ブレークタイム5 メイドは見た!
「よいしょっと。」
ある夜エンマ大王のメイドであるユリはいつも通りゴミをゴミ捨て場に運んでいた。不器用なユリでもできる数少ない仕事である。料理、掃除はダメ(早い段階でミイラに見捨てられた)、庭仕事もダメ(キンには慰めの言葉を掛けられた)であったため、必然的に物を運ぶ力仕事が回って来る。中庭を通ろうとした時である。いつもエンマ大王が使っているテーブルに誰かが居る様だった。エンマ大王は書斎で仕事をしているはずなので、気になったユリは思わず庭木の裏に隠れた。別にやましい訳ではないが、こう誰かが秘密話をしているとワクテカしてしまうのだ。
「誰だろうか。」
少しずつ目が慣れて来て姿がようやく視認できた。作業着を着た金髪の青年のキンと麦わら帽のボロいジーンズジャケットのブレーメンであるようだった。二人は何か小声で話しているようだ。
「それは本当か?」
「ああ、おっさん達に協力してくれたらな。おまえの望みが叶う訳だ。」
「…分かった、俺も協力しよう。」
「それじゃ、交渉成立ってことだな。こちらで合図するまで待機していてくれ。」
途中からで何を言っているのかよく分からなかったが、話はこれで終わったらしい。キンが屋敷の中に戻って行った。そして、ブレーメンも去ろうとしたときまた一人やって来たようだ。エンマ大王と同じくらいの身長で、白のマント、そしてバッタのような特徴的なヘルム、騎士団長のソラトだ。
「おい、ブレーメン、おまえまた何かやらかそうとしてるだろ?そのにやけた顔で分かるぞ。」
「何言ってるんですか騎士団長、俺はただこの雑誌を読んでいただけさ。あんたも読むかい?」
ブレーメンはへらへらしながら何やら裸の女性が載っているいやらしい本をテーブルの上に広げる。
「昨日今日でミノタウロスの退治で疲れてるんだ、自由時間くらい大目に見てくれよ。」
「自由時間だ?今エンマ様は執務中だ、おまえも手伝うべきだろう。」
ソラトはへらへらしているブレーメンに「仕事に戻れ」と注意する。
「はいよ、それじゃあ、仕事に戻ろうかね。この雑誌は好きにしてください、拾ったものなんで。」
ブレーメンは屋敷に戻ろうとする。ソラトはそんなブレーメンの肩を掴む。
「おい、何を企んでいるのか分からんが、ナイルに手を出そうものなら俺は容赦しないからな。」
ブレーメンはソラトの手を払うとソラトの方を睨みつける。それは殺意のこもった視線であり、ソラトに向けられた敵意であった。
「そうだな、エンマ大王を守るのがあんたの仕事だものな。まあ、頑張って頂戴よ。」
何事もなかったかのようにブレーメンは屋敷の中に消えて行った。ソラトはそれを見送ると屋敷の外に歩いて行く。団長自らが見回りに行かなければならない程人手が足りていないらしい。そして、誰も居なくなったことを確認してユリは立ち上がる。どうやら誰にも気付かれなかったらしい。
「ブレーメンさんとソラトさんって仲悪かったんだなー。」
ユリはテーブルの上に広げられたものを持っていたゴミ袋に入れる。巨乳だの何だの書いてあったが、男性陣はそんなに胸が好きなんだろうか。ユリは自分の胸を確認して虚しくなった。




