7章-9 力の代償
ミノタウロスの血を浴びたランスは右手で斧を軽々と振り回し、逃げようとするミノタウロスを追撃する。普段から怪力だということは分かっていたが、何か様子がおかしい。普段よりより一層力が増しているように見えたり、普段よりも移動能力が上がって見えたり、そして何より普段は緑色の目をしているのだが今は赤く染まっており、血に飢える肉食獣をイメージさせる。
「おおおおおお!!」
咆哮をあげるランスはミノタウロスに追いつくと、左手でミノタウロスの頭を地面に叩きつける。そのままミノタウロスの上に馬乗りになり斧を振り上げる。そして、それをミノタウロスの頭に叩きつけて頭をかち割った。ミノタウロスはそのまま動かなくなった。
「ランスってあんなに強かったのか…。ミノタウロスを狩れるほどの能力を持っているなら、そう言ってくれたらよかったのに。俺達が頑張る必要もなかったってことか。」
俺はその場で立ち上がり、つい思ったことを口にしてしまった。するとブレーメンがすぐにこちらに寄って来て俺の顔面を思いっきり殴る。俺はそのまま吹き飛ばされ、その辺の木に背中を強打する。
「いきなり何をするんだよ!?」
俺はすぐに立ち上がりブレーメンに詰め寄った。
「おまえ、ちょっと無神経過ぎるぞ。無知なら何でも許されると思っているのか?」
ブレーメンは俺に敵意の視線を向けると、ランスの方に走って行った。いつもふざけているブレーメンだが、さっき俺に向けられた目からは殺意を感じた。何がどうなっているのか分からない俺はそのままブレーメンを追ってランスの元に行くしかなかった。
「お兄ちゃん、無事でよかった…。」
ランスは俺の方を見て笑うと、その場に崩れるように倒れた。それを見て心配したのか隠れていたローズとローズの母も寄って来る。俺達は何が起こっているのか分からずあたふたしているとランスの体が少しずつ薄れていって、その場から消えた。
「おい、おっさん、何が起こったんだよ!?説明してくれ!」
「何が起きたって、おまえも何度か体験しただろう?…死んだ罪人は教会で蘇生される。だから今教会に送られたんだよ。嬢ちゃんは死んだんだ、俺達を庇ってな。」
ブレーメンは煙草を口に咥え、ライターで火を点ける。俺はショックで何も言葉を発せなかった。身近な人が目の前で何故か死んだのである。自分は何度も死んだことがあるが身近な人の死を目の前にしたのは初めてだった。
「騎士殿、これはどういうことだ?今何が起こって、なぜこの娘は死ななければならなかったんだ?」
ローズの母がブレーメンの方を睨む。ブレーメンは不味そうな顔をすると口から煙を出す。
「何だ、あんた達も知らないのか、『呪いの印』のことを。」




