5章-6 キングオーク
今俺はここ地獄に来て以来の最高速度で洞窟の入り口に向かって走っている。加速魔法も併用しつつ全力で走る。明日は筋肉痛かもな。
「降ろして下さい、勇者様とランスちゃんがまだ!!」
俺の腕の中の少女がバタバタと暴れている。
「あまり我儘を言うな、本当なら俺は今チグリスの首を持って凱旋しているはずなんだが。そう、おまえが殺されかけていなければ。」
そう、俺はこの移民の少女を助けるために計画をダメにしてしまったのである。他の罪人共があの豚鼻巨人と騒いでいる間に城に忍び込むつもりであったのだが。この少女は移民であり、ここ地獄での死は許されていない、その点を考えるとこの行動は何らおかしくない訳で。
「あいつらは死んでもどうにかなるがおまえは違うだろう?そこを弁えろ。」
「うう。」
俺の説教に言葉を返せないのかローズは途端に大人しくなる。後ろから男達の悲鳴が聞こえて来た。どうやらアトラスがこっちを追って来ているらしい。あっちも俺の襲撃を予想をしていたのか全弾防いでいたし死ぬことはないと思っていたが予想以上に復活までの時間が早い。
「皆さんが大変です!」
またローズが暴れだした。
「おい、落ち着け。おまえ一人が行ってどうにかなる問題か?あれは地獄でも上から数えた方が早い強者だ。」
「どうにかできる力を持っていながらどうにかしようとしない人は嫌いです。」
珍しく敵意をこちらに向ける少女。ここまで正義感が強いヤツを見ると生前を思い出して嫌になるのでやめて欲しい。
「俺にあのオークを止められると?」
「闘技場では倒していたじゃないですか!」
闘技場に乱入した時の話だろうか。確かにあの時はあいつの頭を吹き飛ばしてやったが。
「それは過大評価だ、俺は不意打ちでしか倒せない臆病者だよ。」
「そんなことないです!貴方ならきっと、―ーさん!!」
「おっと、俺の正体に気付いていたか。でも他人の前で言うなよ?おまえを殺すはめになる。」
後ろから地響きが聞こえる。予想以上に速い。
「どうやらあいつも本気で追って来ているみたいだ、このままだったら洞窟から出る前に追いつかれそうだな。誰かが足止めしないとな、そう誰かが。」
「まさか!?」
「丁度いいところに勇者が居たじゃないか。自称じゃなくて本物になれるチャンスをやろう。」
俺は槍を持っていたという事象を再現しその槍を後ろにむかって飛ばす。
「さあ、勇者ならどうにかしてみろ、『勇者19歳』。」




