12章-6 終結
俺達が移民達の団地に到着した時には全てが終わっていたようだった。数人の騎士と武装した僧侶達が魔法の鎧を身に付けている罪人達を縄で縛っていた。団地の建物の損傷は思ったより軽微なもので、この辺りで起きた騒動は小さなものだと考えることができる。
「お母さん!!」
ローズは母を見つけるなり抱きついた。茶色のショートの美少女が金髪の美人(美エルフ?)に抱きついている様子はとても絵になる光景だったと思う。まあ、胸の大きさの差は著しいものであったが。
(こんなに母子で大きさが変わるものなんだな。)
「ローズさんのお母さん、無事で良かったですね。」
俺の隣に立っていた鎧姿の幼女、ランスは母と娘の再会を見て笑顔になっていた。そんな純粋な姿を見て俺は恥ずかしくなった。俺はいつからこんなに汚れてしまったのか…。俺達もローズとローズの母に寄っていった。
「ローズのお母さん、ご無事そうで良かったです。」
「勇者様か。見ての通り騎士様達のおかげで被害は最小限に抑えられたよ。」
やはり騎士達の戦闘力は桁違いの様だ。ローズの母も戦闘に参加したのか肩で息をしていた。彼女も猛者であるはずなのだが、騎士団達は何事も無かったのかの様に事務的に捕まえた罪人達を連行して行った。
「お、こっちも無事だったようだな。」
ブレーメンが俺とランスの間に立っていた。こいつはいつも気配を殺してはこのように現れる。毎度心臓に良くないので止めて欲しい。
「うちのご主人様もご無事だったぜ。流石は騎士長閣下、おっさんの心配は不要だったって訳だ。」
ブレーメンはローズの母の前に右手を伸ばす。ポン☆というふざけた音と同時にそこに薔薇が現れた。
「実の娘に名付ける程だ、この花が好きなんだろう?」
おっさんは余った左腕をローズの母の肩に回す。
「娯楽街は悲惨だったが酒場は機能してるみたいだったぜ。おっさんの愛の歌を聞いてちょうだいよ。」
「騎士殿、それは困ります。私には夫と子供が…。」
ブレーメンは強引にローズの母と酒場の方に向かって歩き出す。しかもしれっとギターを背負っていた。騎士としての責務を果たすべく主人であるエンマ大王の無事を確認しに屋敷に向かったのではなく、こいつはただギターを取りに行っただけだったのかね。感心していた俺が馬鹿だった訳だ。
「勇者様、母が危険なので追います!」
ローズは「ありがとうございます」と騎士達に軽くお辞儀をしてブレーメン達を追って走っていった。俺なら忘れているところだったが、こういうところまで気が回る。
「お兄ちゃん、私達も追うよ!」
ランスもローズの後を追った。俺も急いでそれを追う。