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第一話『おのれ浪漫め!』

 目を覚ませば中世風の世界が広がっていた。所謂異世界転生という物である。今の時点で何からも干渉を受けていない時点で望みは薄いが、何等かの特別な能力を期待してしまう。


 特になかった。異世界転生しても才能はあまりないらしい。


 にしても汚い町である。馬糞やらゴミやらで兎に角汚い。加えてホームレスと孤児で溢れ返っている。そういう自分もその一員であるが。


 多分5歳児くらいだと思われる体に俺の意識は住んでいる。しかし、孤児という点で精神年齢と身体年齢の乖離は確実にあると思われる。親が居ないため確認のしようがない。答え合わせのできないクイズ程面白くないものはない。


「あの、日本語とかって喋られますかね?」


「a nah cuTsea cuT tray ?」


「無理ですよね。えぇはい。でしたら、、 Could you speak English?」


「desea youtoeca ?」


「うーんマジか。こりゃあ無理だな。すいません、ありがとうございました。ではまた」


 自動翻訳の様なご都合主義はないらしい。この世界は転生者に不寛容である。


 何か怪しげな人がこちらを見てきてる。猫が獲物を見る様な目だ。少しばかり怖い。にしても魔女みたいな見た目だ。魔女帽子に黒色のローブ。ハロウィンでもそんな在り来たりなコスプレせんぞ。いや、実際魔女の可能性もあるのか。異世界だし。


「ねぇ君」


「は?」


「まぁ仕方ない事なんだけどさ、その反応はなくない?傷つくよ?」


「え、あ、、あなたも転生者なんですかね?」


「これはね、翻訳魔法です!珍しいんだよ?」


「あ、成る程。出来ればそれ教えてください。言語習得は疲れすぎるんですよね」


魔女っぽい人はしゃがんだ。女性に背丈を合わせてもらうのは少し屈辱的である。早く歳をとらねば。


「うーん。多分魔法の習得の方が大変だと思うよ。他の事に使えるとしたって、才能が無ければ中途半端に時間を使う事になるかもよ?」


それは困る。人はいつ死ぬか分からない。


「それでも学びたいです。お願いします。」


トライリンガルも良いが魔法の方がカッコいいに決まっている。浪漫には勝てん。


「魔法に浪漫か、分からないなぁ。まぁ構わないよ。助手はいつでも歓迎してるんだ。その代わりと言ってはなんだけどさ、君について教えて欲しいな」


「分かりました。まず、名前は『隗」隱ュ荳榊庄』だ、、ん?『隗」隱ュ荳榊庄』、、、え?『隗」隱ュ荳榊庄』なんらこれ?」


あたまいたい。あ、、、おちる。


「うーん。マナが急激無くなったね。どういう事なんだろう?」




頭がズキズキする。何か体中から減っている気もする。


「お、起きたね。まず君は約半日寝ていました!子供だから仕方ないけど私を待たせすぎだよ?」


「ごめんなさい?」


「よろしい。それで、君が倒れた原因解明の為に質問してもいい?んじゃいくね。君はさ、なんでそんな窮屈そうな体にいるのかな?趣味?」


「断じて違います。元の世界で死んで、気づいたらこの体だったんですよ」


「さっきから思ってんだけど、君って別の世界からきたんだね?」


「あ、はい。日本語で会話できるんで転生した事を忘れてました」


「成る程ねぇ。多分ね、君のその体と人格、マナが間違ってるのが原因だね」


成る程これは剣と魔法の世界である。マナとはまたワクワクしてくる単語ではないか。


「マナですか。つまり、マナには個人の認証機能があって、それに人格が引っかかってるわけですね。」


「飲み込みが早いね。そういう事だ。結論治せない。諦めてくれ」


「ですが普段は問題なさそうですよ?名前を発する時しか認証しないならポンコツすぎますよ?」


「そう。そこねぇ。予想でしか無いんだけど、名前を発する時は自己を認識するじゃない?例えば、嘘で自分を偽る時も、自分が誰か覚えて、それを忘れないようにするでしょ?その強い自己認識が一定のレベルに達する事で認証機能に見つけられてるのかも」


とてもそれっぽい。実際これが正解なのだろう。


「まぁ良いですよ。ただ名無しってのは便利ではないですね」


「じゃあ、今から君は『タマ』だ!!よろしく『タマ』!」


俺は猫か何かか?まぁいいか。


「よろしくお願いします。あなたの事はなんと呼べばいいですか?」


「私の事は『ラステル』と呼んでくれたまえ。まぁ師匠とかでも良いよ」

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