10章-6 決戦前
ブレーメンに連れられエンマ大王の屋敷の近く村に着いた。村に着くなり村長が寄って来た。
「騎士様、言われた通りの物を用意しておきましたよ。」
俺達は村長の案内で村の中心に歩く。そこには見覚えのある大斧が三つあった。そう、ブレーメンと退治しようとしたミノタウロス達の持っていた得物である。ミノタウロスが持っている時は小さく見えたが、実際に見てみると人には扱えなそうな大きさだ。その中に一つ血まみれになっているものがあった。ランスがミノタウロスを切り刻んだ大斧である。俺が力を求める決心をした出来事だった。
「ほれ、坊主好きな物を選べ。まあどれも同じだと思うがな。」
ブレーメンは大斧を指さす。俺は迷わずランスが振るった血まみれのものに近づいた。
「それでいいのか?綺麗な物もあるだろう。」
「これでいいんだよ。」
俺なりに決心の表したつもりである。ランスは俺達を守るために刻印を暴走させこの大斧を振るい、そしてそのまま命を落としたのである。そんな少女やいつも近くに居てくれる少女を守る決心をしたのだ、この武器を選ぶのに迷いは無かった。俺はその大斧を掴む。普通の人間一人では持ち上げることもままならないであろうその武器は地面から浮いた。
「脳筋にピッタリの武器だろう?剣とは違いただ振り下ろし引きちぎるだけだ。」
ブレーメンは俺が武器を軽く持ち上げる様子を見て笑っていた。俺が体に刻印を入れたことを知らない村人達は驚いたような様子であった。
「『呪いの印』に血まみれの武器、とても勇者とは思えない見た目だな。」
一緒に居てくれる少女達を守れるなら勇者じゃなくても構わない。まあ、勇者というのは自称ではあったが。そして賞金首を捕まえて俺は転生するのだ。
「さて、それじゃ少し相手になってやるよ。手になじませた方がいいだろうからな。」
ブレーメンが剣を構える。俺は大斧を両手に構え突撃した。
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神父は教会を騎士達に任せ地獄中を走り回っていた。娯楽街を走り、村を駆け抜け、エンマ大王の屋敷にも行った。だがいくら探しても銀髪の少女は見つからない。そして今魔王城に繋がっている洞窟に来ていた。エンマ大王の言うことを聞いてこんな所に居ないとは思うが念のためだ。そして魔王城が見える開けた場所にたどり着いたときである。目の前に禍々しいオーラを放つ黒い渦がそこにはあった。
「転移魔法か、世界を跨ぐ程のものらしい。」
神父はこんなことをする者に心当たりがあった。そして頭に血が上りやすい少女のことである、きっとこれに飛び込んだのだろうと思った。
「協力して乗り切って行くのが姉弟、か。」
神父は少女の言葉を思い出した。神父は心を決めたようである。冷や汗が止まらない。本当なら見て見ぬふりをして帰りたい。だが、『英雄』に成りきれなかった自分を唯一認めてくれた少女だ。絶対に守らなければならない。
「自分から進んで罠に入るのは決心がいるものだな。」
神父はうっすら笑いその渦の中に飛び込んだ。




