第十七話
すいません、かなり遅くなりました。今回は説明回になっています。
設定って重要ですね……
みなさん聞いてください。なんと!!最近!!うちのかわいいティアが俺に朝の挨拶をしてくれるようになりました!!……最初のあれがなければもっと早かったんだろうなぁ、なんて思いますがやっていしまった物は仕方がないんです。
今日も小さな声で「ぉ…おはよぅ…ござぃます…」だなんt、ぐはぁ!!思い出すだけで興奮してきたぁぁぁ!!
「はぁ、はぁ…ティアちゃんかわいぃぃぃ!!」
本人はここにはいない。いたら困る。コツコツと積み上げてきた信頼関係が一瞬で砕ける。
俺は今、森の奥で狩をしているところだ。当然、俺のデカイ声を聴きつけてモンスターどもが集まり始める。
「…俺のささやかな幸せを邪魔すんじゃねぇぇ!!」
…纏う霧がいつもより濃かったのは気のせいだろう。
襲ってきたモンスターどもを返り討ちにし手早く捕食し終えた後は集中して森の奥を進んでいく。
もう興奮はしていない。今の俺はとても冷静だ。
「それにしてもこの森は広いなぁ。俺ここから出られるのかなぁ……」
今すぐ出たいという訳ではないが、こうも広いと出られるのか心配になってくる。よし今度ティアに聞いてみよう。
そんなことを考えていると開けた所が見えてきた。慎重に近づきあたりを見回すと洞窟の穴とモンスターを見つける。
一体だけではない。二桁以上の数だ。魔力の保有量を確認すると大体500~600。単体では弱そうだが、数が多い。棍棒や弓、魔力が1000を超える個体など今まで遭遇してきたモンスターとは違い、多少の知能を持っているようだ。
体長は120センチ、人型。頭がデカく目つきが鋭いというかギラギラしている。なんか獲物を発見したら全員で襲いかかってきそうだ。
俺は場所を記憶して音を立てずに引き返していく。今の俺にはまだ早い。ここはあとでまた来よう。
拠点に戻っている途中、地面に魔力を感じて立ち止まる。紅い小さな石から魔力を感知してたようだ。紅い小石を手に取るとほのかに温かみを感じた。
「う~ん、これはなんだ?そこら辺の石とは違って魔力を感じるんだが…持ち帰ってティアに聞いてみよう」
大分ティアと仲良くなってきたし、そろそろいろんなことを聞いてみることにしよう。
拠点に戻りティアが食事の準備をしている間に風呂に入る。最近ティアも風呂に入るようになった。エルフには風呂に入る習慣が無い様で最初はあまり入りたがらなかった。しかし俺の熱心な説得の末、しぶしぶ風呂に入ったティアは瞬く間に風呂の魅力にとらわれた。
風呂のあとティアとの楽しい食事を終え、一息ついたところでティアにお願いをする。
「ティア、お願いがあるんだ」
するとティアは顔を青くし「ぃ、痛いのは…嫌なので、一瞬で…ぉ、お願いします…」そう言い目を閉じる。
……はぁ?
意味が分からない。ティアは何をそんなに怯えているのだろうか。痛い?一瞬?何のことだ?
「……ティア、言っていることの意味が分からない。俺はただ聞きたいことがあるだけだ」
心底わからないという声でそう言うとティアは顔をあげる。
「わ、私を殺さないのですか?」
……ん?
