10章-1 決戦前
神父は太陽の光を受けて目が覚めた。教会の監視を頼まれていたのにいつの間にか寝てしまっていた。久しぶりに刻印の力を使ったからか体が疲れてしまっていたらしい。自分はもう中年であると実感させられる。
「もう起きて大丈夫なの?」
神父が座っている椅子の隣には銀髪の少女が立っていた。どうやら眠りこけていた神父の代わりに教会を見ていたらしい。月の光を受けて光る彼女も美しいが朝日の中に立っている姿も見惚れてしまいそうであった。
「姉さん、すみません。私が寝てしまったばかりに。」
そんな美しい少女の顔に返り血が付いていた。そして少女の後ろには労働組合のリストに載っていた罪人数人が腕を縛られ気絶していた。少女のことを心配している神父に対し、少女は特に気にしている様子もない。
「ああ、貴方が寝ている間に何人か送還されて来たからね。私の拳で黙らせてやったわ。」
少女は神父の方に笑顔を向ける。神父はハンカチを取り出し少女の顔に付いた血を拭き取った。
「あまり無理をしないで下さい。」
神父の気遣いを聞いた少女はムッとした顔をする。
「それじゃ貴方はあまり私に心配をさせないで頂戴。いつも私のことを大事に扱ってくれるのは嬉しいけど、その分貴方が無理するっていうのも嫌なんだから。こういうことを協力して乗り切って行くのが姉弟だと思うの。」
少女は神父を諭すように言った。死んでから、いやこの地獄に来てからこの少女は変わったと思っていたが根っこは変わっていないらしい。どれだけ口が悪くても、どれだけ悪態ついても他人のことを気に掛ける。
「そうですね、これからは姉さんにも力を貸して貰いましょう。」
神父の言葉に少女は笑顔になった。この人にはいつも笑顔であって欲しい。そう、生前とは違って。
「それじゃ私はこいつらを牢にぶち込んで来るから。あと徹夜して少し眠いから休憩も貰うことにするわ。」
少女は欠伸をしながら気絶している罪人達を引っ張って行った。神父はそれを見送ったあとまた椅子に座り教会の中の監視を再開した。
何だか話し声が聞こえるので俺は目が覚めてしまった。どうやら神父様に〆られた後大樹の下で眠ってしまったらしい。無理な態勢をしていたのか腰が痛い。声がする方を見てみると、神父様と銀髪の少女がイチャついていた。目が覚めたら目の前でラブコメが展開されていたのである。俺はどんな状況なのかさっぱり掴めなかったが、そんな空気を読めない俺でも分かることが一つ。
(寝てたふりしとこ。)
こういうことは首を突っ込まないのが一番だろう。邪魔をしたら俺も少女が引きずっている罪人の一人になりかねない。
(しかし姉弟ねえ、全然似てないよな?)
よく聞きそうな血のつながっていない姉弟なのかね。しかも弟の方が年上とは何という複雑な家庭だったのだろうか。思っても言葉に出せないので俺はこのまま二度寝することにした。




