プロローグ
初めまして。秀一です。この作品は作者の暇つぶしで書いています。わからない表現や誤字脱字があります。温かい目で見守ってもらえるとうれしいです。
学校の帰り道。
俺、佐藤和馬は親友の神崎晃と当然のように、当たり前に、15年間そうしてきたように、自分たちの日常に暮らしていた。
高校一年の四月末。入学してから少し経った今日、俺、ではなく親友の晃は今
「好きです!私と付き合ってください!」
同じ一年の女子から告白をされていた。
これで入学してから5人目の告白だ。そう、晃、はモテる。美形で優しく誰に対しても明るく平等に接する。入学してから少ししか経っていないのに晃の人気はうなぎ登りで、天井知らずだ。
対して俺は、自分では普通よりはカッコイイのではないかと思ってる。しかし、晃の隣にいると霞む。当然だろう。
晃は月に何人もの女子から告白をされている。しかし晃は告白されても一度も了承していない。昔、理由を聞いてみたところ晃曰く
「恋はさ、かっこいいとか可愛いじゃなくてもっとこう、最初は友達から、みたいな感じじゃないのか?」
と言われた。モゲロ。
可愛い子が告白しても全く了承いないことから、一時期、晃は和馬と付き合っているのでは?という噂が流れた。もちろん俺が晃を男色に仕立てあげたことになっており、おかげで俺は男子に避けられ、女子からはライバル視されるという迷惑な事件が起きた。わかってはいるだろうが俺はノーマルだ。
そんな中、一番ショックだったのは、好きな子に誤解されたということだ。告白しようと放課後に屋上に呼んだ。ドキドキした。初恋でどうしても気持ちが抑えられなかったのだ。一週間かけて決心し、二週間かけてセリフを考えた。さらに一週間かけて練習をしたのだ。
放課後の屋上は俺と彼女以外誰もいない。時は夕暮れ、朱色のやわらかい光が俺たちを包みこむ甘酸っぱい光景。誰の目から見ても俺が彼女に対して告白をするのだろうと微笑みエールを送りたくなるだろう。五月蠅すぎる心臓の鼓動を気力で押さえつけ大きく深呼吸を一つ。俺も彼女も顔が目が、真剣だった。いざ告白しようとしたら、彼女の口が開かれ告白
「晃君は渡さないから」
いや、まさかのライバル宣言。唖然としている中その子は晃の素晴らしさや晃のどこが好きなのか、晃のことをどれだけ好きなのかなどを一時間ほどしゃべってから最後に
「絶対に負けないからね」
と言い残して帰って行った。
もちろん俺は落ち込んだ。絶望と言ってもいいだろう。頭の中は空虚になり何も考えられなかった。そんな俺を晃は「何があったんだ?」と俺を励まそうとし、俺は女子に睨まれさらに落ち込むという負の連鎖。男子は比較的優しかった。
今ではほとんどの人の誤解は解けた。一部ではいまだに信じている奴がいる。当然あの子は今も信じている。なんでやねん……。
おっと、昔のことを思い出していたら、女子の告白を断った晃がこちらに向かって歩いてくる。晃の後ろでは女子が俺のほうを涙目で睨む。俺は何もしていないのに……。むしろ俺の方が泣きそうだった。
その後はいつものように晃と駄弁りながら歩く。始まったばかりの高校生活のこと、新しい授業、担任、クラスメイトのこと。晃とは家が隣同士なので途中で別れるということはない。
晃とは昔から一緒にいたので俺は晃と比較されるこが多かった。かけっこでも勉強でも何をしても晃には勝てなかった。何かあるたび周りからは「晃君を見習いなさい」と言われた。
そのたびに晃は「気にすることはない」と俺に言ってくれた。だけどどんなに努力をしても晃には勝てなかった。好きな人ができてもみんな晃に持っていかれる。告白しようとすればライバル宣言されてしまいかなわなかった。
晃は親友だ。俺はそう思っている。だけど晃はどう思っているのだろう。…親友と思ってくれているのだろうか。自分の引き立てて役だと思っているのだろうか。
晃は親友だ。俺は…本当にそう思っているのだろうか?励ましてくれた晃の目は……
「うっ、うわぁぁぁぁ!!」
突然晃が悲鳴を上げる。晃の悲鳴は誰もいない住宅街に響いた。俺は思考を切り上げ晃の方を見る。
どうやら左腕を誰かに引っ張られているようだ。
一体誰が?脳裏に浮かぶのは黒い服を着て、マスクとサングラスで顔を隠した男の姿。
だが予想に反して晃の後ろには誰もいなかった。誰もいなかったがそこには黒い何か、いや空間の裂け目のようなものが存在し、まるでブラックホールのごとく晃を引っ張っているようだ。
「か、和馬助けてくれぇ!!」
晃はそう叫んで俺の左手を掴んでくる。
「ちょっ!!!」
俺は仕方なく晃を引っ張るが、引き戻せない。それどころか裂け目に引っ張られていく。
「おおぉ!!んだよこりゃぁよおおぉぉ!!」
何とか耐えようとするがすぐに限界はやってきた。例えムキムキのマッチョであっても無理だっただろう。前方から男の人が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
「「うあわああぁぁぁぁぁぁぁ」」
二人の悲鳴は途切れ裂け目とともに姿を消した。
それは、家までわずか三分の距離。