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勇者19歳  作者: 河野流
2章 勇者
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2章-1 勇者

酒場に着くとすごい人だかりであった。日頃の愚痴をこぼしている者、楽しそうに飲んでいる者など多彩である。あっちではオーク達が宴会をしているのだろうか、とても賑やかだ。ここは地獄ではないのではないかと錯覚するくらいである。とりあえずカウンター席に座る。そうすると、バーテンダーの男がスッとメニュー表を出す。

「お客さん、何がご希望で?」

「んー。」

言いながら今日までクエストが失敗続きで自分が一文なしなことを思い出した。気まずいのでバーテンダーから目を逸らす。

「―水をくれ。」

「・・・・・・。」

バーテンダーは全てを察したようで哀れなものを見るような目でこちらを見る。

「お客さんここに来るのは初めてだね、あまり見ないような顔だ。」

バーテンダーは水の入ったグラスを目の前に置いてくれた。一口飲んでのどの渇きを潤す。

「そうだな、パーティメンバーになってくれる人を探しに来たんだがー。」

するとバーテンダーは紙と鉛筆を取り出した。

「ここに名前と職業を書いて下さい。ここで紹介するには登録して頂くことになっています。」

俺は紙と鉛筆を受け取る。名前か、生前のものでもいいが何かかっこいい名前を付けるのもありだな。あと職業てあれか?戦士とか盗賊とか。

というわけで名前に銀河(ふり仮名にギャラクシーと書いた)と書き、職業欄には無職と書いた。するとバーテンダーは険しい表情をする。

「ギンガさんでよろしいですね?」

こうして俺の名前はギンガになった。

「無職というのも困ります。何か書いて下さい。」

「そう言われてもな。」

大学生と書くわけにもいかないだろう、生前の話だし。

「ここ地獄の酒場に来ているのはあなたのような罪人たちと何らかの手段で出稼ぎに転移して来た者くらいです。そんな流れ者ばかりですから何かしらの職業を書いてもらわないと紹介もできないでしょう。」

「そんなこと言われても実際無職なわけで。」

ギンガがそう返すと、バーテンダーがギンガに耳打ちする。

「もう自称でも構いませんから。」

それならとギンガは職業欄に勇者と書いた。こうして俺の職業は勇者(自称)になった。すると周りの空気が静まり返る。

「勇者だー!!ついに勇者様が現れたぞー!!」

俺が職業欄に勇者と書いたのを横のエルフのおっさんが言いふらしたからだ。まずはオークが寄って来た。

「勇者様、勇者様の力で野良ドラゴンにとどめをさしてくれ、朝方吠えてうるさくて起こされるんだ!!」

次は俺と同じ人間のおっさんが寄って来た。

「いや勇者様は俺らとユニコーンを狩りに行くんだ。勇者様の魔法で俺らを援護してくれ!!」

そうするとあちこちから「いや俺が」「俺が」と声が挙がる。勇者という職業は彼らにとっては文字通り英雄であり簡単に自称していい職業ではなかったのだ!

「やばい、どうすればいいんだバーテンダーさん?」

先程までバーテンダーの居た所を見るとすでに居らず、客の注文を取りに行っていた。

(逃げやがったなー、どう収拾を付ければいいんだよ!?)

まあ、勇者って書いた俺が100%悪いんですけどね。

「あ、あの。」

そのとき少女の声が響いた。声の主は大きな帽子、黒いマント、魔術師と見てわかるような格好をしている少女だった。

「勇者様の力で薬草を取って来てくれませんか?うちの母親が高熱を出して大変なんです!!」

薬草?他のドラゴンだのユニコーンだのよりは全然楽そうだ。

「ん、よく聞いてくれみんな。」

俺が大きな声を出すと全員こっちに注目する。こんなに緊張するのは高校の全校集会の挨拶以来だろうか。

「本当は君達みんなの望みを聞いてやりたいが優先度というものがある。そこの彼女の望みが急を要しているらしい。あとは何も言わなくても分かるよな?本当はみんなの望みを聞いてやりたいんだが、本当だぞ?」

そう言うと周りから歓声が沸き上がる。「さすが勇者様」だの「惚れるー」だのみんなが俺を絶賛する。勇者コールまで起きた。ああ、もうこれ収拾付かないなと泣きたい気分になって来た。後ろの方で口笛を吹いている見慣れた影もあるではないか。

(あいつニートのくせに酒場なんて来てんじゃねーよ、つーか見てないで助けろよ!!)

こちらの視線に気付いたのか、赤ニートはこっちに手を振る。

こうして俺は母の病気を治すために酒場を訪れた少女を助けた勇者として地獄で語り継がれることになることになる。


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朱の国
番外編始めました
欲望の国
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