第七話
「ふうぅぅ、もう食えねぇ」
おれは、本日12体目のシルバーウルフを喰い終わった。
初めてシルバーウルフを喰ってから十日がたった。こいつらは大抵複数で行動しているので稼げる。おかげでかなりの魔力を稼いだ。
1628/unknown
…今日もたくさん喰ったしそろそろ帰るか。帰ってやりたいこともあるしな。ぐふふふ。
危ない笑いを浮かべながら俺は拠点に向かって歩き始める。瞬間、強烈な殺気を感じる。慌てて俺は振り返りあたりを見渡す。
(何かいる)
全く気付けなかった。足音も気配も。殺気を飛ばされてからようやくその存在に気が付いた。いや、気付かせたのか。
(まずい、今までの奴とは全く違う。クマか?)
尋常ではない殺気、存在感。クマではないかと疑う。
俺は唾を飲み込み剣を抜き中段に構える。
(…動体視力強化、発動。 気配察知強化、発動。 脚力強化、発動)
1338/unknown
思いつく限りの強化魔法を付加する。動いていないの汗が出る。どうやらかなり緊張しているようだ。
気配察知強化によって敵の位置を把握する。…およそ8メートル。ここまで接近されていたのに気付けないなんて……化け物か?いや、化け物だったな…
俺は忘れていた。こいつらは化け物であることを。油断し過ぎていたな…剣を握る手が震える。
敵はゆっくりとだが確実に近づいている。どうやら不意打ちをする気はないらしい。
……
ドザッ、ザッ
そしてついにその姿を現す。
(デカイ…)
見た目は狼だ。だが大きさが異常だ。体長5メートルはある。シルバーウルフに似ているが、比べ物にならない。なんだこいつは。正直今すぐに逃げ出したいが、逃げ切る自信がない。
シルバーウルフのようなくすんだ銀色ではなく白銀。一切の汚れはない。シルバーではなくプラチナとでもいうべきか。プラチナウルフの後ろにはシルバーウルフが十体もいる。
(どうやらプラチナウルフはシルバーウルフを率いている長のようだ…)
同胞を殺されまくって怒っているようだ。
しかし、見れば見るほど大きい。爪も牙もかすっただけでも危ない。
シルバーウルフは戦いに参加しないのか、近づいて来ない。
プラチナウルフとの距離は三メートル。油断をしてはいけない…魔法で強化しているが勝てるかわからない。
動かない。奴は俺を睨むだけで動かない。段々不安になってくる。
(くそッ、やるしかないか…縮地!)
俺は縮地を発動し、奴の左側面に移動し剣を右から左へ薙ぐ。しかし
(グワァ、かてぇ、なんだよこいつ!)
剣は白銀の毛を少し斬ることしかできなかった。弾かれ無防備になっている俺目掛けて奴は左前脚を振るう。
(やべぇ、縮地!)
ブオォン
縮地でなんとか躱すが、まずい。ますます勝てる気がしなくなってきた。
奴は俺の方を向く、次の瞬間奴の姿が消える。
「なっ!ぐわぁぁぁぁ」
驚く暇もなく奴の突進をくらって俺は吹き飛び背中から木に当たる。
(ウソだろ、動体視力も強化したのに…)
痛むが動けないほどではない。どうやら俺を弄り殺すようだ。だが俺も素直に殺されるわけにはいかない。
剣を上段に構える。
(飛焔・双牙!)
剣を振り下ろしすかさず振り上げる。太刀筋に沿って炎は飛ぶ。
当たることを確認せずすかさず縮地で移動し、願う
(属性は雷。形状は槍。速さを…願う)
右手に一メートルほどの雷の槍が出現する。
「あたれぇぇぇ」
雷槍を奴に向かって投げる。
奴は飛焔を横に躱そうとするが側面から雷槍が来ているため横に躱せない。一瞬奴の動きが止まる。だが一瞬あれば十分だった。飛焔より先に雷槍が突き刺さる。
グウ”ゥオォォォォン
雷槍で怯んでいる隙に飛焔・双牙が炸裂する。爆発音が二回。これで死ぬとは思わない。俺はさらに願う。
(属性は雷。剣に付加。切れ味を強化。鋭さを…願う)
「雷剣!」
剣が青白い雷が纏われる。
「縮地!」
飛焔でさらに怯んでいる奴に接近し剣を上段に構える。
(属性は雷。剣に付加。威力を…願う)
雷剣にさらに魔法を付加する。
「雷剣・剛!」
踏み込み思い切り剣を振り下ろす。
「くらえぇぇぇぇぇ!」
刀身が奴の躰を斬っていく。バチチチチチチという音が響きと雷光が迸る。
「うおぉぉぉぉあぁぁぁ」
そして、完全に振り下ろし切る。周辺は焦げている。
そして奴は倒れる。なんとか勝った。全身の力が抜け倒れそうになる。俺は剣を地面に突き立ててなんとか耐える。長が殺され騒いでいるシルバーウルフどもは睨んだだけで逃げて行った。
「ッはぁ、はぁ、ッはぁ、っや、やった。勝った」
強かった。なんとか勝てたが、できれば二度と戦いたくない奴だ。
勝ったはいいが、かなり魔力を消費してしまった。途中からは消費量無視していた。
633/unkonwn
「うわぁ、半分ぐらい使っちまったよ。こいつを喰えば何とかなるか」
2371/4835
俺は疲れていたが空腹で正気を失う前に腹を満たすことにした。
……喰い終わった後は即行で拠点に帰り久々に死んだように眠りを貪った。
3004/nuknown