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勇者19歳  作者: 河野流
2章 勇者
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2章-6 勇者

三日目。

俺は教会前いつもの大樹の前で赤ニートの前で土下座していた。

「それでニートの俺にアイデアをくれと。」

赤ニートは言いながらつまみのピーナッツをかじっている。

「どうか普通の人間で無力な俺に使えそうな知識を授けて下さい。」

俺は額を地べたに擦り付けながら懇願した。

「俺の生きていた所では一撃で虎を斬り伏せるような人間もいたがね。」

どこの石器人だと言いたかったが今は頼んでいる立場なのでそのようなことは口にしない。

「仕方ないな、それじゃあヒントをやろうか。」

赤ニートは右手の缶ビールをグビっと飲み干す。

「そのドラゴンは頭にタンコブがあったそうじゃないか。まあ要はそういうことだ。」

確かにタンコブの部分は鱗が剝げていた。あれか、よく漫画とかである弱い一点を狙えってヤツか。

「よっしゃ、アイデアさえもらえたら、もうこんなとこ来ないからな、見とけよクソニート。」

俺は立ち上がった教会裏の森に走り出す。今回で倒せなくても何回も弱点を殴るゾンビ戦法を取ればいつかはきっと勝てるはず。



------------------



四日目。

俺は教会前いつもの大樹の前で赤ニートの前で土下座していた。

「お前にはプライドってものが無いのかね。」

赤ニートが右手に持った空き缶を後頭部にグリグリと擦り付けてくる。

「圧倒的リーチ不足でした!こんな短剣では頭に届きません!!」

赤ニートの空き缶にイラつきながら頭を地面につける。

「リーチ?何かおまえは勘違いをしているようだな。」

赤ニートは地面に置いてあった俺の短剣を手に取る。

「こいつは翡翠の短剣といってだな、込めた力によって刀身が伸びる武器なんだよ。」

そんなマジックアイテムが!?と俺が感激していると、ほれと赤ニートはこっちに短剣を投げた。

「力を込めるったって、どうやればいいんだよ。」

俺は短剣を拾い上げる。赤ニートは少し考える。

「そうさね、胸の力を弾けんばかりに爆発させるイメージだ。やってみろ。」

「こうか?」

俺は両手で短剣を握りしめる。胸の力をー爆発させるっと。すると、短剣から風を切るような音がしてビームのようなものが空に向かって飛んで行った。

(すごいぞ!俺でも勝てそうな武器があったじゃないか!!)

直後すごい目眩がして俺はその場に倒れこむ。体中から力が無くなったみたいだ、立ち上がることが出来ない。

「才能が無い奴がどうすれば強い者に勝てるかだって?」

赤ニートは右手に新しい缶ビールを取りながらこっちを見ていた。長髪の隙間から見える顔は笑っているようだった。

「才能がないならその命を懸けろ、他に懸けられるものもないだろう?まあそういうことだな。」

赤ニートがケラケラ笑う。そのむかつく顔をぶん殴ってやりたかったが体が全然動かない。やばい、意識が薄れてきた、体中から血の気が引いていくー。際限なく体温が下がっていくような感覚を覚え、恐怖しながら俺は命を落とした。



