3章-7 娯楽街
狼仮面とライオンマスクはにらみ合い、その場の空気が凍ったみたいである。まず動いたのはライオンマスクであった。右手にあった槍を捨て、先程競技場を襲った槍の一本を抜く。そして思いっきり振りかぶって狼仮面に向かって真っすぐに投げつける。狼仮面はその槍をハルバードで払い、そしてハルバードの先端を使いそのまま自分を中心に地面に円を描く。その直後狼仮面の姿は消え、ライオンマスクの背後に回り込んでいた。狼仮面はすでに振り下ろしの姿勢に入っていて、観戦していた客は狼仮面の勝ちで終わると思っていた。しかし、その動きを読んでいたのかライオンマスクはすぐに振り向き左手の短剣でハルバードを弾き、隙だらけになった狼仮面の顔面を右の拳で殴り飛ばす。そのまま、狼仮面は後ろに吹き飛ばされ、壁に背中をぶつける。ライオンマスクはすかさず弓を構え、狼仮面に追撃を行った。
(やばい、速過ぎて何が起きているのかさっぱり分からない。)
俺がポカンとしているとローズが嬉しそうな顔をしてこっちに歩いて来た。
「ライオンマスクさんで2口買って来ました。どうしたんです?勇者様。」
「いや、速過ぎて何が起きているのか頭が追い付かないんだ。」
ローズは俺の隣の席に座った。
「あのお二人は剣闘士の中でも珍しく魔術師なんですよね。狼仮面さんは陣術師で、ライオンマスクさんは上位魔術師です。」
陣術?さっきハルバードの先っぽで円を描いたあれだろうか。
「狼仮面さんはハルバードの先端部分で陣を描き、それを使って戦います。さっきのは多分加速の陣でしたね。あと、ライオンマスクさんですがー。」
ローズは中央の競技場を見ながら続ける。
「あれはチートってやつですね。上位魔術も楽々使えて、さらにあのように近接戦闘も得意なんです。」
ローズは羨ましそうな顔をしながら言った。魔術師じゃない俺には分からないが、魔術師なら誰もが羨むほどの能力なのだろう。
狼仮面は右手の盾で顔を矢から庇いながら立ち上がる。腕や脚に数本刺さっているが、致命傷ではないようだ、ハルバードを構え直す。それを見たライオンマスクは新しい槍を抜き、それを右手で持つ。狼仮面はまたその場に円を描き、そのまま加速してライオンマスクに突っ込む。ライオンマスクは槍を両手に持ち替え、それを迎撃するようだった。
カキーン
大きな金属音が鳴り響いてぶつかり合う。狼仮面がハルバードでライオンマスクの足を狙う。ハルバードの先端が地面と激しく擦り合い火花が散る。ライオンマスクは待ってましたと言わんばかりに槍でそれを受け流す。ライオンマスクは狼仮面がハルバードを弾かれ隙だらけになったところを槍で突こうとしたが、狼仮面は受け流されることを読んでいたようで、流された勢いを使いライオンマスクをハルバードの柄で殴り飛ばす。ライオンマスクは吹き飛ばされながらも、追撃を防ぐために槍を狼仮面に投げつけ牽制する。狼仮面はその槍を受け流し、ライオンマスクはそのまま壁に叩きつけられた。
観客はみんな剣闘士達の戦いに魅せられ、剣闘士自身も戦いに夢中であったため、競技場内のそれに気付いた者は誰も居なかった。




