6章-1 蛇の名を持つ者
「スネーク居るかい?」
スネークと呼ばれたローブ姿の老オークはボロいテントの中で眠っていたところだった。体中傷だらけの訪問者はぐっすり眠っているスネークの前にしゃがみ耳の近くで手をパン、と叩く。
「おお、赤ニートか、どうした?」
スネークはよだれを垂らしながらのっそりと起き上がる。
「こんなに貴重な魔術書を布団代わりによく寝れるもんだ。」
赤ニートは呆れながら老オークの近くに散らばった古い本を拾い上げる。
「そしてスネーク、あちら側にアトラスが居るとは聞いてなかったんだが?」
赤ニートは老オークを睨む。スネークは「ホッホ」とおどけて見せる。
「それじゃあれをここに連れて来るのは失敗した訳じゃな。いや、おまえならあの若造を成敗してくれるものと思ったんじゃが。」
「無茶言うな、あれは俺が本気でもどうにかなる相手じゃないぞ。」
「本当に本気でも無理なのかい?」
スネークは懐から煙草を取り出すと何やらもごもごと呟く。そうすると左手の指先から小さい炎が出たので煙草に火をつけ咥える。ボサボサの髭にボサボサの長髪で引火しないか不安な光景である。
「…。」
スネークの問いに赤ニートは無言で返す。それを見ながらスネークは大きく息を吐く。そして煙草の箱を赤ニートの方に差し出す。
「一本どうだい?」
「いつもいらないと言っているだろう。」
赤ニートが手を横にぶんぶん振って断る様子を見てスネークは笑った。
「こんなに美味いもんを吸わないだなんて勿体ない。」
「そんなタールの塊吸って何が美味いのか俺にはさっぱり分からんな。」
「ははは、死んでいるというのに健康に気を付けるのか。何度もあの娘に針山に投げ込まれ何度も死んだおまえが。」
老人は赤ニートに見せびらかすようにこれ以上美味い物はないというような素晴らしい笑顔で煙草を吸う。
「生前誰かと約束したんでね、何言われようがいらん。」
「そうか、それならいいんじゃよ。」
スネークは煙草の箱をまた胸にしまい込む。
「それで本題だ。いつまで待ってくれるんだ?」
「儂はいつでも構わんよ。ただ他の奴らがいつまで協力的なのかは分からんが。」
「なるべく早くしろっていうことか。」
煙草を加えたスネークは「ふむ」と頷く。スネークの反応を見ると赤ニートは立ち上がる。
「おう、がんばれよ、若人よ。」
老オークは座りながら赤ニートに手を振った。赤ニートは「ふん」とスネークから目を逸らすとさっさと何処かに行ってしまった。
「おっとまた何か迷っている者が居るようだ。」
老人は煙草を近くの灰皿に擦り付け近くに転がっていた不気味な仮面を手に取る。それはまるで蛇の顔のような形、模様の仮面であった。




