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あれから私達は、3時間、ゲーム内時間で6時間をレベル上げに費やした。
シオンとカノンは既に草原ではレベルが上がりにくいようで、スキルの使い方を研究していた。
このゲーム、基本的にはプレイヤースキルと言われる技術的なものはなくても大丈夫なように設計されている。
ただ、やはり攻略組と言われるようなゲームのトップ層では、プレイヤースキルで勝敗が左右されることも多いという。
大変だなぁと思っていたら、二人ともから私は気にしなくて大丈夫と言われた。
そうだよね、私は攻略組みたいにプレイしていくつもりはないし。
ちなみに兄妹二人は攻略組の最前線に立っているらしい。
パーティーはそれぞれ別みたいで、今度パーティーメンバーも紹介してくれるそう。
そんな二人をいつまでも私のお守りにつけておくわけにはいかない。
私はひたすらにレベルを上げ、独り立ちできることを目標に弓を射続けた。
「なぁ…」
「うん…」
指を離すと、3本の矢が放たれる。
矢は狙い違わず、こちらへ迫っていた3体のグラスウルフの眉間に突き刺さる。
クリティカル判定がなされ、3体とも光となって消えた。
《プレイヤーレベルが上がりました》
《『看破』のレベルが上がりました》
《『初級弓術』のレベルが上がりました》
《称号『アーツ要らず』を獲得しました》
「ふぅ」
現実ではないので、疲れなどは気のせいでしかないのだが、集中するとやはり疲れているような気がする。
息を吐いて振り返ると、二人が苦い顔でこちらを見ていた。
「ねぇお姉ちゃん…今のってトリプルアロー…?」
「え?そうなの?」
「いやいや、トリプルアローは中級のアーツだろ?」
「わかってる…わかってるけど…ということは素か…」
「我が妹ながら相変わらずの規格外だな…」
わけのわからない私に二人が苦笑いで説明してくれる。
私が今やった矢を三本同時に放つ技は『トリプルアロー』と言われるアーツで、中級弓術になってから習得ができるものらしい。
それを初級弓術で放ったことから、システム補助によるアーツではなく、プレイヤースキルによる技術ということで驚かれたそう。
「へーそうなんだ」
「そうなんだって…なんでできるのお姉ちゃん…」
「んーなんとなく?」
なんとなくできそうな気がしたからやってみただけ。
それより今のでレベルが上がったね。キリがいいしここまでかな?
ステータスポイントを振り分けたら一度ログアウトしよう。
「これでよし、と」
6時間頑張った成果がこちら!
▽▼▽
プレイヤーネーム:シオン
種族:バードマン
レベル:11(+10)
メイン職:狩人
サブ職:下級薬師
筋力値:10(+6)
知力値:12(+6)
耐久値:3
敏捷値:15(+4)
器用値:11(+4)
残りSP:10
<スキル>
「鷹の目」「看破Lv6」「初級弓術Lv6」「初級短剣術Lv4」「採取Lv3」「鑑定Lv2」「初級風魔法Lv3」「回避Lv3」「狙撃Lv2」「速射Lv4」
<控えスキル>
「初級薬術Lv1」「追跡Lv1」
<称号>
「ウルフキラー」「ミスクリティカル」「精密射撃」「アーツ要らず」
▽▼▽
このゲームでは1つレベルが上がるごとにステータスポイントを2ずつもらえる。
今のところ私は耐久を除くステータスに順番に割り振ってる。
ここまで攻撃は受けたことないから、耐久はきつくなってからでいいや。
他にはスキルと称号が増えた。
スキルは最初に取ることと、スキル屋以外にも自身の経験によって得ることができるようだ。
称号もそんな感じ。
増えたスキルと称号の取得条件、効果はこんな感じ。
▽▼▽
「回避」パッシブスキル
・攻撃を避ける際に補正。
・敵攻撃の命中率減少。
取得条件:敵の攻撃を20回回避。
