6章-3 蛇の名を持つ者
「記憶を失うって、何で、それを早く言わない!!」
俺は思わず感情的になってエンマ大王の肩を掴んでしまう。だがエンマ大王は何も抵抗せず表情も変えずにただ俺に揺すられるだけだった。
「落ち着いて、お兄ちゃん!」
ランスが俺の腕を掴む。それを見て俺は正気に戻り、エンマ大王から手を放す。
「どう?少しは落ち着いたかしら?」
エンマ大王は俺に乱された髪を手で直す。
「そして『何で言わなかったか』だったわね。答えとしては『聞かれなかったから』かしらね。でもよく考えてごらんなさい、何の代償もなしに蘇生できると思うのは都合が良すぎると思うのだけれど。」
「でもそれを言わないのは酷いと思います。」
ローズがエンマ大王に抗議する。
「貴方達もそれを知っていたのでしょう?それじゃ何で教えてあげなかったの?」
「それは、勇者様はもう知っていると思ってー。」
ローズは言葉を詰まらせてしまった。エンマ大王はそれを見て微笑する。
「結局のところ貴方達も『聞かれなかった』から『言わなかった』んじゃない。そう、私を悪者扱いするなら貴方達も同罪ね。」
エンマ大王は微笑みながらローズに言葉を返した。いつもはただ可愛らしいと思うだけだったその表情を初めて冷たいものだと感じた。
「でも良かったじゃない、それのおかげで貴方は英雄になれた訳だし。私も本当に感謝しているのよ?」
エンマ大王は言うことを言い尽くしたらしく俺達に背中を向けて教会を後にしようとする。
「貴方達は何故そんなに記憶を特別なものと感じているのか分からないけれどね、忘れた方がいい人も居るということよ。」
エンマ大王は右手をヒラヒラさせると教会を出て行った。
「じゃあ今日も元気に、そして頑張って働きましょうね♡」