「殺す?なんで俺が?」
首を傾げて聞く。
「だ、だって、ぁ、あなたはモンスターなのでしょ?」
……あぁ、なるほどそういうことか。謎が解けた。そうだ俺ってモンスターだった。忘れていたよ。
「ティア。俺は君を殺すつもりはないよ。君をここに連れてきたのは話をしたかったからなんだ」
「で、でもッ最初殺されそうだった…」
やっぱりあれはまずかったなぁ。次は…次があるのかわからないが気をつけよう。
「違うんだティア。あれは…そう急にカッとなってしまってというか感情が抑えられなくなったというか本来は傷を負わせるつもりは全くなくて…」
慌てて弁解する俺にティアはクスッと小さく笑った。
「あの、落ち着いてください。……どうして私を殺さないのですか?」
「えっ、美味しそうに見えないから」
「…えっと、どういうことですか?」
「う~ん、俺いつも腹減ってさモンスターを見ると殺戮衝動とか食欲とかが抑えられなくなるんだよ。ティアの魔力保有量は確かに魅力的だ。だけど殺戮衝動も食欲も湧かない。それにさっきも言ったけどおれはティアに聞きたいことがあるから連れてきたんだよ」
ティアは驚いた顔で俺を見る。
「あなたはモンスターではないのですか?あなたのような人型のモンスターなんて聞いたことがありません…」
「モンスターにも色々あるんだよ」
たぶん
「そう…ですか。モンスターって大変なんですね」
「まぁ、俺のことはいいだろう。ティア、召喚魔法について何か知らないか?」
「召喚…勇者召喚魔法のことですか?」
勇者召喚ねぇ…
「ほかに召喚魔法がないのならたぶんそれだ。詳しく聞かせてくれ」
ようやく聞きたいことが聞ける。一文字たりとも聞き流したりはしない。
「人間たちの魔法なので詳しくは知りませんよ?…確かファルム王国という人間の国が魔王に対抗するために開発した魔法です」
なるほど、潰す対象は晃とファルム王国か…
「魔王とはなんだ?」
「モンスターなのに魔王を知らないのですか?」
「…生まれたてなんだよ、俺」
間違ってはいないはずだ。
「そうだったのですか……魔王というのはモンスターに対し絶大なカリスマ性を発揮する存在です。本来群れるはずのないモンスター達を従え、使役する力を持っています。魔王自身の戦闘力もまた強力です」
「魔王は勇者にしか倒せないのか?」
「はい。魔王の根源属性は強力な闇。闇に対抗するためには勇者の強力な光が必要なのですよ」
「ふーん…根源属性ってのは?」
「根源属性とは扱うことのできる属性のことです。基本的に火、水、土、風、光、闇の六属性になります。異なる属性を混ぜ合わせることもできるんですよ。根源属性は誰にでも一つはあります。私は風と水の二つ根源属性があります」
根源属性ね…俺は基本は闇で、願えば他のも使えそうだな。まぁ、光を使うのはなんかヤバそうだな。
「魔法にはどんなものがあるの?」
「私たちエルフは精霊魔法、人間は…よくわかりませんが色々な種類があるそうですよ」
「ありがとうティア、いろいろ参考になったよ。最後に一ついいかな?」
「?なんですか?」
「ティアはどうして一人で森にいたの?」
ティアの魔力量は確かに多いし精霊魔法とやらもきっと強力なのだろうが、この森で一人で出歩くのは自殺行為だ。
「……言わなきゃ、だめ?」
うっ、涙目なんて卑怯すぎるぞ、ティア。
「……当然だ、あそこで何をしていたんだ」
「じ、実は私、外の世界に出てみたくて……里から」
「黙って出てきたのか?」
コクリ、と小さくティアは頷いた。ふむ…
「よし、それじゃあティア、俺が……」
「外の世界に連れて行ってくれるの!!」
「あほか。お前をエルフのとこに連れ帰すに決まっているだろ」
ティアをここに連れてきてから一月は経っている…気がする。きっと両親は心配しているのだろう。
「いやだ!!私は帰らない!!」
「……帰れるとこがあって、待ってくれている人がいるんだ。……我が儘言わないで帰るんだ」
「!!……でも……わかったよぅ」
ようやくティアも分かってくれたようだ。
「よし、そうと決まれば明日にでも行くか。ティア、エルフの里はどこにあるんだ?」
そう聞くとティアは俯いて小さい声で呟く。
「……ん……ぃ」
「ん?なんだって?」
「わかんない」
……え?