5章-3 キングオーク
洞窟に入ってから30分程経っただろうか、魔物の勢いも増してきたように感じる。洞窟に入って初めの方はスライムだの下級の魔物だらけであったが、先程から何度かミノタウロスに出くわしている。そして俺は「漁夫の利を狙う」と言ったはずだったが、
「お嬢ちゃん達助かったよ。」
「いえいえ、こういう時こそ支え合うべきだと思います。」
俺の連れ二人は我慢できなかったのか、今は率先して罪人の行列の前の方を歩いている。大盾で魔物の攻撃を防ぎ、火炎魔法を放ちの大活躍である。一般人の俺とか他の人間はこうやって無力化されたあちら側の罪人を捕まえ腕と足をロープで縛りあげることくらいしか出来ていない。
「よお兄ちゃん達は前の方で活躍してるお嬢ちゃん達と比べて地味だねえ。」
目に見えて分かる負け惜しみだがイラっとしたので結び目をきつくしておく。
今のところ俺達はあまり脱落者が出ておらず、優勢のようにも思えたが、
(さすがに大物を何回か相手にしたからか疲れているようだな。)
前の連中には疲れが出て来ているようだった。これだけの人数が居てもミノタウロスは強力ということである。タンクが防ぎ、アタッカーが攻撃しを何巡も繰り返しやっと倒せるんだから無理もない。
「ローズって回復魔法も使えたんだな。」
傷ついた戦士の傷を癒す黒い長帽子を被り黒いマントを身に着けた少女は「まるで女神のようだ」と崇められていた。まあ、こんなむさくるしい連中ばかりではとてもありがたいように感じるのだろう。女性の罪人達はあまりこの行列に参加していないところから考えると、やっぱり女性の方が現実的な思考を持っているのではないかと思った。
「もう少し進んだら開けた場所があったと思うからそこで一旦休憩を取ろう。」
斧を抱えたエルフのおっさんの提案に賛成する男達。みんなで魔物からドロップしたものを拾って先に進んだ。
「何だか疲れてる?お兄ちゃん。」
休憩所で火を起こしていたら金髪ポニーテールの少女、ランスがやって来た。両手一杯に菓子を抱えている。周りのおっさん達に貰ったのだろうか。
「人気者だな、ランス。」
その辺の枝を適当に組み、火を放つ。まあ火と言っても火種レベルである。エンマ大王には魔法の才能は無いと言われたが、火種を起こす程度の魔法は使えたらしい。
「まあ、前線で戦ってるおまえら程じゃないよ。」
俺の言葉を聞きながらランスは俺の隣に座ってもらった菓子を食べ始める。
「そういえばローズは?」
「お姉ちゃんならあっちでシチュー作ってたよ。」
こんな時も周囲への気遣いを忘れないローズ。確かにシチューを罪人達に配っていた。周りの男達から崇め倒されているその様子は何と言うか
(オタサーの姫かな。)
「お兄ちゃんは貰って来なくていいの?」
ランスがチョコをかじりながらこっちの顔を覗き込む。
「ああいうのは前線で戦っているヤツらのご褒美だ。後ろで戦闘に参加していない俺らには勿体ない。」
「でもお兄ちゃんと一緒に縛っていた人達も貰ってるよ?」
シチューの待機列には確かにさっき俺と一緒に後ろの方で待機していた連中も居た。何だか理不尽な感じがしたので俺も貰いに行くことにした。
そのときだった。大きな岩石のようなものが休憩地の近くに落ちて来たのである。
「何だ!?」
全員の視線が落ちて来た岩石の方に向けられる。すると岩石だと思っていた物が立ち上がる。それは全身に銀色の鎧を纏ったミノタウロス程の大きさのオークであった。




