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ONE CHANCE

作者: ザ・中村

2017年 12月 都内某所


名取啓介様と書かれた封筒を開ける。これで、めでたく50社目である。いや、まったくめでたくない…むしろヤバイんだが。封筒の中にはかれこれ49回は見たであろう紙が入っていた。毎回同じ内容だったが今度こそ…。「残念」「不採用」「お祈り」恐らくは就活している人間の大半を殲滅できる呪文が、並んでいた。

「終わった…」

こんな年末に社員募集している会社なんてあるわけない。そもそも50社も受けて全て落ちるなんてありえるのだろうか。ニュースやネットを見ればそういう人間がいることは知っていたが、自分は違うと思っていたのに…。大学生時代はサークルにも入らず楽な授業だけをとり、クラスの所謂イケてないグループの人間とだけ交流し生活してきた。女の子と会話した記憶なんて大学1年の春だけだし。人に自慢できることといったら容姿がふつうなところである………………………笑えない。そもそも、何に対してもやる気がない人間であった。中、高と帰宅部として活躍し勉強もテスト前集中型であった。大学だってそんな感じでギリギリで所謂、中学歴なとこに合格を決めた。趣味は広く浅くを基本としていて、趣味を仕事にするんだというようなモチベーションなどあるはずもなかった。青春のおおよそ90パーセントを支配するであろう恋愛というものにはそれなりに興味があった…嘘だ。大いにあった。そもそも私はロマンチストなのだ。22歳になった今でも小説や少女マンガにありがちな運命の出会い的なものを期待してしまっている。それから恋して結婚して子供が生まれて幸せになれると信じていたのだ。将来は仕事と家庭を両立してみせるとか心のどこかで思っていたものであった。就活をする前までは…。面接をしてみれば話すことが得意ではない、むしろ口ベタであるのに加えて自己PRできるところなくね?と気づいた時には49回の不採用をもらっていた。今まで内定を取れなかったつまり無い内定どもが集まった50社目すら落ちるとは…。周りのDQNどもはコネと会話テクを使い早々に内定をもらい、彼女も居やがる。悔しくはない…ホントに。勇気を出して後ろ指を差されてでも大学デビューすればよかったのだろうか。そんなどうしようもない後悔があったりなかったり、ラジバ○ダリー!!……つまらない。死にたい。気分を変えるために外に出ることにした。今日もオリオン座が綺麗だとか数少ない知ってる星座を心の中で褒めているとメールがきた。送り主はイケてないクラスメイトの中でも1番仲がいいと勝手に思っている生天目だった。なまためと読む。顔はそこそこイケメンだが、髪型にまったく気を使わず寝癖と少し油っぽい髪質のせいでまったくモテない、つまり高級食材の無駄遣い、残飯化である。奴は狭く深い趣味を持っている。世間でいうところのオタクである。なんでもギャルゲーが好きすぎるらしい。気持ち悪い。今はこんなにかわいい子ばかりがいる学校があるか!!と言いたくなる高校を舞台とした学園ものにはまったらしい。本当に気持ち悪い。そんなものやっても青春は帰ってくるか馬鹿が!!とか思ったが自らのテンションまで下げかねない。止めとく。話を戻す。メールの内容はと……


件名 内定もらった!!


内定もらった!!(*´∇`*)


ついでに彼女できたわーwww


まったく笑えなかった。件名と本文が被っとるやんけー!!とかツッコミすら入れることが出来なかった。ついでって………。


私は駆け出した。なぜか前は見えなかった 。 なんかしょっぱいし……


瞬間、身体に強烈な衝撃が走った。

私が最後に見たのは、ぼやけた赤い信号であった………。

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