9章-5 地獄の大地
少女が炎に包まれる中、ヘルグランドは赤黒い槍を取り出し、少女が居るであろう方向に投げた。続けて3つの大砲で少女に向かって集中砲火する。炎に包まれ、槍に貫かれ、集中砲火を受けた少女は生きているはずがない。確かに何かを突き刺した手応えであった。それは少女が死んだということを表している。炎が収まり、ヘルグランドは少女の状態を確認しようとした時である。大砲によってできた大穴の中には槍が突き刺さった右腕だけが残されており、少女は何処かに姿を消していた。その腕は原型を留めておらず、ところどころケーブルが露出している。
「機械義手か。」
燃え盛る炎のせいで視界が悪い状況でヘルグランドの投げた槍が腕に刺さり、そのまま地面に張り付けられたのだろう。さらにそこから大砲での追撃が来ると予測した少女は腕を捨て、そのまま公園から離脱したというところか。ヘルグランドは少女が離脱する様子を見ていない、それくらい速い決断力、実際に行動できる身体能力をあの少女が持っているということだ。
「遂に暗殺者が俺を狙い始めたか。」
だが、彼は今更足を止める訳にはいかない。ヘルグランドの顔にヒビが入った。そう、彼に残されている時間は少ない。何としてでも、彼の夢を叶えなければならない。
「勘弁してくれよ、騎士長殿。」
少女はあちこち焦げた服で来た道を全速力で帰っていた。支給された武器がダガーと投げナイフであるから、簡単に倒せる標的だと思っていた。しかしそれは大きな間違いであった。おかげで少女は右腕を失ってしまったのである。今は布を巻いて止血している。
「もっといいもの支給してくれても良かっただろうに。」
ヘルグランド、あいつは明らかに格下であった。少女が刀を持ち、抜刀許可が出ていれば結果は違っていたかもしれない。まあ、愚痴ばかりこぼしているのも良くないので、少女は少しでも早く天界に帰り、新しい義手に付け替え、装備を整えたい。
「今度会った時は殺してやるんだからなー!」
少女はヘルグランドには聞こえないであろうに公園の方に向かって叫んだ。




