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「え!母様が!?」


エーティルが、逃げたと言う、風の言葉に


アルバは驚いて元来た道を引き返す。




「母様!!」


風の導きに従って、母の元に辿り着いた時、


母のエーティルは、泣いていた。


力尽きた騎士の身体を抱き、


後から後からあふれ出す


透明の涙を零す母のエーティルに


アルバは何も言えなくて


ただ、その姿を見つめていた。




「逃がしてくれていた時に既に傷ついていたのです。」


アルバが騎士に瞳を落とすと、


背中を大きく切られて血で赤く染まっていた。




アルバの瞳からも涙が零れ落ちた。


「ありがとう・・・・・感謝します。」




騎士のその額に母のエーティルは感謝の口付けを落とした。


















「この船に乗りたかったらそれ相応の金を出せよ」


女子どもの二人連れだからと他の船に断られ


最後の望みの綱として港に横付けされていた


海賊船に頼んではみたものの、金なんて無いのにそう言われて、


アルバとエーティルは途方にくれた。




「お金は無いのですけれど・・・・・・じゃ・・・これで・・」


エーティルが暫く考えた後、首のネックレスを手に取った。




「・・・・さっき貰ったものですけど


貰ういわれが無いので・・返したかったのですが


もう戻れませんし・・・これだったら


お金の換わりになるのでは無いですか?」


領主のリュデクテスに贈られたものなのだろう


いつもは付き返すところだが、


急いで逃げ出して来たので此処まで付けたままだった。


エーティルは、押し付けるように贈られたものでも


勝手に人手に渡していいのかと迷ったが


アルバと逃げる為と覚悟を決めて差し出した。








「・・・良い物を持っているじゃないか」


暫くネックレスをひっくり返したり戻したりしながら見ていた男が


にやりと笑ってそう言った。




「・・・しかし足りないな・・・・


まだ他に有るんじゃないのか?」


他と言われてエーティルとアルバは途方にくれた


本当に何も無い・・・自分達の着ている物と


粗末な短剣にパンと水だけ・・他には何も無い。


恐る恐るアルバが短剣とパンと水を差し出すが


奪い取られた上に


男は、まだ首を縦に振らなかった。




「・・・本当にもう・・・・」


「じゃあ、身体で払って貰おうか・・・・


好きものの貴族とかに売ったらかなりの金になりそうだ・・・


かなりな上玉だからな」


嘗め回すような瞳でエーティルとアルバを見ると


男は徐にエーティルの背後に回って羽交い絞めにした。




「その前に、俺が楽しませてもらうがな・・・


大丈夫、商品に傷を付けたりしないぜ」


二マリと笑いながらエーティルの頬に顔を寄せる男を見て


アルバの周りの風がざわめいた。




「母様を・・・・」


「何をしているやめろ!」


言いかけたアルバの声に重なるように甲高い声がした。




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