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「依頼主の方にくれぐれもお礼を言って下さいキャプテン=レオン」
アルバがレオンに礼をする。
エーティルも依頼主に付いて気になりつつも一緒に頭を下げた。
「それで・・・・・アルバとエーティルは、何処に向かって欲しいんだ?」
「・・できたら・・・・巫子王国サフラ・・・へ
向かって欲しいんですが寄って貰えるでしょうか?」
レオンはアルバのその言葉に何故か驚いたような顔をしたが、
一つ頷くと
「・・・・・行ける・・・・知っているが・・・
う~ん・・・依頼主に相談してみても良いだろうか?」
立ち去りかけてレオンは、振り向き
「この部屋を使ってもらっても構わない。・・・・
ただ、船の後方部奥の部屋には近づかないで貰いたい頼む」
そう言って今度こそ行ってしまった。
「母様・・・・後方部だって・・・ひとまず乗せて貰えて良かったよね。」
アルバはエーティルに微笑みかけた。
エーティルは黙ってアルバの身体を抱きしめた。
「アルバ・・・貴方が無事でよかった。
まだ捕まっている者も居るので心配ですが、・・・聖獣を取り戻して来るまでは・・・
ご領主にとっても大事な・・人質のはずですから酷い事にはならないと思いますが・・」
そうは言っても暗い表情をしているエーティルを慰めようと
そっと手を伸ばしてアルバは母の顔を窺う。
「母様、大丈夫だよ、僕、きちんと聖獣を探してみせるよ、絶対探し出すから、
それで、取り戻してみせるから、だから・・・母様、そんな顔しないで
そんな悲しい顔しないで・・・お願い・・。」
めいいっぱい腕を伸ばしてエーティルの背中に回しながら
アルバは風に願う。
(どうか母様を包み込んで母様の頬に光る涙を乾かして)
アルバは、ついに出航した船先に立って両手を宙に向けていた。
レオンからサフラに向かってもらえるという話を聞いて
一安心したけれどまだ捕まっている
人質になった者達のことが気になっていた。
「教えて・・・・風達、皆はどうなっているの?
水達、早く早く僕達を目的の地に運んで・・・・」
アルバの声に反応はしてくれるのだが
今日の風と水達の様子がなんだか変だった。
「・・・・何だか・・・・ざわついている気がする・・・どうして?」
アルバと相性の良い風も水も何故か何処かに行きたがっていた。
どこに?聞いてみると
アルバの乗っている船の船尾に行きたいようだった。
「依頼主が居るっていう?・・・・・駄目だよ!
何故だか分からないけど行ったら駄目だよ!
キャプテン=レオンが言ってたじゃ無いか!
後方部の奥の部屋に行ってはいけないって!
約束したんだよ」
風も水も何かを言いたいようだった。
「約束は守らなきゃ駄目だろ!」
軽く睨むけれど風と水は余計にざわついて
何かをアルバに訴えたいようだった。
ビョウキ・・・ビョウキ・・・アルバ、エーティル、アイタイ
「??」
伝えてくる言葉にアルバは首を傾げた。
ビョウキって?ヨンデル・・って誰が?
何故、僕と母様を?
キテ!キテ!
アルバを引っ張っていこうとする風に水しぶきをアルバにかけて急かせる水に
アルバは、戸惑った。
「・・・・・・・キャプテン=レオンに聞いてみるよ・・・」