5章-2 キングオーク
罪人がダンジョンに向かって走って行くのを見送ったあとエンマ大王は呑気に中庭でココアを飲んでいた。ミイラが遅めの朝食を持ってくる。
「今日は何かしら?」
「見ての通りシンプルに焼き魚と米とサラダだよ。」
「まあ、魚は大歓迎よ。」
そう言って大袈裟に猫耳と尻尾を振るエンマ大王。
「でもトマトは要らないのよね。」
「ちゃんと食えよ。」
すぐさまフォークでサラダからトマトを除去しようとするエンマ大王をミイラは手で制止する。
「そうですよ、お嬢様。残さず食べないと。」
エンマ大王に注意をすると金髪ショートヘアのメイドはガツガツと朝食を食べ始める。いや、食べると言うか流し込んでいるのか?
「リリィ、おまえはもう少し味わって食べるべきだ。」
「いえ、味わいながら食べているつもりですが…。今日もいつも通り美味しいですよ。」
リリィは一瞬手を止めて答える。
「そうか、いや、それならいいんだ。」
ミイラは諦めたのか溜息を吐く。何の溜息なのか分からないリリィはまた食事に戻る。
「そういえばキンの姿が見えないわね。」
エンマ大王は魚の身を取りながら言った。箸をグーで握るもんだから身がボロボロである。
「ああ、あいつなら罪人達に紛れてダンジョンに向かって行ったよ。」
ミイラがその様子を見ながら言った。注意する人が不在なのでエンマ大王はそのままグーで食事を続ける。
「まあキンならあの金額に飛びついても仕方ないわね、生前貧乏だったみたいだし。」
エンマ大王は口に魚の身を入れようとして皿にポロっと落とす。
「3億と1億って確かに魅力的だけど、それだけの金額を出す何かがあるってことだろう?」
ミイラは自分の席に着いていただきますをする。ミイラはこういうところはしっかりしている。
「あの辺りには野良ミノタウロスが生息していると聞いています。私も骨が折れそうなので今回参加を見送ったのですが。」
リリィはごちそうさまでしたをして言った。
「そうね、姉さんのことだもの、きっとミノタウロスを量産してダンジョンに放ったりしているんでしょう。あとあっちにはアトラスが付いているわ。」
やっと口の中に魚を入れながらエンマ大王は言った。
「アトラスねぇ、闘技場上位者の中で唯一騎士団への勧誘を蹴ったオークだったか。」
「1位が狼仮面で2位がアトラスだから労働している罪人の中では実質最強の位置にいるのが彼ね。」
「その男に加えミノタウロスの軍団か、無理じゃねーか。」
涼しい顔をしながら説明するエンマ大王を見てミイラは呆れる。自分が狙われているというのに彼女は罪人達を使って遊んでいるらしい。飽きたらソラトや狼仮面が居る騎士団で鎮圧すれば良いとでも思っているのかエンマ大王は余裕である。
「大丈夫よ、キンが走って行ったのでしょう?あの暗殺者なら上手くやれば簡単に捕まえて来るかもね。そしてー。」
エンマ大王が勿体ぶったようにそこで止める。
「何があるんです?」
リリィが尋ねるとエンマ大王は待ってましたと言わんばかりの表情をする。
「つい先日復活したライオンマスクもダンジョンに向かって行ったわ。」
エンマ大王の笑顔を見てミイラは苦笑いをする。どうやら彼女はこの状況を本当に楽しんでいるみたいだった。
「さあ、地獄の勇者達対罪人最強のオーク、どういった結果になるのか楽しみね。」