―――――――――――――――



五日目。

いつもの場所に赤ニートが居なかったので今日はエンマ大王の屋敷に来ていた。

「ああ、それ赤ニートに騙されているわよ。」

エンマ大王はニコッと笑いながら言った。よし、赤ニートを探してぶん殴ってやろう。

「翡翠の短剣ってものは厳密に言うと込めた魔力エネルギーだけ刀身が伸びるって代物よ。だから魔法剣士とかが好んで持つわ。だけどねー。」

うーんとエンマ大王は腕を組んで悩むような仕草を見せる。組んだ腕に乗っている胸が相当エロい。

「貴方からは全くもって魔法の才能を感じないわ、かわいそうに。だから貴方の持っている魔力エネルギーはゼロってことね。」

「それじゃあ俺には全くもって使えない武器じゃないか!」

投げ捨てようとしたがエンマ大王がそれを止める。

「ただね、誰でも魔力エネルギーを作ることは可能なの。触媒を持って生命エネルギーを魔力エネルギーに変換することでね。」

漫画とかを見てるとたしかに魔法を使う時に生贄を使っているものもあった。それと同じ原理だろうか。

「そう、貴方はその短剣を触媒にして自分の生命エネルギーを使って刀身を伸ばしたってこと。」

エンマ大王はニコニコしているがとんでもないことを言っているではないか。

「え?じゃあこれの刀身伸ばしているだけで死ぬの?」

「そう、逆に生命エネルギーを注ぎ込まないとただの短い剣よね。」

赤ニートはとんでもない武器を俺に渡したらしい。

「あとエネルギーの変換にはかなり負荷がかかるからそれで死んだら蘇生に丸一日掛かるわよ。それじゃあドラゴン退治頑張ってね。」

本来なら投げ出してどこかに逃げたい気持ちだったが今日は5日目である。余裕はない。俺はエンマ大王に礼を言い、教会裏の森方向に走った。エンマ大王は俺が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。



------------------------



久しぶりにスネークから連絡が入った。なにやら高級そうな薬草(薬草に詳しくないからな、よく分からん)を取ってこいとのこと。それで今森の中を走っているのである。

「ダンジョンって割りにやけに静かだな。」

魔物もやけに少ないし、人間に至っては全く見ていない。こんなに静かなダンジョンというのも珍しい。

「まあ、魔物が少ないってのは大歓迎だがな。」

そう俺は今武器を一つも持っていない。丸腰状態である。だがスライムくらいなら拳でどうにかなるし問題ない。

自身に加速バフを掛けながら十分くらい走っただろうか、そうすると例の湖が見えてきた。

「ああ、そういうことか。」

思わずため息が出た。薬草の花畑の横にドラゴンが陣取っている。

「流石に素手じゃ相手仕切れんぞ。」

色々考えた結果、ドラゴンが去るまで茂みに隠れていることにした。

(まあ、スネークも期日を設けなかったしここで過ごすことにしよう。)

魔物もいないし、何だか眠くなって来た。

「まあ、飛んで行く時に音がするだろう。」

俺は近くの木に背を預け眠ることにした。



―――――――――――――――



いつものように森の中に入り、ドラゴンと向かい合う。また来たのかと呆れているようにも見えた。そして丸まっていたドラゴンもいつものように起き上がる。

「さあ、今日こそはそこをどいてもらうぞ。」

ドラゴンの咆哮が開始の合図となった。開始は炎ブレスが来ることが分かっているので、ドラゴンの懐に滑り込む。そうすると次は右手で切り裂きに来るので、それをローリングで回避した。

「今だ!」

俺は命を落とさない程度の力を剣に込め、ドラゴンのタンコブに向かって伸びた刃を突き刺す。ドラゴンは驚いたようで悲鳴をあげながら後退する。

(イケる、これならイケるぞ!)

少し目眩を感じたが、このくらいなら問題ない。さっきまでこちらを舐めていたドラゴンの目の色が変わった。やっと敵として認識されたらしい。ドラゴンは再び咆哮をあげこちらに突っ込んでくる。

ここから俺のチキンレースが始まった。

ここから先はまだ見たことのない攻撃パターンだったため、俺は避けることが出来ず、短剣で受け止めることしかできなかった。短剣に力を込めてドラゴンの攻撃を裁く。外から見ているとただ剣で受け止めているようにしか見えないだろうが、力のコントロールが予想以上に大変である。力を入れすぎると昨日のように死ぬだろうし、でもだからと言って力を抜くとドラゴンの攻撃を受け止められず吹き飛ばされるだろう。だから毎回死ぬか死なないかの力を込めて受けることを強要される。ドラゴンの右ナックルを受け止め、つづく左ナックルを流し、不規則的に炎ブレスも混ぜてくる。炎ブレスは剣で受けようがないので、回避せざるを得ない。ドラゴンはそこを右手で追撃してくる。何が言いたいかというと全くこちらが攻めるタイミングがない、ずっとドラゴンのターン状態だ。

その状態がどれだけ続いただろうか、目眩だけじゃ収まらず吐き気がしてきた。体中の体温が下がっていくのも感じる。ドラゴンがブレスを吐こうとした時、俺は躓いてしまう。

(やばい!!)

