6章-10 蛇の名を持つ者
ブレーメンに案内されたのは娯楽街から少し外れた所であった。モヒカン頭の囚人服やリーゼント頭の囚人服とか昔読んだ漫画のヤンキーみたいな連中がたむろしていたり、サングラスをかけた怪しいオークがブルーシートを敷いて何か売っている。その店先には何やら怪しい植物や白っぽい粉が並んでいる。
「ちょっとここはあれな連中が集まるところさね、まあ『闇市』とおっさん『達』は呼んでるがね。」
「達?」
ブレーメンが煙草に火を点ける。それじゃあの植物とか粉は麻薬とかその類だろうか。
「あっ、やべえ、騎士が来たぞ。」
ブレーメンの声を聞くなり固まっていた奴らや商人は何処かに逃げ去って行く。
「この地獄でもこんな感じの薬の所持、販売は処罰の対象だな。ここ最近は特に移民や貴族達の被害が多くてな、おっさん達は毎日手を焼いているよ。」
「おっさんって騎士団の一員だったのか。」
「まあ一応な。この前もエンマ様の護衛をしてただろう?」
今一度ブレーメンの格好を見てみる。茶色のボサボサ頭、後ろで結ばれたロン毛、無性髭、ボロいジーンズ素材のジャケット、そして背中に背負った古いアコースティックギター。何度見ても騎士とは縁の無いような風貌である。何と言うか清潔感が足りていない。騎士要素は強いて言うなら腰にぶら下げている剣くらいであろうか。
「何だ、ジロジロとこっちを見て。あんまり見られるとおっさん困っちゃう。」
「キモい。」
わざとらしいブレーメンのもじもじした動きに率直な意見をぶつける。
「馬鹿正直な反応ありがとうな、坊主。おまえはもう少し遠慮というものを覚えると良い。」
ブレーメンは煙を吐く。仕返しと言わんばかりにこっちに向かって吐いて来る。
「こっちに煙草の煙を吐くんじゃない!」
「何だ、死んでるというのに健康に気を使ってるのか?」
「うるさいな、俺の世界では煙草は20歳からだったんだよ。」
「『勇者19歳』ねえ、それは勿体ないことだな、こんな美味い物吸えないなんてな。」
ブレーメンはケラケラと笑う。『勇者19歳』の噂がここにも伝わっていたようだ。まあ今更驚きはしないが。
「そんでこんな所で本当に記憶が取り戻せるんだろうな?」
「まあヒントは貰えるだろうな。」
少し道なりに進むとボロい小さいテントの前に着いた。周辺には色々なゴミ(俺にはそう見えた)が積まれており不清潔極まりない。ブレーメンはそのゴミ屋敷の中に入り込んでいく。
「おい、スネーク居るか?」




