10章-12 決戦前
俺はローズの家に急ごうと娯楽街の人混みを掻き分けながら走っていた。何だか今日は何時にも増して騒がしい気がする。店員オークが何かを探して走っているのに何度か出くわした。そして薬品市場に差し掛かった時だった。目の前の店で薬草と睨めっこしている魔術師の少女が居た。
「ローズ。」
声を掛けるとローズはこちらを振り向く。こちらに気付くと人懐っこい笑顔を向けた。
「勇者様、こんばんはですね。」
「今家に行こうと思ってたんだ。」
ローズは店員にお代を払い、薬草を鞄の中にしまう。明日に向けての準備というところだろうか。
「今母が夕食を作っているところなんです。良ければ食べて行きませんか?」
「それじゃ、お邪魔しようかな。」
話したいこともあったし。ローズが俺の持っている得物に気付いた。
「勇者様、その武器は?」
俺は担いでいた大斧をローズに見せる。少し嫌なことを思い出してしまっただろうか。
「ああ、ブレーメンに稽古付けてもらってな。結局これを使うことにしたよ。」
「ブレーメンさんにですか、それなら明日は期待していいですね。」
ローズがこちらに笑顔を向ける。期待ってのは今の俺には重いが、ローズとランスの命だけは守らないといけない。
「それじゃ勇者様、私の家に向かいましょう。」
俺はローズに連れられて娯楽街を後にした。
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「そっちはどうだった?」
武器屋のオークは肩で息をしながら薬屋のオーク、鍛冶屋のオークに尋ねた。
「こっちにも居なかったぞ。」
他のオーク達もどんどん集まって来た。ここが集合場所だったからだ。
「一体何処に行っちまったんだ、キクノの姉御。」
ここ娯楽街の女主であるキクノが昼から姿を消してしまったのである。いつもキクノの指示を受けて動いていたオーク達は大混乱だった。
「呪符は勿論だが、大弓と物干し竿まで持ち出しているみたいだ。」
いつもは持ち出さない得物まで持ち出したのである、彼女に何か起きていないか心配だ。オーク達は少し休憩すると、また主を探しに人混みの中に消えて行った。




