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1-1 初フィールド

光に向かって歩くとすぐに出口へとたどり着いた。

そこを抜けると、景色は一気に変わりどこかの町の中にいるよう。


「すごい…」


中世風の石造りの建物が並び、自分の後ろには噴水が。

そして町()く人々は鎧を着けていたり耳が生えていたりとファンタジ-の世界に紛れ込んだようだった。


「あっお兄ちゃん達探さないと!」


お兄ちゃんと香織は初期設定が終わったら出てくる広場で待っていると言っていた。

このどこかにいるはずなんだけど…


と、私がキョロキョロと二人を探しているとトントンと肩を叩かれる。

振り返ると、赤色の髪を肩で切りそろえセットされた兄と銀色の長髪を二つ結びしたにした香織がいた。


「お姉ちゃん!綺麗!」

「おっと!」


急に抱きついてきた香織をなんとか受け止める。


「香織だってかわいいよ?やっぱり考えることは一緒ね」


自分の髪を触りながらそう言うと、香織はえへへと嬉しそうに笑った。


「あ、ここではカノンだからそう呼んでね!」

「言ったと思うが俺はレオンだ」

「お兄ちゃん赤髪って…」

「かっこいいだろう?」


肯定はしたくないけど元々美形のお兄ちゃんにはかなり似合ってるね。

本当にゲームの世界のキャラクターのようだ。


「私はシオンにしたわ」

「本当に!?これで兄妹おそろいだね!」

「そうだな!」


二人ともが嬉しそうにしているのを見て、自分の頬も自然と緩む。

こうして三人でゲームをするなんていつ振りだろう。


ただ、未だにここがゲームの世界だとは信じられないよ。

頬に感じる風も、景色も、匂いもリアルと変わりない。


「しっかしシオン、バードマンを選んじまったのか…」

「え?何かまずかった?」

「お姉ちゃん、あのね?気を落とさないで聞いて欲しいんだけどバードマンで飛ぶのは本当に難しいらしいの」

「戦闘なんてとてもじゃないができないらしいぞ。まぁできる奴もいるにはいるが」

「あの人は特別だから…」

「そうなの…」


でも、私は戦闘する気はそんなにないし大丈夫だよね?

いざとなれば別に飛びながら戦闘をしないといけないわけじゃないし。


「お姉ちゃん、職業は何にしたの?」

「『狩人』と『薬師』だよ」

「『狩人』って…中位職じゃねぇか!」

「お姉ちゃんランダム選んだの…すごいね」


何故か二人に苦笑いされてしまった。

聞けばランダムでいい職業に当たることは稀なんだそうだ。

運営がおふざけで作ったようなユニーク職が当たることも多いらしい。


「まっいいじゃない!私は生産の方をメインにする予定だし」

「そうなのか。けど俺達とも偶には組んでくれよ?」

「組む?」

「パーティーだよ!偶には一緒に冒険しようってこと!」

「もちろんだよ。二人と遊ぶ為にこれやるんだから」


シオンが笑うと二人は少し照れたように笑った。


「それで、ここからどうすればいいのかな?」

「フィールドに出るか」

「そうだね!」


いきなりか…

そう思いながらも二人が言うならと私は二人に着いてフィールドへと繰り出した。


---


フィールドに向かいながら色々と話を聞く。


一つはこの町の話。

この町は「始まりの町」と呼ばれており正式名称は「ファーストリア」。

全てのプレイヤーはこの町からスタートする。

何も設定してなければ死んだ時さっきの噴水の前に復活するらしい。


デスペナルティーは所持金の半額と所持アイテムのランダムロスト。

更にゲーム時間で一時間のステータス半減とかなりシビアだった。


次にこの町周辺のお話。

この町から行けるのは西の草原、東の森林、北の岩山、南の海岸。

その内初心者に優しいのが西で東と北は少し難易度が上がる。

南は段違いで現状クリアは不可能と言われているそう。


「え?現状?」

「うん?そうだぞ。まだ正式サービスが始まってから三日しか経ってないからな」

「ごめんね、お姉ちゃん。サービス開始と同時にプレゼントできなくて」

「え?!いやそれはいいんだけど…二人とも二か月前くらいからやってなかった?」


二人が自室にこもり始めてから二カ月は経ってると思うんだけど…


「あーそれはβ期間だな」

「私たちβテスターだから!」

「ああ、なるほど…」


私でもβテストくらいは知っている。

ゲームを正式発売する前に希望者を募り試しにプレイさせてみてバグや不備がないかを確認するあれだ。

でもこれだけのゲームのβテストって希望者殺到したと思うんだけど…二人とも通ったのか。

なんとういう強運。


「まぁ三日と言ってもゲーム内では六日経ってるけどね~」

「え?それって…」

「お?言ってなかったか?このゲームは現実時間の12時間で一日が済む仕様になっている。こっちで丸一日遊んだとしても現実では12時間しか経ってないってことだ」

「時間の加速は精神的に負担がすごいらしくてなんちゃらかんちゃら理論を使ったなんとかプロテクトとかしてるらしいよ。それでも長時間の持続プレイはダメってことで3時間したら一度ログアウトしないといけないけどね」


