7章-12 力の代償
「ああ、食い過ぎた。」
何だか胸がむかむかする。朝からステーキをたらふく食ってたら胃もたれするのは当然であるのに何であんなに食べてしまったのか。村長が皿が空く度に気をきかせてどんどんおかわりを持って来たからである。村長も俺と同じくらい食べていたはずだが何も変わった様子は無かった。異世界の人間はどれだけ強い胃を持っているんだろうか。
「しかし、今日は騎士を多く見かけるな。」
俺は今教会に向かって歩いているのだが、それだけで何度か巡回中の武装した騎士を見かけた。あとは普段あまり見かけないが武装した神父達も見かけた。騎士達や神父達の武装から何だか重々しい雰囲気を感じる。何も起きなければいいのだが。
「まあ、一応既に起きているのか。」
エンマ大王の姉妹であるチグリスがエンマ大王の労働条件に不満を持つ罪人達を集め洞窟のダンジョンの先にある城に引き籠ったのである。そのうち攻めて来るらしいという話であるが、巡回している騎士と神父が増えたくらいで罪人達も普段とあまり変わらない生活を送っている様だった。あれこれ考えていたら教会に着いた。出入口にいつもお世話になっているちょび髭の丸っこい神父が立っていた。背の丈程の大剣を持って。
「どうも、今日は物騒な物持ってますね。」
「これはこれは、今日もいい天気ですね。」
俺の挨拶に笑顔で対応する神父様。いつもと変わらない笑顔だが、何か冷たい物を感じる。
「労働組合の方々がここで蘇生されたら確保しろとのことでしたので。貴方は違いますよね?」
ああ、これかと納得した。昨日のブレーメンと同じ感覚である。つまり今の俺に向けられている物は殺気であった。
「そりゃ、やましいことがあったらこんなに堂々と歩けませんよ。」
「そうですか、それなら良かったです。」
神父様は確認したあと剣を地面に刺す。すると先程までの殺気は引いて行った。通っていいということだろうか。
「いつもお連れの魔術師の女の子も来てますよ。声を掛けたら如何です?」
きっとローズのことだろう。俺は神父に礼を言うと教会の中に入った。確かに1つの棺の前で柱に身を任せてうつらうつらとしている黒マントに黒い長帽子の少女が居た。こんなことだろうと思っていた。俺が死んだときも蘇生されるまで待っていた少女である、仲間であるランスも例外ではなく徹夜して棺の前で待っていたらしい。
「どんだけお人好しなのかね。」
生命エネルギーを魔力に変換し死んだら蘇生には丸々1日かかるとエンマ大王は言っていた。今日の夜までこの少女は待っているつもりだったのだろうか。
「しかし、よく眠っていらっしゃる。」
美少女が近くで眠っているのだ、何か悪戯したくなるのは俺だけじゃあるまい。俺はローズに気付かれないように近づき、耳に息を吹きかけてみた。
「!?」
ローズは肩をビクッとさせて飛び跳ねた。そしてこちらを睨みつける。
「おはようございます、よく眠ってましたね。」
「…意地悪な勇者様は嫌いです!」
俺から目を逸らしムスッとするローズ。何このかわいい生き物。そして間の抜けたような音が鳴り響き、ローズが恥ずかしそうに顔を赤くする。
「朝食も食べてないんだろう?少し外で話をしよう。」
「…勇者様が奢って下さるなら。」
教会を出る際にまた神父様に挨拶をし、俺達は娯楽街に向かった。




