7章-6 力の代償
目が覚めたら綺麗なベッドの上であった。ベッドが4つ並べてあり、家具はあとタンスととても質素な狭い部屋である。そういえば私は頭に石を投げられて…。近くの化粧台の鏡を確認すると乱暴ながら大きな絆創膏が貼ってあった。近くの窓から外を見てみると辺り一面畑か田んぼであった。そんなとき後ろドアがガチャっと開く。そして私より少し年上であろうか、黒髪でツインテールの少女が入って来た。すこし強気そうな目付きが特徴的である。
「王様―、金髪の女の子目が覚めたみたいー。」
私を見るなり誰かを呼び出す少女。すると気を失う前に見た黒髪長髪の青年が部屋に入って来た。
「目が覚めたのか、それならよかった。」
青年が寄って来て私の頭をわしゃわしゃと撫でる。どうやら私はこの青年に拾われたらしい。奴隷商か何かだろうか。
「あの、私助けてもらったのですけど、何も払える物が無いです…。」
「ああ、金か、そんなものいらん。」
そして青年は忘れていたというような表情をし、付け加えるようにして言った。
「私は見ての通りこんなド田舎の国の王だ。あとは好きにするといい。」
少女に案内されたのは先程まで入っていた建物の裏側であった。そこでは私達より年上らしい金髪の少年と黒髪の少年が薪割りをしていた。
「今日来た新人よ。」
ツインテールの女の子が少年たちに寄って行く。すると金髪の少年が作業を辞めてこっちの方を向く。
「ああん?」
汗を拭いながら思いっきりこちらを睨んでくる。私は思わず少女の後ろに隠れてしまった。
「ああ、気にしないで。こいつ、いつもこんな感じだから。」
少女は私の方を見て苦笑いをする。
「この子に乱暴したら許さないからね!」
「誰がこんな小っちゃいのに手を出すかよ。」
口論になる二人。そこに黒髪の少年が二人の頭に拳骨をする。
「何するんだよ?」
「怯えてるだろうが。」
黒髪の少年がこちらを向くと、あとの二人もこちらを見た。
「ごめんね?別にあなたに非は無いから。」
少女はこちらの方を見て謝って来た。一方の金髪の少年はそっぽを向く。
どうやら私以外の3人も最近王様に拾われてきたようだ。私と同じ様に「好きにしろ」と言われたから建物内の食料やら風呂やらを使って勝手に生活しているようだ。
「まあ、他に行く所もないしね。」
少女は苦笑いする。あとの少年達はまた薪割り作業に戻っていた。この人達も何かと訳アリらしい。
「それじゃ私と今から洗濯物をしましょうか。『働かざる者食うべからず』って言葉もあるしね。」
そこから私達は近くの川で雑談しながら洗濯物をした。この前炊いた米がベチャベチャだったこと、金髪の少年の下着が風に飛ばされ大変だったこと等面白おかしく話してくれた。
「あっ、貴方のことはなんとお呼びすればいいですか?」
私が訪ねると少女は少し表情が固まる。何かいけないことを聞いただろうか?
「実はね、私達3人は路上で生活しててね、自分の名前どころか親の顔すら覚えていないの。あいつにはこの話しちゃ駄目よ?不機嫌になるから。」
あいつとは金髪の少年のことだろうか。
「でも、そうね。名前が無いと不便だものね。」
少女の提案で私と少女と二人の少年は建物内の玉座で剣を磨いている王様の元へ行った。玉座と言ってもとても古くて、埃をかぶって白くなっている。私は額に傷が入った強面の顔が怖くて少女の後ろに隠れてしまった。
「何の用だ?『好きにしろ』と言ったはずだが。」
「そうよ、だからここで暮らすことにしたの。でも私達名前を持ってなくて、だから貴方に名前を付けてもらおうって思った訳。」
少女のセリフに「ほう」と軽く反応する王様。
「好きに呼び合えばいいだろうに。」
「貴方、勝手に私達を拾っておいてそのまま放置っていうのは酷いんじゃない?王を名乗る位なら行動に責任を持ってもらわなきゃ。」
「それで王の最初の仕事として名前を寄越せ、と。」
すると、王は黒髪の少年の方を指さす。
「君はこの中で一番賢そうな顔をしているな。どこぞの学者の名前だが『レオナルド』と名付ける。」
次に金髪の少年を指さす。
「金髪の少年、君だがーー。『ジニー』でよかろう。」
「おい、何だか俺は適当だな!?」
次に王様は私達の方を見て、少し考える。
「君たちはとても仲が良さそうだな。どこかの国の騎士に『ランスロット』というのが居たそうだ、こいつの名前を二つに分けてだな、金髪の君は『ランス』、黒髪の君は『ロット』だ。」
「『ロット』?何か変な響きだし、もっと可愛い名前は無かったの?」
少女は何か不服そうな顔をする。王様はそれを見て鼻で笑う。
「名前を付けろと言ったのは君だろう。」
王様に言われて何か言いたそうにするが少女は黙り込む。
「『ランスロット』、名前は格好いいだろうに。まあ、裏切りの騎士の名だが。」
「それで王様、あんたの名前は何と言うんだ?王様じゃ呼びにくくて堪らん。」
金髪の少年は逆に王に質問した。
「周辺国からは『ヘルグランド』と呼ばれているよ。まあ、君達の好きなように呼んでくれても構わない。」
王様、ヘルグランドはそう言うと玉座から立ち上がり、私達の横を通り過ぎていく。
「私は今から出て来る。君達は好きにしてると良い。」
「『ジニー』ねえ、もっと格好いい名前なかったのかよ。」
ジニーは不服そうである。
「何言ってるの、私の名前よりいいでしょう。」
ロットがジニーを慰めるように言った。こっちも不服そう。
「でも、皆さん、名前をもらうというのは良い気持ちがしませんか?」
私が言うと、みんなは黙り込む。だが口元は笑っていたのでなんだかんだと嬉しいらしい。
「それじゃ、ランス、洗濯物を干しに行くわよ。」
私はロットに手を引かれ建物の外に出る。何だか心が温かい。こんな日が続くといいのだが。




