5章-4 キングオーク
「こんな所で休憩とは呑気なものだな、侵入者ども。」
降って来た鎧姿の大オークは立ち上がり、重量感のある大斧を肩に担ぐ。オークが着地した跡はまるで隕石が落下したかのようにへこんでおり、その衝撃の大きさを物語っている。
「本来ならばおまえらのような雑兵は相手にしないところだが、今日のところは勝手が違う。おまえらが俺らの主チグリスの命を狙っているからだ。」
オークの影からわらわらとミノタウロスが沸き始める。どうやらあのオークが魔法で次々と召喚しているらしい。俺は咄嗟にシチューを注いでいたローズの手を取り、来た道の方向に向かって走る。これだけの人数が居てもあれには勝てない、本能的にそう感じたからだ。逃げだした俺を見て罪人達も次々と走り始める。
「くっそー、アトラスがあっちに付いているなんて聞いてないぞ!!」
俺を追い抜こうとしているエルフのおっさんが叫ぶ。
「アトラスさんは狼仮面さんの次に強いキングオークの方です。おそらく罪人の中では最も強いかと。」
俺の隣を走っているローズが解説してくれた。超人ばかりの罪人の中でも最強、考えたくもないことである。
「お兄ちゃん、ここに居たの!」
ランスが大盾を抱えながら走って来たようだ。後ろの方から声が聞こえた。そしてついでのように後ろから地響きも聞こえてくる。
「な、何だ!?」
振り向くと鉄の塊が大斧を振り回しながらこっちに向かって突っ込んで来ていた(あれはもはや走るという表現を超えている!)。時折、その斧の餌食になった者の断末魔が聞こえてくる。生前足には自信があった俺だが、ここではただの人間である。このままじゃ追い付かれてしまう!
「あっ。」
俺の横を走っていたローズが石に躓いてこけてしまう。ヤバい、よりにもよって蘇生が効かないローズである。俺はすぐに手を取って引っ張るが、アトラスはもうすぐそこまで迫って来ていた。
終わった、そう思った時であった。
「勇者よ、伏せろ、いいからすぐに。」
直後俺の背後から複数の風切り音が聞こえ、追って来ていたアトラスやミノタウロスに向かって飛んで行く。それは数えきれない程の槍であった。こっちに向かって突っ込んで来ていたアトラス達は避けることが出来ずにその槍の雨に吹き飛ばされる。
(この魔術はー!!)
俺の後ろから現れたのは、頭にライオンの被り物を被った一見ふざけたような見た目の囚人服姿の男、ライオンマスクであった。




