3章-3 娯楽街
「ごちそうさまでした。」
夕飯もご馳走になって、流石に何もしないで帰るのも悪いと思ったので、食器洗いくらいはすることにした。流しにあったスポンジに洗剤をつけて皿を洗う。生前に使っていた洗剤に似た液体の洗剤であったが、あれほどよく落ちない。ここ地獄では食器洗いも力仕事らしい。
(この世界自体科学技術があまり進歩していないようだしな。)
食器用洗剤のCMで擦らずに汚れが落ちているものとかをよく目にしていたことを思い出す(あれほどの効果を実感したことはなかったが)。
全部の食器を洗ったことを確認して、布巾で水を拭き取り食器棚に戻す。
「勇者様、ありがとうございます。」
「美味しい夕飯をご馳走してもらったんだ、このくらいの手伝いならさせてもらうさ。」
明日の仕事もあるし、そろそろ失礼することにした。ローズが「送って行きます。」と付いてきそうだったが、女性に送ってもらう男というのも情けない気がして断った。
「また明日迎えに行きますね。」
ローズが玄関で言った。今日の朝のことを思い出す。男ばかりの施設に女性一人で来るのは良くない気がする。
「明日からは直接エンマ大王の屋敷の前に集合することにしよう。」
「別に構いませんけど。」
ローズは不思議そうな顔をした。それを見て、俺は異性として認識されていないんじゃないかと複雑な気持ちになる。
「それじゃ、勇者様、また明日。」
ローズに見送られながら俺はローズの家をあとにした。
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「こんな時間だってのに賑やかなもんだな。」
もう日は落ちているというのに娯楽街には人が沢山居た。流石に閉まっている店もあったが、ほとんどの店が開いている。そこで見知った顔を見つけた。
「よう。」
酒屋の前に立っていた赤ニートに声をかける。足元には缶ビールが一ダース。
「ニートだってのにそんなに買って大丈夫か?」
「生憎金には困っていなくてな。」
赤ニートは素っ気なく返してきた。以前はもっとヘラヘラしていた気がするのだが。そして赤ニートはこっちをじっと見る(睨んでいるのかもしれないが、長髪で顔が隠れているのでよく分からない)。
「おまえ、そっちから来たってことは今日もあの娘の家に行ったのか?」
「ローズのことか?今日も夕食をもらって今から帰るところだよ。」
俺が答えると赤ニートは「そうか。」と呟き缶ビールを抱えて去って行った。
「どうしたんだ、あいつ。」
もしかして妬いてるのかと思ったが、そもそも妬かれるような関係でもない。
(よく分からないが、そのうち会ったら機嫌も直ってるだろう。)
今日は疲れていたので、難しいことは考えたくなかった。サッサと帰って寝よう。俺は施設に向かって歩き出した。




