第五話
翌朝。死んだように眠っていた俺は小鳥のさえずり…ではなく、ケェェェェ、ケェェェェという怪鳥の奇声で目を覚ました。
「最悪の目覚めだな…」
そう呟いてから体を起こす。フカフカのベッドで寝たいがここにはそんな贅沢なものはない。
「ふぅぅ」
一息ついてから俺は気持ちを切り替えるために外に出て顔を洗いに行くことにした。
顔を洗った俺はさっそく朝飯を摂るために獲物を探しに行く。ホーンラビットは弱いので狙い目だ。味は薄いが。
カサッ
奴を探していると結構遠くの方から物音が聞こえた。
(どういうことだ?)
俺の耳はそんなによくないのだ。聞こえるはずがない。不思議に思うが今は朝飯が最優先だ。音がした方に向き剣を構える。
タッ、タッ
どうやら奴はこちらに向かって走っているようだ。
タッ、タッ、ダッ
(いまだ!)
姿は見えなかったが俺は迷うことなく剣を上から思い切り振り下ろす。振り下ろしている剣にホーンラビットは突っ込んでいく。
グチュ、という鈍い音とともにホーンラビットは地面に叩きつけられる。角はへし折れ首は不自然な曲がり方をしていた。
「ふぅ、朝飯ゲット!」
剣を鞘に納め、廃屋へ戻る。
廃屋の前にホーンラビットを投げる。昨日は生で食ったが今日は焼いて食おうと思う。俺は急いで木の枝を集めて魔法で火をつけようとする。
だが、火をつける前に考える。使える魔法は『火』だけなのか?と。強く願えば叶いそうな気はするのだが、チカラの無駄遣いは避けたい。どうしたものかと考えていると、ある魔法を思いつく。
それは自分、相手のチカラ、魔力の量を視る魔法だ。この魔法が成功すれば『火』以外の魔法が使えることになる。さらに自分の魔力量が正確にわかるようになれば魔力の無駄遣いの心配がなくなる。
俺はさっそく魔法のイメージに取り掛かる。魔力量は、ゲームを参考に数値で表示させよう。表示させる場所は、視界の左端だな。魔法の種類は、無属性のエンチャント系でいいか。あまり機能付け過ぎると魔力消費が心配だ。とりあえずはこんなもんでいいだろう。
俺は目をつむり強く願う。体の中のチカラが抜けていき眼が熱くなる。だがそれも一瞬のことですぐに収まる。
目を開けると…あった。視界の左端に表示されている。
72/unknown
やべぇ、俺の魔力に限界はないらしい。その割には保有している魔力量がたったの72しかない。
ホーンラビットの方はどうなんだ?
12/54
少ないな…ん
10/54
減っている。どうやら魔力は死ぬと結構な速度で減っていくらしい。
魔力がなくなるとどうなるのだろう? 気になるが今は腹が減っているので急いで食うしかない。
魔力がなくなるとどうなるかわからないので結局生で食った。
82/unknown
(お、10増えている)
どうやら魔力を持った奴を喰うと自分の魔力が増えるらしい。しかし82かぁ。
この魔力で一体どこまで魔法が使えるのか。炎を出すだけで50とか使ウとしたら一体どれだけの獲物を喰えばいいのだろう。
気になるのだが今使うわけにはいかない。使うとしてもすぐに回復できるようにいくつか獲物を確保しておくべきだ。
そう決めた俺は急いで獲物を確保しに森へ走って行った。
ホーンラビットは探せば案外楽に見つかった。狩ったそばからすぐに喰らい魔力を増やす。魔力量は若干個体差があるらしい。54よりも少ないやつもいれば70近いやつがいた。しかし殺すと一気に半分ほど減ってしまうようだ。仕方なく俺は奴らの角を折って弱らせて生け捕りにすることにした。
日が暮れるころにはストック5、食った数は7になった。おかげで魔力は結構増えた。
207/unknown
7体で125上昇した少ないのか多いのかいまいちわからない。ストックしている奴らは
22/49 19/44 26/54 23/49 30/67
これだけいれば簡単な魔法二つ、三つぐらいは大丈夫だろう。
とりあえず拠点に戻り集めた木の枝に火をつける。
イメージすれば口から出なくても炎は出るようなので右の手のひらから火球を飛ばすイメージをする。
集めた木の枝に右手を伸ばし集中する。そして火球が右の手のひらから木の枝に向かって飛んでいくこと願う。
ッボォウ
手のひらが熱いと感じたのは一瞬。10センチほどの火球はまっすぐ飛んでいき木の枝に当たり燃えだす。どうやら成功したようだ。
魔力が火球に変換され体の中から抜けていく。慣れていないので体の力が抜け膝をついてしまう。
(これは慣れるしかないな…魔力はどのくらい消費した?)
視界の左下を視ると
117/unknown
どうやらあれだけで90も消費したらしい。
「くっ」
まずい、腹が減った。俺は急いでストックしていたホーンラビットを喰う。
急いですべてのホーンラビットを喰って魔力を回復し、空腹を満たす。
237/unknown
「ふぅー、この空腹感も慣れていかないとまずいな」
でなければろくに魔法を使うことができない。しばらくはこれを繰り返した方がいいのかもしれないな。
最後の魔法を実行すべく俺は剣を抜き地面に置く。刀身は錆びているため焚火の光を全く反射していない。俺はこの剣の錆びや血のりを除去する魔法をイメージする。漠然とか焚火の光を反射する。美しい金属光沢をイメージする。
両方の手のひらを剣に重ね集中する。
(輝く、鋭い刃……)
手のひらからは優しい光が漏れる。光が晴れるとそこには汚れひとつない、焚火の光を反射する美しい剣があった。刃こぼれまでなくなっている。
「あー、『鋭い刃』ってイメージしたからか」
刃こぼれがなくなったのは予想外だったがうまくいったのでよかった。
207/unknown
(おっ、30しか消費していない。)
思いのほか魔力を消費していないことに喜んだ。
ついでに鞘の方にも除去魔法をかけ新品のようにきれいにする。
177/unknown
(除去魔法使えるな……)
剣がきれいになったことで上機嫌になった俺は焚火の火を消して。眠りにつくことにした。
(明日からは当分の間は、魔力量の上昇と魔法を使うことに慣れるようにしていくか)
新たな目標を胸に俺は目を閉じる。そうして眠りに落ちた。