第十二話
しばらく和馬君はお休みです。今回からは晃君ルートに入ります。
「…ここはどこだ?」
僕、神崎晃は冷たい大理石のような石の床に座りながらつぶやいた。さっきまで和馬と下校していたはず…そうだ家まであと少しの所でよくわからない裂け目に吸い込まれたんだ。
キョロキョロとあたりを見渡し親友の姿を探すがそこにいるのは親友ではなく白いローブのようなものを着た人たちや重そうな鎧を全身に身に纏う騎士たち。正直まともな人には見えない。
「ようこそいらっしゃいました、勇者様」
そう言いながら僕の目の前に彼女はやってきた。純白のローブを身に纏い、肌の色は雪のように白く、淡く輝く金色の髪は腰に届くくらい長い。年齢は16ぐらいかな。背丈は下から見上げた感じでは大体160センチくらい。うん、簡単にいうと美少女。
一体誰が和馬だろう?
和馬は美少女ではないし、ローブも全身に鎧を着たりもしない。
和馬も重要だが、それよりも
「…勇者?ええと、誰がですか?」
とりあえず僕は、立ち上がりながら、彼女の目を見ながら質問する。
彼女は頬を朱に染めながら答えてくれた。
「あ、えっと…あなたのことです、勇者様」
どうやら僕のことだったらしい。…予想はしていたが。
「勇者様…ね。僕の名前は神崎晃。できれば名前で呼んでほしいな、えっと…」
すかさず彼女は
「申し遅れました。私はファルム国の王女、シルファ・ファルムです」
ファルム国?聞いたことはないな…。シルファ…見た目も名前も日本人ではないようだ。僕は深呼吸をして再び質問をする。
「シルファさん、ここはどこですか?」
「ここは『召喚の神殿』です。私が勇…晃様を召喚したのです」
ファルム国ってどこ?って聞いた方がよかったかな?それにしても『召喚の神殿』?僕を召喚…シルファが?
「僕を召喚したのはどうしてなのシルファさん?」
優しく問うとシルファさんは真面目な声で答えた。
「晃様を召喚した理由は、魔王を倒していただきこの国を、世界を救ってもらうためです」
僕はしばらく呆然としてしまった。
(魔王…倒す、僕が?)
呆然としているとシルファさんは慌てて付け足した。
「も、もちろん晃様一人でではございません。私やこの国一強い騎士もご一緒です。…それに」
「それに?」
「召喚したのは晃様一人ではございません。もう一人、私は召喚しました」
それを聞いた僕はすぐに和馬のことを思い浮かべ
「あのシルファさん、それって…」
言いかけた僕はシルファさんが、周りの人たちが僕を見ていないことに気付いた。
(一体何が…)
僕はシルファさんの見ている方を見た。そこには青白く輝く複雑な文字や図形が描かれた魔法陣が出現していた。
「す、すごい…」
僕は青白く輝く魔法陣を見て驚く。
(綺麗だ…)
魔法陣の輝きはどんどん強くなっていき、視界が真っ白に染まっていく。
強い輝きの中、シルファさんの声が響いた。
「…私が召喚したのは勇者様ともう一人」
輝きが次第に弱まっていく。輝きが治まりそこにいた人物を見て僕は驚く。
「…聖女様です」
そこにいたのは
「あ…れ?ここは、どこ?」
和馬ではなく妹の咲美ちゃんだった。