2章-5 勇者
「勇者様?」
真っ暗な空間に月の光が差し込む。どうやらローズが棺を開けてくれたみたいだ。体を起こすと見慣れた教会の中であった。
「あちち。」
体は完全に回復しているが焼けた感覚が残っている。そしてまた死んでしまったのかと自分のことながら情けなくなる。はあ、とため息を吐くとローズが心配そうに見てくる。もう俺が勇者じゃないって分かっただろうに俺が再生するまでここに居てくれたのだろうか。
(本当に優しい娘だな。)
感動すると同時に罪悪感が沸く。母の命がかかっていて必死の女の子を騙したのだから。だからこそ自分の口で言わなければならなかった。
「ごめんな、俺勇者じゃないんだわ。」
気まずくてローズから目を逸らしてしまう。俺は自分の意地のために嘘をついていたのだ。なのにー
彼女は俺を優しく抱きしめた。
「いえ、あなたが無事で何よりでした。」
そして、彼女はまた立ち上がった。
「私は時間がないのでここで失礼しますね、また力になってくれる人を探さないといけないので。」
ローズは神父様に頭を下げると急いだように出て行った。
「それは反則だろ。」
女の子に抱きつかれたのは生まれて(死んでからという皮肉)初めてだった。そしてその女の子が美少女でとてもいい娘だったのである、もうそれで十分だ。
「よし、俺が今から勇者になってやんよ!!」
俺は立ち上がって気合を入れる。後ろで見ていた神父が笑っていた。
こうして俺がローズと出会った一日目は終了した。
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そして二日目の夕方を迎えようとしていた。
あれから炎で焼かれたり、引きちぎられたりと十回くらい死んだだろうか、何となくドラゴンの行動パターンも分かり攻撃も避けられるようになっていた。
「狩りゲーに数百時間突っ込んだ俺の中学校時代も無駄じゃなかったって訳だ!」
言いながら虚しくなったがとりあえずブレスを飛び跳ねて避け、引っ掻きもギリギリをスライディングして回避、そしてドラゴンの懐に潜り込む。
「よし、もらっー。」
思いっきり右手の短剣をドラゴンの胸に突き刺す。-つもりだったのだが、ドラゴンの鱗が固く虚しく弾かれる。そして隙だらけになった俺に向かってドラゴンは炎ブレスを吐いた。
「クッソー、覚えてろよ!!」
咄嗟に出たセリフがそれであった。そして俺は自分の体が灰になっていくのを感じながら死んだ。
こうして二日目は終了した。




