ここはどこですか?
とりあえず、2話更新。
これから長いお付き合いをよろしくお願いします。
水嶋木葉14歳
父親の暴力から逃げるために図書館でいつも本を読んでいる。自転車は伯母が好きなところに行けるようにと、中学生になった時に入学祝として買ってもらった。
なんだか・・・ふさふさでもこもこなものがある・・・。
目が覚めて一番最初に思ったことだった
ちょっと目の前は真っ暗だけど安心できる温かさに包まれていた。手探りで光を求めようとして僕は少し光が見えたのでゆっくりと腹這いで進んだ
ポフッと音がでそうな感じで僕は頭を出して、今現在と過去の状態をまとめてみることにした
「えーと・・・とりあえず、いきなり雪と桜の降る世界にいて寒くて眠くなって倒れた後・・・が今、だよね。」
顔だけ出た状態できょろきょろと周りを見渡す
まず、ここが洞窟みたいな場所で寒さと風がそれなりに防げる場所っぽい
次に、このもふもふ。触ると心臓の鼓動が聞こえて生きているように感じる。と、いうことはたぶん僕はこの動物のもこもこ毛皮に助けてもらったことになる
顔だけでも出してると寒いけど、僕はこの寒さから助けてくれた動物が何かを知りたくなった
さらにもそもそと身体を動かして、僕は毛皮の下から抜けた
頭があると思わるほうに向かって歩く。
あ、大きな耳が見えた。
耳の正面に立つとそこには顔を前足で抱えて寝ている動物の姿。さっき見えた耳は前足で抱えきれなかった二つの獣耳の1つだったらしい。
あと、驚いたことが1つ。
「でっか・・・。」
本当にその生き物は大きかった。身体を丸めていて寝ているだけども1.8mくらいはあった
「・・・触ってみたいかも・・・。」
無類の動物好きであるコノハは目の前にもふもふで大きな動物がいることを恐怖に思わず、むしろ好奇心が上回っていた
触ってみると、温かくてふわふわな毛並みに、半分理性が吹き飛んでモフモフし始めた
モフモフして癖になりそうだ
どのくらい触り続けていたかわからなくなった時、大きな生き物は顔を上げた
大きい犬みたいな感じだけども、犬よりももっと違う何かを感じる。
「・・・・オキタカ。オマエハ・・・・ナニモノダ?」
(・・・喋った!!片言だけど)
「マァイイ。オマエノ、キオクヲ、ノゾケバイイノダカラナ」
モフモフの大きい生き物は手を僕の頭の上に置いた
踏みつぶされる!と思ったけど、そんな心配はなく少し硬い肉球が僕の頭の上に置かれただけだった
「フン」
瞬間、キィーンと頭の中で音が響いた。何かが僕の頭の中で駆け巡るような感覚。始めて味わうような感覚に気持ち悪くなって膝から崩れ落ちた
「・・・・。お前はこの世界の住人ではないみたいだな」
あ、犬もどきが片言からなめらかに話すようになった
「お前の記憶を読みとり、久しぶりにニンゲンの言語を話したからな」
「あの、僕がこの世界の住人ではないとは・・・?」
「お前は時空の穴を通ってこの世界に来たみたいだな。・・・お前たちの世界でいう並行世界というやつになる」
「並行世界って・・・世界は僕が住んでた世界だけでなくていろんな世界がある・・っていうアレですか?」
最近のネット小説とかで流行ってるアレだろうなぁ・・・。並行世界・・・パラレルワールドというやつだっけ?
「並行世界・・・。そうか、オマエたちの世界はそう呼んでいるのか」
「あの・・・僕、帰りたいのですが・・・」
「わからん」
「え?」
「帰り方などわからん。そもそも、世界を渡った渡人なんぞ、我は生きていた中で1人しか知らぬ」
「いるんだ・・・。その人はどこに!?」
「・・・あ奴は死んだ」
「・・・え・・・?」
「あ奴は死んだ。ニンゲンは我たちに比べ、脆く上限が短い」
上限・・・・。上限が短い・・・?
