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勇者19歳  作者: 河野流
4章 開幕
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4章-8 開幕

とりあえず脱衣所に着いた。道中の男連中が何か言いたそうな感じであったが気のせいだろう。とりあえず籠に脱いだ衣服を入れ、持って来たタオルを腰に巻く。それに対しランスはすっぽんぽんであった。髪は腰くらいの長さがあり、胸は無いに等しくー、とそこを実況している場合ではない。

「ちょっと待て!おまえタオルを巻くくらいしろよ!!」

俺は手で自分の目を覆いながらランスに注意する。こいつ羞恥心というものを知らないのか!?

「いえ、父から入浴時にはタオルをしないと習っていたので。兄達や父とも裸で入ってましたよ?まあ、姉達はすごく不本意そうでしたが。」

ランスは首をかしげていたようだった。兄弟何人居るんだよ!?とか、おまえの父親年ごろの娘とも風呂入ってたの!?とか突っ込みどころ満載であったが、そんな余裕はなかった。ランスが俺の腰のタオルに手を伸ばしてきたからだ。

「おまえ、何をする!?」

「入浴時にはタオルを取るものです。さあ、勇者様も。」

金髪の幼女が俺のタオルを掴み、グイグイと引っ張る。もちろん俺は精一杯抵抗する。

「辞めてぇ!!俺の粗末なあれなんて見せられない!!」

思わず声が裏返り、必死に隠そうと内股になってしまう。もうどっちが男で女か訳の分からない状態である。

「勇者様、諦めが悪いですよ。」

鉄の塊を振り回す少女の前で俺は無力であった。抵抗虚しくあっさりタオルが脱がされてしまう。そして少女は露わにになったそれを見る。

「勇者様の兄達や父のと比べて小さい気がします。」

「あああああああ!見ないでぇ!!」

多分男子寮中に響いたと思う。


「どうしたんです勇者様?元気ないです。」

ランスは浴槽に顎を乗せて体を洗っているこちらの方を見る。浴槽が一人入るのがやっとの大きさのものだったので交代で入るということにしていた。

「俺のそんなに小さかったか…。」

女子には分からんかもしれないが男にとっては重要なことである。まあ、ランスは金髪だし兄弟も外国人だろうから大きかったのだろう、多分。

「あ、勇者様、お背中洗いますね。」

俺は前の方を洗い終えて背中を洗おうとしていたとき、ランスは浴槽から出て来て俺の持っていたタオルを奪う。女の子に背中を流してもらえるなんて何かのラノベみたいだなあ。

ガリガリガリ。

「あ痛―!!」

俺は思わず飛び跳ねてしまった。この子が怪力ということを失念していた。

「ちょっと思いっきりやり過ぎ!!」

「いえ、父はこのくらいが気持ちがいいと言ってくれていたので。」

ランスが不思議そうな顔をする。

「ほら勇者様、座って下さい。」

ランスがポンポンと椅子を叩く。俺の背中は保つだろうか。


体も頭も洗い終わったのでランスと交代して今浴槽に入っていた。ランスはゴシゴシと自分の体を洗っている。

「そういえばランスって男みたいな名前だよな。」

俺はふと思ったことを口にしてしまった。ランスは少し考えているようだった。

「そうですね、どちらかと言うと男子名な気がしますよね。でも父にもらった大事な名前なので。」

ランスは苦笑いをした。彼女はその父親をそうとう尊敬していたのだろう。少し悪いことを聞いたかな。

「よし、さっき背中を洗ってもらったし、俺も洗ってあげようかな。」

俺は浴槽から出て、ランスの手のタオルを手に取る。

「本当ですか?よろしくお願いします。」

「任せとけ。」

ランスの背中を洗おうとした時、ランスの肩に羽のような形をした刺青を見つけた。青色である。

「ランス、この刺青は何だ?」

「父に入れてもらったおまじないみたいなものです。」

ランスは少し考えてから答えた。まあ、異世界人の風習とか分からないし気にすることでもないか。

俺は深呼吸をして右手に思いっきり力を入れる。ゴシゴシと力いっぱい背中を擦ってやる。(さっきのお返しだ!)

だがランスは気持ちよさそうにリラックスしている。

「勇者様、ちょうどいいです。そのままお願いします。」

力一杯擦っているのだが…。何とも複雑な気持ちになった。


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朱の国
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