6章-7 蛇の名を持つ者
エンマ大王がいつものように中庭でココアを飲んでいると最近見なかった顔の男が歩いて来た。農作業着を着ていて金髪の頭である。
「あら、キン。帰って来たの?ほら貴方が居なかったからあちこち草が生えてるんだけど。」
「労いの言葉とか期待したこっちが馬鹿だったか。」
キンが愚痴をこぼすがエンマ大王は興味なさ気である。少し甘さが足りなかったのかココアの粉を追加で投入している。
「あっちではアトラスが大暴れして大変だったそうね。」
「そうだよ、何でそんな大事なことを言わなかった!?危うく死にかけたぞ!」
「あら、貴方なら本気を出したら仕留められたんじゃない?貴方得意の槍ならば。」
エンマ大王はキンを見つめる。その澄んだ金色の目で見つめられたら全てを見透かされているような気になってしまう。
「…あいつの方が遥かに上だよ。俺の槍なんかじゃ怯みもしないだろうさ。」
「貴方が気にかけている女の子も大変そうだったわね。」
「どこまで俺のことを調べてるんだ?」
キンの質問にエンマ大王は今読んでいた黒い本の表紙を見せて答える。そこにはキンの生前の名前が書かれていた。
「あと貴方なら姉さんの首を持って来れるんじゃないかとも期待してたんだけどね。」
「確かに城には忍び込めたが、あの量はヤバかったぞ。誰かが大将の首を取ろうものならやけを起こしてミノタウロスを放流しかねないと思ったからな。」
「今地獄には何度でも蘇生できる貴方達罪人だけでなく蘇生の効かない移民も居るからね、その辺りを考慮したら貴方の判断は正しかったんじゃないかしら?本当に貴方らしいというか。」
エンマ大王はキンの方を見てクスリと笑う。
「貴方は本当に暗殺書だったのか疑問に思うほど甘いわよね。本当にお金が欲しいだけだったら後先考えずに首を持ってくるはずだもの。」
「本当にそう思ってるならただの姉妹喧嘩に他人を巻き込むな。」
キンは悪態付きながら近くに置いてあった軍手を手に取り畑の方に歩いて行った。
「さて、私も仕事に戻ろうかしら。」
エンマ大王は立ち上がり屋敷の方に戻って行く。中庭のテーブルの上には一冊の黒い本とココアが入っていたティーカップだけが残った。




