4章-6 開幕
ちょうどローズが母と夕食を食べようとした時だった。誰かが扉をノックした。
「はい、今開けます。」
ローズが開けるとそこにはビールの缶を抱えた赤ニートが立っていた。赤ニートは「よ」と軽く手で挨拶する。
「赤ニートさん、どうしたんですか?」
「いや、一人で飲むのも寂しいと思ってな。良ければ付き合ってもらえないか?」
ローズは母の方を確認する。母は溜息を吐き赤ニートの方を見る。
「せっかく来てくれたんだ、あがって行ってくれ。」
「さすが金髪美人エルフだ、物分かりが良くて助かる。」
赤ニートがヘラヘラしながら家の中に入って図々しくテーブルの席に座る。ローズの母は流しの方に食器を取りに行く。
「褒めても夕食ぐらいしか出せないぞ?私は人妻なんだから。」
ローズの母は赤ニートの前に銀の食器を並べた。
「酒の肴が増えるだけでも十分だ。ほれ、奥さんあんたの分もあるぞ。」
赤ニートはローズの母に缶ビールを勧める。だが、ローズの母は首を横に振って断った。
「酒は苦手なんだ。娘と飲んでくれ。」
「それは残念だな。」
赤ニートは手に取っていたビールをそのままローズに渡す。ローズはとても嬉しそうにそれを受け取った。
「ごちそうさまでした。」
赤ニートとローズの母は手を合わせた。この前同様ローズはテーブルに突っ伏している。
「流石奥さんだ。美味い料理だった。」
赤ニートはいつもと変わらずヘラヘラしていた。ローズの母は「はいはい」と適当に聞き流しながら食器を流しに下げる。
「それで本当は何の用だったんだ?貴方がわざわざ酒を飲みにうちを訪ねてくれるとは思えないんだが。」
「いや、本当にローズと飲みたかっただけだよ。」
ローズの母の質問に赤ニートは即答する。
「最後の酒なんだ、あんたら美人親子と飲みたいと思っても違和感ないだろう?」
「最後の酒?」
「ああ、深い意味は無いんだ、気にしないでくれ。」
赤ニートは笑って誤魔化すとローズの方に視線を移す。長い髪のせいで顔は見えなかったがどこか少し寂しそうな雰囲気である。
「これが持ってきた最後の酒だ。飲み終わったら帰るよ。」
「そうか、それならゆっくり飲むと良い。」
ローズの母は器にピーナッツを盛り最後の缶ビールを開けた赤ニートの前に出してやる。
「はは、あんたは本当にいい女だよ。あんたの夫は幸せだろうな。」
「褒められてももう出せるものはないな。それで勘弁してくれ。」
赤ニートは軽く笑い、缶ビールを飲み始めた。