現実時間で2時間30分経過したら視界にログアウトを促す表示が出るらしい。

ここでログアウトしなくても3時間になったら強制ログアウトの上現実時間で一時間ログイン不可になる。


「すごいんだね…」

「昼と夜でフィールドに出現する敵が違ったりもするし、学生や会社員でこの時間はプレイできないって不公平を失くす為じゃないか?」

「なるほど…」


それは確かにそう思う。

夜しかプレイできない私達にとって昼の時間も体験できるというのはありがたい。


「でも、そっか…βテスターだからお兄ちゃん達詳しいんだね?」

「そうそう!βでは第三の町郡までしか解放されなかったらそれ以降はわからんが」

「レベルとかはかなり上げれたからスキルとかは情報があるよ!」

「頼りにしてる」


私がそう言うと二人がそれぞれに「任せて」と胸を張って頷いた。

その仕草がそっくりで息ぴったりで、私が思わず笑うと二人も顔を見合わせて笑い始める。


そうしている内に、私達はフィールドへと出る町の門に辿り着いた。


---


「おさらいするぞ。まずこの東の草原に出るモンスターは四種類だ」

「ホーンラビット、ジャンピングラット、スライム、グラスウルフだよね」

「うん!グラスウルフには偶にグラスウルフリーダーって言うちょっと強い固体もいるんだけど滅多に出会わないし、出会ったら私とお兄ちゃんで相手するから無視でいいよ!」


カノンの言葉に頷き、私は背負っていた弓を手に持つ。

この弓は「木製の弓」と言うアイテムで、弓術を取ったプレイヤーに贈られる初期装備だ。

攻撃力はいまいちなんだけれど、セットで付いている「木製の矢」は何発撃っても減らないというもの。

攻撃力はいまいちなんだけどね。大事なことなので二度言いました。


矢が減らないのは、この機能がないと弓使いは初期から出費が嵩んでしまうから配慮しているそうだ。

最初だけらしいけどね。そのうち装備を変える必要も出てくる。そうなると矢は有限になってしまう。

そのため自分で矢を作製できるようにそういったスキルを取る人も多いそうだ。


「お、さっそくお出ましだな」

「ウサギかぁ!弓矢だとちょっときついかなぁ」

「ネズミよりはましだろう」


あとから聞いた話なんだけど、弓矢はかなり難易度の高い武器らしい。

ゲーム内で一番モンスターを倒し易いのが今いるこの草原らしいんだけど、そこに出てくるモンスターの敏捷性はスライムを除いて高く、矢が当てにくい。

唯一、敏捷の低いスライムは物理耐性が高いため矢の攻撃では倒しにくいそうだ。


最初に私たちの前にでてきたのはホーンラビット。

現実にいるウサギに角をつけただけの見た目。

さっきカノンがきついと言っていたのは、その大きさ的に矢を当てにくいということなんだろう。


「まぁでも」

「シオンには…」


こちらを見てくる二人が視界に入ったけど、私の意識はもう目の前のホーンラビットにしかいってなかった。

身体の力を抜き、弓矢を構える。

ようやくこちらに気づき向かってきていたホーンラビットの眉間に狙いを定め、その少し上を…射る。


「キュッ」

「お見事」

「うわぁヘッドショット…しかも眉間ど真ん中…さすがお姉ちゃん…」

「ふぅ。弓矢って初めて使ったけど、案外当たるものね」

「「いやいやいや…」」


呆れた様子で二人は首を振っている。

なんだろうか?私も思わず首をひねってしまった。


「あのね、お姉ちゃん」


弓矢は慣れるのに最も難しい初級武器だと言われているらしい。

剣や槍は扱い方もわかるものだが、弓矢は現実で弓道部でもない限り触ったことのない人の方が多い。

システムのアシストもあるので使えないとまでは言わないけれど、最初から当てていくのはおかしいらしい。


「それにこのゲームこだわりがすごくて、風とかも計算しないと当たらないらしいんだけど…」

「それは種族的なところかな?なんとなく風が吹きそうな方向がわかったから調整してみたの」

「そんなの聞いたことないぞ…」

「まぁお姉ちゃんだし」

「だな」


二人はそう言って笑ってる。

まったく失礼なことだ。


「よし!なら今日の目標はどうする?」

「うーん、少しレベル上げはしたいかなぁ?あとラビット以外のモンスターとも戦っておきたいかも」


話しを聞く限り森地帯のモンスターはゲームに慣れるまでは難しそうだし、岩山は私にはまだ難しいだろう。

当分の間はこの草原が私の狩場になりそうだ。だったら二人がいてくれる内に、色んなパターンを知っておきたい。


ちょっと二人に頼りすぎかな?とちらっと二人を見ると、とてもうれしそうに「行こう!」と言ってくれた。

その笑顔を見ただけでこのゲームを始めてよかったなぁと思った。

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