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短編集

カミサマゲイム

作者: 神城 奏翔

一応、短編作品です。


続きを書く時間が出来れば、書かせていただきます。

 神様の遊戯ーー。

 永遠に死ぬことのない神様の思い付きによって、唐突に始まりを告げる暇潰し(ゲーム)。

 参加者は神様が身勝手に選び、強制的にゲームに参加させる。例え、それが命を賭けるゲームであったとしてもやらせる。選ばれた人間は「神様のお導き」だと言って諦めるしかない。

 全時空を支配する全知全能の神『ゼウス』。彼が設定した世界、設立したルールの元で人間(プレイヤー)達はゲームを満喫する。

 自らの命を賭け、たった一つの願いを叶えるために日夜ゲームの世界を走る。


「……なぁ、御堂の奴うざくないか?」

「あー、わかる。まるで自分は関係ありません、みたいなバリアーを張ってやがるもんな」

 放課後の校舎裏。何とも有りがちな場所を拠点とし、柄の悪い生徒達が集まって特定の生徒の悪口を言い合っていた。

 話題の中心な「御堂」という少年は周囲の生徒から評判が悪く、人付き合いをあまりしないようだ。そのため、次第に孤立してゆき今のように影で悪口を言われる存在になっているのだろう。

「一回、ボコるか?」

「やめておきなよ。アタシ達の内申が下がるからさ」

「まぁ、『欠陥品』に構っていられる暇はないってね」

 人を小馬鹿にした下卑た笑いが校舎裏から響き渡り、遠くにいる無関係の生徒の耳にまで届く。彼はまったく気にしていない様子でありながら何かを気にする素振りを見せながら帰って行く。

 校舎の中から彼らの不届きな行為を視界に入れながらも、注意を促すことが出来ない教師の姿もあった。

 家までの帰路的に裏門を通らないといけない生徒はなるべく気にしないように、関わらないようにそっと歩いている。

「そうそう、さっさと帰りやがれ」

 その光景を屋上から楽しんでいた。不良達が揃いも揃って、たった一人の悪口を叩いている。しかも、悪口の対象が俺と来たもんだ。

「やばい、超面白いな」

 本人が見ていない、聞いていない。そう思い込ませて話の全貌を聞く。他人の評価が気になったときに使う戦法だ。

 俺は聞きたくて聞いているわけではなくて、偶々聞こえて来たから足を止めて聞いているパターンだからな。

 まさか、自分の話題だとは思わなかったぜ。

 クラスの一部生徒には好かれていない、これは確定事項だったからショックを受けたということはないし、鬱になることもない。だが、相手が喧嘩越しなら買ってやろうと思う気持ちは何なのだろうな。

「まぁ、いいや。考えるのもめんどいし」

 時間が経てば迷いや疑問なんて解決してしまう。それが綺麗な締め方か小汚い妥協した締め方かは不明だがな。

「……それにしても、欠陥品欠陥品って煩いな」

 欠陥品ーー。

 何かしらの欠陥を抱え込んでいる者達のことを指し、一種の差別用語であるため使用は禁じられているが、不良達は気にしないのだろうな。

 それにしても……。

「欠陥品ねぇ。あってるから文句は言えないけどな」

 俺に対して言うのであれば、それは間違っている。

 他人が俺を欠陥品だと思っているんじゃない。俺がこいつらに俺が欠陥品だと刷り込んだのだ。人前で失敗ばかりして、この世界の常識『魔術』を使えないことにしてな。

「俺が『選ばれし者』だと言うことはあまり知られたくないからね」

 目立てば目立つ程、狙われる可能性が増える。

 歴史上の人々はほとんどがそうだ。目的を独特な方法を使用して成し遂げたのはいいが、周りの人からは目障りだとばかりに切り捨てられる。

(俺は、そんなの嫌だ)

