4章-10 開幕
「勇者様、起きて下さい。」
扉のノックの音で目が覚める。どうやら昨晩はあのまま気を失ってしまったらしい。隣を見やるとそこには無防備にお腹を出した囚人服の少女が寝ていた。ノックの音にも気付かずまだ寝ている様子だ。
「腹壊すぞ。」
布団を掛けてやった。そして顔を擦って暫く考える。
(あれ?これってヤバいんじゃ…?)
男子寮の同じ部屋に幼女と二人、しかもその幼女は同じベッドの上で無謀な恰好で寝ている。これは勘違いされても仕方ない状態だ。
「おい、起きてくれ!今すぐに!」
俺は必死にランスを肩を掴んで揺する。だが、ランスは全く起きる様子はない。
「勇者様、入りますよ。」
ガチャリ
ローズが部屋に入って来た。その時俺はベッドの上でランスの肩を掴んでいたところだった。
「何やってるんですか、勇者様!!」
ローズがこっちに向かって火炎弾を飛ばしてくる。
「ちょっ、誤解だ!!」
火炎弾は器用に俺だけに直撃した。直後俺の体中が燃え上がる。
「熱っ!!」
俺は風呂に向かって走った。すれ違った奴らは燃えている俺を見るなり道を譲ってくれたので恐らく風呂場への移動の最短記録を叩き出しただろう。脱衣所も駆け抜け俺は風呂場の扉を開ける。
「今は俺の順番だ、ぞ!?」
風呂にはエルフのおっさんが入っていたがそんなこと気にしていられない俺は浴槽に飛び込んだ。なんとか命を落とさずに済んだらしい。俺は体中の火が消えたことを確認して、着ていた囚人服を絞って風呂場から出た。我ながら冷静な対応だったと思う。
部屋に戻るとローズが生ゴミを見るかのような目でこっちを見ていた。ランスも今の騒動で目が覚めたらしい。眠そうに目を擦っている。
「お兄ちゃん、体中真っ黒だけど何かあったの?」
確かにそう思っていいとは言ったがこのタイミングでその単語はまずい。
「お兄ちゃん!?勇者様、この子に何をしたんです!?」
「待て!早まるな!いいからその杖を下ろせ!」
再び杖を構えるローズを制止する。だがローズはまた火炎弾を飛ばしてくる。そうして俺は再び風呂場へとダッシュするはめになった。
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「本当に何もされていないのね?」
ローズはランスに確認を取る。まだローズのこちらを見る目が痛い。
「本当だよ、女子寮が使えないから泊めてもらっただけ。」
ランスの言葉にホッと胸を撫でおろすローズ。一緒に風呂入ったとか言ったらまた燃やされるんだろうな。と言うかローズの俺に対する対応が日々悪くなって行ってる気がする。
「それでローズ、何か用があって来たんだろ?いつもエンマ大王の屋敷の前で集合するようにしてたじゃないか。」
「ああ、そうでした。今日は屋敷の前で何かあるらしいですよ。人混みが出来ていたので呼びに来たんです。」
「何かって何だよ。」
あのエンマ大王のことだ、何かろくでもないないことを考えたのだろう。でも、新しい仕事の話だったら困るので俺らもとりあえず行ってみることにした。




