4章-11 開幕
エンマ大王の屋敷の前に行くと確かに人だかりが出来ていた。いつも仕事を求めてたくさんの人が集まって来ているのだがそれ以上の人数が居た。俺みたいな囚人服の罪人は勿論旅人のような格好をした移民も居た。その中心を見てみると誰もが全校朝会とかで見たことがあるであろう朝礼台のようなものが置いてある。
(今から何が始まるのだろうか。)
「今日は良く集まってくれた、地獄の住民の諸君。」
屋敷の方から麦わら帽子を被った襤褸着の男が出て来た。茶色のボサボサの長髪で、無性髭なんか生やしている。ギラギラと光るその赤い目はとても直視できるものじゃない。しかし、あの男どこかで会った気がする。
(あの麦わら帽子は…。)
思い出した。俺が地獄に来る際に三途の川(川とは言い難い物ではあったが)で会った舟の漕ぎ手であった。少し暴れたからと言って俺をぶん殴って失神させたあいつである。まあ、あっちはこちらのことなんか覚えていないんだろうが。
「今日はエンマ様から大事なお知らせがあってこうして集まってもらった訳だ。」
男はヘラヘラしながら言った。男に続いて黒髪長髪の女性が大量の紙束を抱えて出て来た。服の右袖がかなり大きくて特徴的な服装である。中に何か入っているのか重量感のある袖である。何が入っているのか聞くのも危険な気がする。
「ブレーメン、貴方も運ぶのを手伝いなさい。」
屋敷から紫色の長髪で、そして立派な巨乳の少女が出て来た。猫を思わせる耳、尻尾がその少女が人外の存在であると示している。
「はいはいエンマ様。」
男はエンマ大王の命令を受け渋々と屋敷に戻って行く。それを見送るとエンマ大王は朝礼台の上に立ちメガホンを取り出す。
「最近罪人達を惑わす悪の組織が結成されているとか何とか聞いているわ。私は非常に悲しい、その誘惑に負けて悪の方面に堕ちてしまった罪人も確認しているんだもの。奴らはこの地獄で暴動を起こそうと画策しているの。」
エンマ大王が力説する。どうやらそんなおっかない連中が俺達罪人を誑かしているようだ。
「そこでその指導者を指名手配するわ。賞金は早い者勝ちよ。」
長髪の女性が手に持っていた紙束をばら撒く。風に乗ってこちらにまで届いたので拾ってその紙を確認する。
「その指導者の名前は『チグリス』。あとその周辺の幹部たちも一緒に指名手配するわ。」
その顔を見て驚愕する。昨日娯楽街で見かけたピンクのうさ耳少女であった。それじゃなんだ、悪の組織って言うのは労働組合のことで、暴動ってのはストライキか。物は言いようだな。そしてその額は、なんと3億!!パーティメンバーで割っても俺の罪が完済できてしまう額であった。
「そして奴らが潜んでいるのはあっちのダンジョンの遥か彼方に見えるあの魔王城よ。」
エンマ大王が屋敷とは真逆の方を指さす。そこには険しい山が見え、その上には物々しい城が建っていた。
「さあ、行くのよ、地獄の勇者達。地獄の未来は貴方達に掛かっているわ。あと賞金はさっきも言った通り早い者勝ちだからね。」
エンマ大王が手をパンと叩くと金に目がくらんだ罪人達は一目散に城に向かって走り出した。なにやら面倒なことが起きたな。だが、額は魅力的である。
「勇者様、どうします?」
ローズがこちらに確認をしてくる。と言いつつローズもその額に釘付けになっている。まあ、出稼ぎに来たっていうくらいだし当然と言えば当然か、おい、よだれが出てるぞ。そして俺も気になってしょうがない。
「よし、俺らも行くぞ。なるべく前の奴らの後ろに付いて漁夫の利を狙う方向で。」
俺達もさっき走って行った奴らを追うことにした。




