1章-3 心折れた者
ここ一週間の成果を整理しよう。
まず月曜日は農場のスライム退治。これは逆にスライムに殺されて2回教会に世話になった。次に火曜日、この日は農場のマンドラゴラを抜く作業を手伝った。耳栓を持っていなかったので何度かショック死し、教会の世話になった。水曜日、公衆トイレの掃除。とても臭くてガスが充満していたらしい。隣のおっさんが煙草に火をつけたら爆発し、瓦礫に巻き込まれて死んだ。無論教会の世話になった。木曜日、民家の草抜き。草に混じっていたマンドラゴラを抜きまたショック死した。この日も教会にお世話になった。そして今日金曜日、「草抜きもトイレ掃除もできないのに何ができるの?」とエンマ大王に嫌味を言われ、やる気を無くして教会前の大樹の前に寝転がって現在に至る。いつもは爽やかに聞こえる小鳥の鳴き声も今はとてもうるさく聞こえる。
「お?今日は俺より早く来てるじゃないか。」
赤ニートがやって来てこちらを見下ろすような形で言った。
「おまえもニートになれよ、そうしたら楽できるぞ。」
赤ニートは笑いながら俺の横に座った。教会で出会う度にかけられるセリフである。
「おまえの様に体中に穴開けられるのは御免だ。」
いつも通りに返すと赤ニートはカラカラと笑う。
「働く意思があるならこんな時間にこんな所に寝転がっている訳ないだろうに。」
む、言葉に詰まる。
「どうせエンマに嫌味を言われてやる気をなくしたとかそんなところか。」
図星だったのが表情に出ていたのか赤ニートは大爆笑した。
「そんなに笑うことないだろ、普通の人間の俺には魔物退治とかそんなことできる筋力はないんだよ。」
赤ニートは教会の右の方向を指さした。
「ニートの俺からヒントをやろう。あっちには酒場がある。そこにはおまえのような労働者がたくさん居るわけだ。」
「酒場―、パーティを組むのか。」
こういうファンタジーな世界では当然のことではないか。なぜそんなことを思いつかなかったのか。
「まあ、給料は山分けになるが、そちらの方が確実だ。第一ドラゴンを一人で狩れる能力を持つ奴の方が少ない。」
クエストクリアへの道が少しずつ見えた来た。ただ、パーティを組む時に最も問題になるのはー。
「まあ、おまえみたいな無能はパーティにも誘われないし、パーティに誘っても来てくれるか疑問だな。俺なら誘われても断るね。」
また赤ニートは大爆笑。剣をくれたときはありがたいと思ったが、こいつは基本的に性格が悪いと思う。一言多いってやつだ。
「うるさいな、どうにかしてやるよ!」
俺は言いながら立ち上がった。善は急げだ、こういうことは早く行動した方がいい。思い出したように赤ニートの方を向く。
「酒場とパーティのことは教えてくれてありがとうな。」
そういうと赤ニートは手を振って返してくれた。そして俺は赤ニートに背を向け酒場の方へと歩き出す。