 一番最初に死ぬのは嫌だし、何よりも俺は神様に叶えて貰わないといけない願いがあるのだから……。


 俺が神様の存在を信じられるようになったのは、少し前のことだ。


 ◆


「……た、助けてくれー!」

 小汚い路地裏にて、男性の悲鳴が夜の街中に響き渡る。

 近くに家など人が住む建物がまったくないことが青年にとって幸か不幸なのかはわからない。自分のみっともない姿は見られなくて済むが、生死は彷徨うのだからな。

「誰が助けるか、ばーか」

「う、うぅ……」

 俺に蹴られた場所を摩りながら、痛みを必死に堪えている青年。その姿がとても真剣で、すぐにでも壊したい衝動に駆られる。

「ま、今回ばかりは許してやるよ。次はねぇからな」

 無様に転がっている青年を嘲笑うかのような声音で話し、最初に仕掛けてきた相手のことを思う。

 喧嘩を吹っかけて来たのは俺ではなく、この地面に伏している奴なんだ。俺は売られた喧嘩を高値で買っただけのこと。

 喧嘩の心得ぐらい持っていて、俺に喧嘩を売ったのかと思ったが、それも違うみたいだ。

 まぁ、どちらにせよ。喧嘩に置いて別名すら持っている俺に挑むのが間違っているんだよ。

「ホント、聞いてんのかな」

 目が虚ろになっている青年がしっかりと聞いているのか気になったが、反応がないので判別が不可能だ。

「まぁ、いいや」

 ここにいても仕方がない。家に帰ろうと思った俺はすぐに行動を開始した。

 警察や自治会などのグループに見つかったら少し面倒なことになるからな。

 足早に現場を去り、大通りに抜ける。

「あいつ、本当にわかっているのかね」

 懲りずに喧嘩を吹っかけて来たら聞いていなかった、来なければ聞いていたという判別の仕方もあるにはあるが、喧嘩を買うメリットがないからな。態々、喧嘩をしたいとも思えない。

 今回や今までの喧嘩は、少なからずメリットはあった。

 妹に悪い虫が付かないように、喧嘩最強と思わせる必要もあったし、軽くストレス発散も兼ねていたからね。

 だが、今となっては必要ではない。

 妹が連れて来た一人の男に妹のことは任せたからな。あいつは俺も両親も了承せざるを得ない思想を持っていた。だからこそ、俺はあいつに妹を任せた。

「そろそろ喧嘩離れをして、新しい生きがいでも見つけるか……」

 すぐに見つかる生きがいはないだろうけどな。と自嘲したときだった。

『そんな君にビッグなゲームを持ってきたよー』

「だ、誰だ!」

 さっきまで人がわんさかいたのにも関わらず、今は人が一人としていない。まるで俺が異空間に閉じ込められたようだった。

「始めまして。御堂君」

 俺しかいない真っ白な世界に一人の好青年が現れた。銀色の髪を纏い、紅の瞳を持つ男が。

「……俺のことを知っているのか?」

「ええ、知っていますよ。喧嘩上等で、成績は優秀な御堂明煌さん」

 俺のことを知っているのは事実みたいだな。学校内でしかわからない内容を迷うことなく答えやがった。更に、まだまだプライベートなことまでペラペラと話し出す男に対して警戒心を剥き出しにする。

「……で、あったりとか、後はそうですね」

「もうお腹一杯だからいいよ」

「えー。あなた程話題に欠けない人はいないのに」

「頼むからやめてくれ……」

 ため息混じりの深呼吸をした後に、俺は男の異常差を警戒する。

 たったそれだけのことと思う人もいるだろうけど、すらすらと他人の情報を吐ける人間には注意をしておくべきだ。

 相手がどんな奴でいたとしても、対応可能な状態を作り出し対処する。それが万全な用意だ。

「まぁ、仕方ないな」

 俺が無理なことを頼んだかの如く、やれやれといった様子で話を進める男。

 そいつの反応に少しイライラしながら、ここがどこであるかを考え始めるようにしていた。

 男以外には何もない世界だったが、彼が何者であるかを理解せなければいけない。彼の服装などを確認してみるが、狼の姿を模倣したかのような紋章が書かれている以外に変な所は何一つとしてない。

 背中の部分に大きく描かれている狼の紋章に何かしらの意味が込められているのであれば、何を意味するのだろうか……。

 自分達以外に存在することのない世界、おそらくそれを創り出したと思われる男、狼の紋章。

(もしかして紋章が意味するのは聖なる獣とかそういう類のものなのか?)

