7章-4 力の代償
何とかブレーメンより先にエンマ大王の屋敷の近くの村までたどり着いた。村では作業着を着たエルフやオークや獣人がのんびりと農作業をしていて、ここでは時間の流れがゆっくりと感じる。
「ばあちゃん、ローズは何処に居るか知ってるか?」
とりあえず俺は近くを歩いていたエルフの婆さんに声を掛ける。この村にはよく仕事を回してもらっているため(俺が戦闘が得意じゃないからよく農作業とかを手伝っている)、俺達の顔は村中に知れ渡っており、村のみんなとは知り合いである。
「ああ、ローズちゃんならうちの爺さんの畑に居るよ。」
婆さんが指を指して教えてくれた。
「おう、サンキューな、ばあちゃん。」
後ろからブレーメンが俺を抜き去って行く。先程娯楽街でキクノに射られているというのにピンピンしている。強いて言うなら服が少し汚れていた程度であった。
「あれま、騎士様がどうしてこんな所に。」
婆さんの声を背中で聞き流しながら俺はブレーメンを追う。
「どうして、異世界の人間はこうも体が丈夫なのかね?」
「おまえらが平和ボケしてるだけだぞ、坊主。」
俺は必死に走っているはずなんだが、やはりブレーメンの方が速い。どうにか追い付こうとするが開いてしまった距離が全然縮まない。そうして走っていると畑に農作業着で作業している茶髪の少女と金髪ポニーテールの少女が視界に入った。
「お嬢ちゃん、噂通り、いやそれ以上に美しいね。」
先に畑に着いたブレーメンが何処から出したのか花束をローズに差し出す。当然、ローズは急に声を掛けられたので困惑している様子である。
「え?エンマ大王様の護衛のブレーメンさん?どうして?」
ローズは少し遅れて着いた俺の方を見て説明を求める。俺は息切れしていて答えられない。そんな時であった。ブレーメンの首に剣を突きつける一人の女性。背中程の流れるような金色の長髪、尖った耳、ローズの母であった。
「うちの娘にナンパとはなかなかいい身分ですな、騎士殿。」
剣を突きつけられたブレーメンは降参と言わんばかりに両手をひらひらさせる。そう言えばローズの母はいつも村の警備をしているのであった。別に俺が必死にブレーメンを追う必要は無かったのか。
「貴方は騎士としての品位に欠けている。その不潔な無性髭を剃って、銀の甲冑着て出直して貰いたい。」
ローズの母はブレーメンに嫌悪の視線を送る。確かに女騎士であるローズの母はこんなヘラヘラしたおっさんのことは嫌いそうである。
「ちょっとふざけただけじゃないか、この程度で斬首は勘弁してくれ。俺は今日からあんたの娘さんの仕事仲間なんだぜ?」
「それはそれは。どういうことか説明してもらいましょうか、勇者様。」
ローズの母の鋭い眼光がこちらに向けられる。ローズやランスも俺に説明を求めるように目を向けて来る。同じパーティメンバーになる以上この状況は予想されていたはずだ。ローズの母の逆鱗に触れなきゃいいがな、俺も切り殺されかねないし。




