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「済まなかった。」
そう言って目の前に座った人物を
アルバは、しげしげと見つめた。
男の格好をして少し薄汚れているが、
如何見てもアルバより少し年上位の少女に見える。
「配下の者が迷惑をかけた。」
少女に導かれてアルバとエーティルは船の中の
簡単なものではあるがテーブルと椅子がある
船長室のような場所に案内された。
アルバとエーティルに椅子を勧めると少女は、
先ほどの男から取り返してくれたのか、
付き従っていた体格の良い男から
エーティルのネックレスを受け取りテーブルの上に置いた。
「これは返そう、
残念だが、今は誰も乗せるわけには行かないのだ」
「・・・・他にも断られてもうこの船しかないのです。
どうしても駄目なのでしょうか?」
少女の言葉にエーティルは、何とか出来ないものかと
頼み込むが、少女は黙って首を横に振った。
「何故ですか?何か理由があるのでしょう?」
黙ってみていたアルバが口を開くと少女に尋ねてみた。
この少女はただの海賊に見えない。
何処と無く良家の者のような育ちの良さと
礼儀正しさをアルバは感じ
その理由を聞こうとしたが、
少女は一言
「言えない」
と言った。
とは言っても、アルバもエーティルも急いで此処から逃れなければ
何時、領主の追っ手が追いついてくるか分からない。
「・・・・私達は追われているんです。
急いでこの地から離れなければなりません、
一番近い島で良いのです・・乗せてもらえないでしょうか?」
「・・・・・申し訳ないが・・」
困った顔をして頭を下げる少女は本当に良い人なのだろうと思う
けれどやはり言葉は曲げなかった。
「そう・・・ですか・・・分かりました」
俯き、母のエーティルを促して出て行こうとするアルバの背に
「・・・・この船には乗せられないが・・
小船なら・・・貸せるかも知れない、小船で海を行くのは危険だが・・
もし・・・・それでも良いのなら・・・」
少女の声が届く、
勢いよく振り返ったアルバに対して少し微笑みを浮かべると
「我らは海賊とは行っても父の代からの義賊、
襲うのは他の領土の船と強欲商人や強欲貴族の船だけと決めている。
弱い立場の領民を守ることを信条にしているからな」
そう言って、相談してくると言って、部屋を出て行った。
しばらくして戻ってきた少女は少し複雑そうな顔をして
「乗せられる事になった・・
実は・・・我らはあるお方にこの船を専属で貸していたのだが・・
そのお方から許しが出た・・・この船に乗っても良いと、
ただ、そのお方の事は詮索しない、
そのお方のいらっしゃる場所に近づかないという事が
条件らしいが・・・・
お前達は何者だ?何かコネでもあるのか・・・?」
そんな事を言いながら少女は
なんにしても良かったなと少し日に焼けた頬で
太陽のように微笑んだ。
「俺の名は、義賊『黄金の獅子』の2代目キャプテン、
『レオン(=ライオン・獅子)』だ・・・よろしくな」
アルバはその笑顔に少し引き込まれて言葉が出てこなかったが
一つ息を呑むと
「僕の名は、アルバ、そして、こちらの女性は
僕の母様、名前はエーティル・・・こちらこそよろしく、
黄金の獅子のキャプテン、レオン殿」
ペコリと挨拶した。