4章-7 開幕
「今晩ここに泊めて欲しいのです。」
その場の空気が凍り付く。え?ここに?いや、小学生くらいとはいえ、流石に男の部屋に泊まるのはまずかろう。
「今、女子寮の方が改装中でして。私もここに来たばかりでそこまで金銭に余裕がなく村の宿を使うことも出来ないのです。」
「大変なのは分かったけども。」
「すみません、邪魔な様なら教会の前で野宿します。」
「む。」
男の部屋に泊まるのも良くないが野宿はもっと良くないだろう。ここ地獄は色々な世界から罪人が集まって来る場所だ。こんな幼女に手を出す不届き者も現れるかもしれん。こう、腕を鷲掴みにして無理矢理あれこれー。それは非常にけしからんことだ。
「そこまで言うなら泊っていいよ。」
いや、何も下心は無いぞ?ただのか弱い少女を悪漢達から保護するだけだ、いや本当だぞ?
「勇者様、ありがとうございます!」
ランスが思いっきり抱きついて来る。まだ幼いとは言え、こう女子特有のシャンプーの匂いのようなものがする。だがー
(く、苦しいー!!)
よく考えたらこの抱きついている少女は大盾という鉄の塊を片手で平気な顔して振り回す怪力であった。抱きつかれただけで気管が圧迫されるー!!こちらの顔が青ざめているのに気付いたのかランスが俺から離れる。
「失礼しました、勇者様。」
「気にしないでくれ。」
かっこつけようと思ったが咳き込んでしまった。ランスが心配そうにこっちを見る。
「次風呂入っていいぞ。」
その時お隣のいびきのうるさいオークがパンツ一丁で俺の部屋の扉を開ける。
「あ、こんにちはー。」
「…。」
お辞儀するランスと沈黙する三段腹のオーク。一度扉を閉めて、また開けたと思ったら次は囚人服を着ていた。そしてランスを見向きもせずにこっちに寄って来て耳を貸せとジャスチャーする。
「部屋に女を連れ込んだ挙句、それが幼女とは。おまえ、見損なったぞ。」
「いや待て、俺はロリコンなんかじゃないぞ。ただ保護しているだけだから。」
オークの軽蔑の目に俺は必死に抗議する。
「勇者様、お風呂入りませんか?お背中流しますよ。」
また火種を撒くランス。オークの目がより一層険しいものになる。火種どころか大炎上である。
「さすがにそれはまずいだろ、一人で入ってこい。」
「そうですか?私生前は兄達と一緒に入ってましたけど。」
小学校中学年くらいの見た目だし、まあ一緒に入ってても違和感はないのか。でも、できれば一人で入ってもらいたい。だが、俺に割り当てられた風呂の時間はとても短い。二人別に入ってたんじゃ時間が足りない。今日はスライム狩りで汗でべとべとだし風呂に入らないと気分が悪くて仕方ない。10秒ほど考えた結果―
「よし、ランス風呂に入るか。」
俺は考えるのを辞めた。タオルを手に取り、ローズを連れ部屋を出る。
「ちょっと待て!おい!」
うしろから俺を引き留める声がした気がするが聞こえない。