 そして世界を創れる存在となると、創造神とかそんな類の存在になるはずだ。

 ――確か神様の中で、聖獣が狼だという神様がいた気がするな。

「アーレスだったかな」

「……よく、わかったね」

「へっ?」

「正解だよ。僕の名前はアレスだよ」

 男は呆然としている俺の目の前で衝撃の事実を発表する。

 自分があの有名なギリシャ神話に出て来るオリュンポス十二神の一角、アレスであることを認めた。

 思いがけない事実が俺の心を揺さぶり、意味がわからない状況になってしまった。俺がどうして神様とやらに会っているのか、どうして俺が呼び出されたのか意味がわからない。

「マジかよ……」

「ええ、マジですよ」

 信憑性がない話だとは思うが、本人がそう言っている以上、俺はそれを信じるしかない。確認するための材料がないからな。それにその材料が真実だと確定出来る理由もない。

 人によって作られた仮説が俺らにとって真実で、だが、神様からすればその仮説が真実でないかも知れない。つまり、確認不可能となるわけだ。

「まぁ、それは良いけどさ。どうして俺をここへ呼び出したんだ?」

 深海まで届くぐらい大きな溜め息をついた俺は、現実世界から切り離され隔離されている世界に呼ばれた意味を知るために問い掛ける。

 召喚された時点で俺は当事者になったのだ。どういう経由でこういう事態になったのか知る権利はあるはずだ。

「まぁ、大体の予想はついているんだがな」

「ほぅ。真相を話す前にお前の見当を聞いておこうか」

「とりあえず俺が疑問になった点は二つ。一つ目は神様であろうお前が俺の意思を押し潰そうとしていないことだ」

 俺の言葉を聞くために無言ではあったが、顔は「さっさと話せ」と続きを催促していた。

「神様の力を持っているのであれば、俺を雁字搦めにして身動き出来ないようにするんじゃないか?」

「…………」

「そして、二つ目はわざわざこの場を用意して俺を呼び出した理由だ」

 成績は良い方なのに性格がとんでダメな俺よりも、もっと平凡的で運動神経だけは抜群という人物が何人もいたのにも関わらず俺にした理由。本当の理由は俺が考えているやつではないのかも知れない。しかし、俺の頭ではこの程度しか考えられないのも事実。

「……神の力を用いても解決出来ない状況に今のお前はいて、それを解決するために俺がいるんだろ?」

 この場に呼び出したのも対象者に拒否されて、逃げられないようにするため。

 俺の意思を無視して強引に許可させるのじゃなくて、逃げ場を塞いで自主的に許可させる。おそらくこいつが無理強いさせない理由は、それが最も関係しているのだろう。

 この男――アレスを指揮している上の神様の命令に従いつつも、自分の力になってくれる人間を探さなければいけないという感じかな。

「やはり、お前は俺が見込んだ通りの人間だな」

「お褒めに預かり光栄でございますよ。アレス」

「部下の立場に就きたいのか、対等な立場なのかどっちなんだ」

 直属の部下のような尊敬語口調のようでありながら、対等な立場にいる人間の台詞。そんな台詞回しをした俺に対して冷静にツッコミを入れるアレス。

「で、どうなんです?」

「ああ、お前の予想で合ってるよ。俺が思うにお前しか適任がいない仕事を頼みたいんだ」

「仕事?」

「……全知全能の神を決めるために行われる『神々の遊戯』。今までは神だけが関与するお遊びだったんだけどな。今回はそうもいかない事態になったんだ」

 神様の遊戯……。

 全知全能の神といえば、オリュンポス十二神の中の一神『ゼウス』しか思い浮かべることが出来ないのだが。そのゼウスの力を受け継ぐ神様を決める戦いが『神様の遊戯』というので合っているのかな。

「今回の『神々の遊戯』必須の条件が、人間との契約」

「人間との契約?」

「そう、自分達が思うにこの人ならば勝ってくれると思う人間に力を投資し、ゲームに参加してもらう。それが必須条件なのだ」

 要するに俺は軍神アレスの御眼鏡に適ったってことですね。

 こいつと契約すれば自分が勝つことになると思い、自分の力を分け与えても逆襲はされないだろうと考えることが出来たと。

「……一つ、聞いてもいいか?」

「どうぞ」

「お前らは神に成れりゃそれでいいだろうが、協力した人間にも得はあるのか?」

 力を分け与えて契約者の味方となって動くのは解るが、それだけで他には何も仕事しないくせに神に成れるんだ。力となってくれた人間に対して褒美も無けりゃあやる気すらなくなるだろう。

 そうならないために、あるはずなんだ。

 人間達が喉から手が出る程、望ましく感じる人間が目指すに値する景品が。


「我が神となった暁には、お前の願いを一つだけ叶えてやろう」

「どんな願いでも?」

「ああ、約束しよう」

 一分も迷うことなく発した言葉。俺の目を正面から睨み付けるかのようにずっと見つめてくる彼を疑うことが出来るだろうか。

 少なくとも俺には出来ないな……。

「いいぜ、やってやるよ」

「そうか……。助かる」

「その代わり、俺が望む力を寄越せよ。お前を神にしてやるから」

 ゲームに参加すると決断した俺を見て笑顔を浮かべるアレスの前で、参加するために必要な力の詳細を話す。

 神様から力を貰えるのであれば、この力だって貰うことが出来るはずだ。

 今、ここで悪魔の取り引きが行われた。

 片方が差し出したのは、自らの命。もう片方が差し出したのは、圧倒的な力。


 神同士の戦いは大地を揺らし、世界を滅ぼす何も生み出さない無益な戦闘――。

 果たして、契約者同士の戦いは何を滅ぼし、何を生み出すのか。



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