのは俺だけだったという訳だ。それなら俺もそろそろ決心しなければならない。
「ローズ、ランスのことは任せた。起きた時誰も居なかったら寂しいだろうからな。」
「勇者様、いったい何処へ?」
「ちょっと用があってな。」
ローズは少し不安そうにこっちを見て来るので、適当に流した。俺は速足で目的地に向かった。
俺は今闇市に居た。今日もこの前来た時と変わらずゴロツキや怪しいものを扱った商人が居た。そして、老オークがゴミ山の前で立っていた。
「そろそろ来ると思っていたよ。」
老オークがニマっと笑った。