ドラゴンは勝利を確信したのだろうか、目が笑った気がした。その時だった。ドラゴンは急に体をねじり他の方向に体を向けた。

(今しかない!!)

なぜドラゴンが方向転換したかは分からなかったが、非常に都合がいい出来事であった。俺は倒れた体を起こしありったけの力を込める。

「いっけー!!」

剣先から出たビームはドラゴンのタンコブを引きちぎった。ドラゴンは悲鳴をあげながらその場に倒れる。ドラゴンは恨めしそうな目でこちらを見ると翼を広げ飛び去った。俺の勝利だった。

「やった、遂に俺は勝ったんだ!!」

ガッツポーズを取りたかったが、もうそんな力は残っていなかった。

(ああ、できれば薬草を持って彼女に届けたかったんだがなー。)

俺はその場に倒れこんだ。体中の体温がどんどん下がっていくが今回は不思議と恐怖はなかった。

「まあ、人間ごときにしちゃよくできたよ。」

何か声が聞こえた気がしたがはっきり聞き取れなかった。そうして五日目の俺は死亡した。

挿絵(By みてみん)



―――――――――――――――



(今日も誰も私の話を聞いてくれなかったな。)

厳密に言うと耳は貸してくれるんだが、ドラゴンと聞くとみんな聞かなかったふりをする。ローズはため息を吐きながら家向かって歩き出した。

その時だった。あのドラゴンの咆哮が聞こえた。森の方向を見るとドラゴンが飛び去って行ったようだった。

(ドラゴンが飛び去った、いったい誰が?)

ローズは森に向かって走り出す。


湖に着いた。そこは以前のドラゴンがいない静かな湖に戻っていた。その花畑の横にはドラゴンが暴れたのであろう地面をえぐったような跡があった。その横にはギンガが短剣を握ったまま倒れていた。

「ギンガさん!?」

ローズは急いでギンガに歩み寄る。もう息はしておらずこと切れているようだった。

「ギンガさん、いや勇者様。ありがとうございます。」

ローズはギンガの亡骸を強く抱きしめた。



―――――――――――――――



何やら騒がしい音がして目が覚めた。

「ああ?ドラゴンが飛んで行ったか?」

湖の方を見ると囚人服を着た男がドラゴンと戦っていた(まあ戦っていたと言うより一方的に殴られているの方が近いかもしれない)。翡翠の短剣で何とかドラゴンの攻撃を受けている。

「あいつか、ってことはあの娘の依頼だったか。」

酒場で何度か見かけた魔術師の少女を思い出す。名前は何と言ったか。

「ローズだったか。」

非常に愛おしい名前だ。だから何だ手伝ってやってもいいがー、生憎今は武器を持ち合わせていない。

(もう少し様子を見るか。)


数時間立っただろうか、男はまだ攻撃を受け続けている。

「やれやれ、仕方ない。」

別に男に情が移ったわけではないし、少女に情が移ったわけでもない。ドラゴンがこれ以上暴れて花畑が荒らされるのは見ていられなかったのだ。そういうことにしよう。

「とは言っても、俺が足止めできるのは一瞬だ。うまくやってくれよ。」

俺は弓を持っていたという事象を再現し、矢を持っていたという事象を再現する。そして、弓を思いっきり引き絞る。狙いはあの頭のタンコブだな。そして矢に魔力を注ぎ込む。

「はいドラゴンさん、こっちですよっと。」

青い矢を放つ。そのまま貫いてくれないかなと思ったが、流石にドラゴンは気づいたようだった。こちらを向きその矢を叩き落す。直後空にビームが走り、ドラゴンが悲鳴をあげて倒れこむ。そして、ドラゴンはそのまま立ち去った。一瞬こっちを睨んだ気がする。

(顔覚えられちゃったかね、怖い怖い。)

薬草を摘んで帰るか。俺は花畑に向かって歩き出した。途中、ドラゴンが作った穴のあとにさっきの男が居たので近くにあったドラゴンのタンコブを投げ込んでやる。

「まあ、人間ごときにしちゃよくできたよ。」

言っても俺も人だけどな。スネークに言われた通り薬草を適当に摘んで俺は森をあとにした。


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