「狙撃」パッシブスキル
・50m以上離れた距離から攻撃を行う際、攻撃力上昇補正。
・50m以上離れた距離から攻撃を行う際、命中率上昇補正。
取得条件:50m以上離れた距離からの攻撃を50回以上命中させる。
「速射」パッシブスキル
・矢を番える際に速度補正。
・一定確率で矢を消費せず攻撃できる。
取得条件:アーツを用いず、1分以内に弓矢による物理攻撃にて2体以上の敵を討伐。
称号「ウルフキラー」
・狼系の敵に対し攻撃力2%上昇。
取得条件:狼系の敵を100体以上、1度の探索中に討伐。
※探索とは、セーフティーエリア外に出る行為を指す。
称号「ミスクリティカル」
・クリティカル発生率上昇
・クリティカル発生時、攻撃力5%上昇。
取得条件①:クリティカルでの敵討伐数100体以上。
取得条件②:クリティカルでの敵討伐連続記録50体以上。
称号「精密射撃」
・遠距離攻撃時、クリティカル発生率上昇
・遠距離攻撃時、攻撃力3%上昇。
取得条件①:遠距離攻撃クリティカルでの敵討伐数50体以上。
取得条件②:遠距離攻撃クリティカルでの敵討伐連続記録50体以上。
称号「アーツ要らず」
・アーツ以外の攻撃時に攻撃力5%。
取得条件:アーツを用いずにアーツを再現すること。
▽▼▽
「称号も増えたなぁ」
「そうか、『アーツ要らず』が取れたんだな?」
「あーあったね、あの激レア称号」
「激レアなのね、これ。二人が知ってるってことは他にも取得者が?」
「ああ、一人だけな」
なるほど。
あんなのでいいんだったら特に難しそうではないけどなぁ。
ちなみに、ほかの称号やスキルも取得の際に二人に教えてもらっている。
私はゲームのことがあまりわからないから、どうしたらいいのか聞いておかないといけない。
結果、スキルはよく見るものが多いが、称号は二人も初見のものがあるとのこと。
「ミスクリティカル」と「精密射撃」。
この二つは、効果がとても強く二人も欲しいそうなんだけど、なかなか難しいだろうとのこと。
スキルや称号の情報については、周知させないでもいいのか聞いたら、どちらでもいいとのこと。
掲示板等に投稿することにより喜ぶ人は多いだろうけど、このゲームはステータスを覗き見るようなことはできないため、秘匿していたとしてもバレることはまずない。
威力がおかしいと話題にはなるだろうけど、私のクリティカル発生率は素でやばいのでどちらにしろ話題にはなる。
その時には攻略組最前線の二人の兄妹であることも知れているはずで、この二つのパーティーに喧嘩を売るようなプレイヤーはまずいないだろうと有難いお言葉を頂いた。
「さてと、これで一旦ログアウトかな?」
「そうだな、もうここではなかなかレベルも上がらなくなって来る頃だ。昼からはどうする?」
「んーそうだなぁ」
以前にも言ったように、現実世界の3時間がこちらでの6時間。
現実世界の半日で1日が経過する。
今、現実世界では11時を過ぎた頃だけど、こちらは夜になっている。
夜になると出てくるモンスターが少し変わり、グラスウルフとナイトバットだけになる。
グラスウルフリーダーの出現率も夜の方が高い。
それに夜にはフィールドを徘徊するウルフロードというボスモンスターがたまに現れるらしい。
残念ながら今回の探索では現れなかったけど。
「戻ってくる頃もまだ夜だよね?」
「そうだな。夜時間に森はシオンにはまだ早いかもな」
「なら、次のログインは街を案内してもらっていい?」
「任せて!」
嬉しそうに飛びついてくる妹を撫で、お兄ちゃんに微笑む。
そうして私の一度目のログインは終了した。
レベルの経験値計算が大変です…
レベルアップまでどのくらい必要で、このモンスターからはこのくらい経験値が稼げて、何時間プレイしているから何体くらいこのモンスターを撃破しててって…
他の皆さんはどうやってるんですかね…