「それも今この時から300年前になる」
「すいません・・・・上限って何ですか?」
「あぁ、ニンゲンたちで言われる寿命というものだ。我たちの中では、命の源の上限と言い、簡素に略hして上限と呼ぶのだ」
・・・・ということは、上限は寿命・・・または、僕たちの命。このモフモフの生き物が知っている渡人と言うのは、トリップしてしまった人が最後にいたのは、300年も前になるんだ・・・
「僕は・・・元の世界に帰れるのでしょうか?」
「いいや。あ奴も帰還方法を探していたようだが、見つからずに死んだ。」
「・・・・僕帰れないのかぁ・・・・。」
「ニンゲン。お前の名はなんだ?」
「僕・・・・?僕の名前は木葉。水嶋木葉」
「コノハ。良い名だな。アイツとは真反対の名だ。」
「えっと、君の名前は?」
「名は・・・無いな。アイツには黒いのと心外な名前で呼ばれていたが。」
「黒いの・・・じゃ流石に可愛そうだよね・・。ねぇ。もし、君が良ければ、僕が君に名前を付けても良いかな?」
「・・・。良かろう。」
うーん。見た感じやっぱりオオカミだし、犬っぽい感じもするんだよなぁ・・。
「・・・。ファング。」
「何故その名前にした?」
「牙と言う意味だよ。僕の世界にはたくさんの言葉があるんだ。その中で、君に会いそうな言葉で考えたんだけど・・・」
「ふむ・・・。キバか。・・・。よかろう。ファングという名前をもらおう」
「どういたしまして・・・でいいのかな?」
「そうだろうな。我は今まで、名はなかった。コノハに名をもらった以上その名前を我は自身の名とする。」
「僕は・・・この世界でどうしたらいいんだろう」
正直僕の家は良い家ではなかったと思う。母親はいなくて、父親は昼間からお酒を飲んで暴れているような人。僕も13歳までは殴られていたけど、14歳になったころ図書館という避難場所を見つけてからは回数も何とか減った。でも、閉館時間になるとしょうがないから家に帰る。そうして家で父親の分までご飯を作り一人でご飯を食べ、また部屋にこもり図書館で借りてきた本をひたすら読むという生活を送ってきたため、正直未練はないかも。あ、あるとしたら図書館の本、もう少しで完全制覇できる所だったのになぁ・・・。
「コノハ。この世界で生きるか?」
「・・・。あっちの世界には、多分戻れないんでしょ?なら仕方ないかな」
「ずいぶんと速い決断だな。この世界で初めて我にもあったが縁だろう。コノハ。お前に祝福をやろう。」
「祝福?」
「そうだ。」
祝福とはどうやら、一定以上の強い力を持つ生き物が持つことの出来る特殊な力の事のそうだ。
「我がコノハに授けるのは、傷を治す力・・破壊と再生の祝福だ。」
「どんな効果があるの?」
「自分の生命力と引き換えに、相手を回復させるものだ。あと、再生させるだけでなく、自分の受けた痛みを相手に移すこともできる。治す事と傷をつける事は表裏一体だ。」
「・・・どうして・・・僕にそんなものを?」
使い方によってはこの世界を壊すものかもしれない。異世界から渡ってきた僕なんかになんでこんな能力をくれるんだろう。名前をあげただけじゃ普通そんなことしないよね?
「・・・・アイツとの約束だ。次にこの世界に渡ってくる人間を、助けてくれとな。・・・。アイツの約束を守る気はサラサラなかったが、我はコノハを見て決めた。」
「その・・・アイツって人は・・・誰ですか?」
「それも言えんな。アイツと我の約束だ。」
ファングは目を細め、懐かしむように言った。もしかしたら、アイツと言っている人はファングにとって大切だった人かもしれない。
「コノハ。この世界は美しい。コノハは気付いてないと思うが、この世界で人間の心と触れてみろ。コノハがこの世界を壊してしまっても、我は・・・恨まない。その時が来てしまったら我がすべてをかけて再生させる。」
「・・・・。ねぇ・・・。ファング。本当に僕なんかでいいの?」
「ああ。決めたことだ。我は二言は言わん。どうするコノハ。このままこの山にいるか、人里に下りるか・・・。」
「・・・。ファングと別れるのはさみしいけど、僕人里に下りるよ。きっと僕の知らないことを知れるかも知れない。それと、帰り方もわかるかも知れないしね」
「そうか。それならば我は止めない。・・・最後だ。人里の少し手前まで送って行ってやろう。」
「ありがとう、ファング。」
「我の背に乗れ。落ちるなよ」
ファングはそう言うと、小さく屈んでくれて僕を背中に乗せやすくしてくれた
「しっかりつかまっていろ」
もふもふを堪能する所でもなく、いきなりトップスピードに入り、しがみつくしか方法は無く途中で何度も風圧に負けそうになり飛ばされそうになった。
そうして着くころには僕はボロ布みたいになっていた。
「さぁ、ここで別れだ。お前の荷物だ。受け取れ」
ファングが口で咥えていたものは僕の自転車だった。
「あ、僕の自転車。と、カバンもあるね・・・・。本当にありがとう。」
「礼を言われるまでもない。当然のことをしたまでだからな。さぁ、コノハ行け。コノハが望むものはないかもしれないが、世界は広い。・・・。自力で我に会えに来ることが出来たら、その時はアイツについて教えてやろう。」
「・・・。わかった。僕、きっとまた会いに行くよ。ファングに。」
「あぁ。楽しみに待っている。では、我は行く。」
「うん。またね・・・」
ファングはそういうと来た時よりも更に速いスピードであの幻想的な山に帰って行った。
「僕も・・・行こう。」
自転車は返してもらったし、とりあえず食料もなんとかなる。
僕は自転車に跨り、道が続くはるか先を目指して、ペダルを踏み込んだ