9章-4 地獄の大地
日が沈んだ頃であった。少女が木の上で待機していると一つの人影が公園の中に入って来た。黒のボサボサ頭、黒のファーコート、朝に〆た奴らの証言と一致している。少女は標的の首に目掛けて投げナイフを投げた。しかし、そのナイフは奴の首に刺さることなく、奴の右腕に刺さっていた。咄嗟に急所を庇ったのだろう。奴は事も無さげに右腕からナイフを引き抜く。血が吹き出ているというのに全く気にしていない様子だ。そしてそのまま少女に向けてナイフを投げ返す。少女は木の枝から飛び降り、それを回避した。
「とんだ挨拶だな。」
少女は標的の顔を視認した。額に傷があり、その鋭い眼光は怪しく赤黒く燃えている。間違いない、人殺しの眼である。
「おい、一体何人殺した?」
「覚えてないな。同業者のあんたなら分かると思ったんだが。」
標的の男は少女の問いを鼻で笑った。
「今日はおまえの命を貰いに来た、『ヘルグランド』。人の皮を被った化け物よ。」
少女はダガーを持ち身構える。こいつは人払いの結界を張っているこの公園に入ることが出来た。理由は簡単である。こいつ、ヘルグランドは人間ではない。
「人の皮を被った化け物か。俺にはあんたこそ少女の皮を被った何かに見えるが。」
少女はヘルグランドの言葉の終りを待たずに懐に潜り込んだ。そのまま首を斬ろうとしたが、硬い何かに遮られた。それは宙に浮いた砲身であり、砲口は少女の方に向けられていた。
「!?」
少女はほぼ本能で避けた。直後、少女が居た地面には轟音と共に大きな穴が開いていた。
「その動きまるで獣だな。」
ヘルグランドは不敵に笑う。三つの大砲が奴を中心に浮き、回っている。まるで持ち主を守っているかのように。そして少女に向けて一斉に弾が放たれる。だが、あくまで少女は冷静であった。弾が放たれる直前に全ての大砲に投げナイフをぶつけ、砲口の角度を変えていた。弾は全て関係の無い方向に放たれ、少女はまたもヘルグランドに斬りかかる。貰った、そう思った時である。
「開け、『地獄の大地』よ!」
ヘルグランドを中心に地面に炎が走っていた。それは大きな円を描いており、少女とヘルグランドを囲んでいた。少女は三つの大砲に注意が向いていたため気付くことができなかった。
「しまった、陣術か!」
少女は後退しようと思ったが、間に合わなかった。少女の視界が赤黒い炎に包まれる。




