Tier S 上位【劉子業・侯景・石虎】
【企画全ページ共通エクスキューズ】
この企画にて紹介される人物たちの事績において重要なのは「史書にこのように書かれている」=「史書がこのように書く必要があった、と評価していた」です。「その人物が実際にそうであった」と言うことではないと、割と強めにご認識下さい。
つまりキャラクターとして消費するのはアリ、と言うか大切な入り口だと思うんですが「史学的な人物評価に直結させてしまうとあぶないよ」とは書いておきます。
皆さんの気持ちを代弁しますね。
劉子業 is 誰
では参りましょう。
なお、見出しは
名前(生年-即位年-没年 時代・国諡号)
とあらわします。
○6位 劉子業(449-464-466 南北朝中期・劉宋前廃帝)
南朝宋を混乱させ、乱倫や残忍な行為。常識外れの凶行。(DeepSeek)
叔父たちを裸で犬小屋に入れる、近親者への性的暴行、無差別殺戮。中国史上屈指の狂気。在位1年で宋朝の威信を徹底的に破壊。(Claude)
近親への性暴力・見世物処刑など、「南朝クソ君主といえば」の代表格。(ChatGPT)
姉との近親相姦、叔父を「猪王」と呼び檻に入れる、直属軍による殺戮。前廃帝の名は伊達ではない。(Gemini)
南朝宋前廃帝。近親相姦・叔父殺し・異常性癖。短命で国家乱れ。(Grok)
近親乱行・残虐趣味で悪名高い「狂気型」。(Copilot)
偏差順位39:まぁまぁ一致
南朝の黒き三連星の先鋒にしてもっとも意味がわからないひと。いやあの、中堅の後廃帝劉昱、大将の東昏侯蕭宝巻にはまだ悪魔化の余地があったんですけど、このひとどうすればいいの……?
すみません初っ端から混乱しました。劉宋の四代目皇帝(元凶劉劭は皇帝として通常カウントされない)、早世した父の跡を受けて即位してすぐにトチ狂った真似で盛大に国の威信をベコベコとし、挙句の果てに散々虐待した末に殺そうとした叔父に殺し返されるこの人については、なんでこんな高順位なのか、果たしてこの所業を悪魔化とみなしていいのか、そしてそもそもなんでこんな厄種となったのか、のいずれもがよくわかりません。一応書無理にでも書いていておけば宋書は南斉〜梁の時代に編纂されたので、梁に国を譲る南斉の権威があんまりにもドン底なもんだから「少しでも劉宋の権威を下げることで相対的な南斉の権威の底上げする」があった、と言えるのかもです。もうこれは、わかんないなりの牽強付会です。
なおここで、先日李勢のところで紹介したブログのオーナーである小川茂樹氏による劉彧まわりの境遇についてのツイートを共有します。劉子業が関わってるわけでもないんですけど「えっこういう世界なの劉宋宮廷……」の煮凝りみたいで最悪で最高なので。
「あなたの兄は母と密通している。その女性は生母を早くに亡くしたあなたにとって育ての母である。義母はあなたのことを優しく養育してくれた。あなたが政争の末に帝位に就いた後、義母は生き残っている兄の子の一人を皇帝に即位させようと思い、あなたを毒殺しようとした。
この時の劉彧の心情を答えよ」
x.com/DasimafuOpDiary/status/1994207603933528311
いやあ、怖いですねえ劉宋宮廷……このような国は滅びねばならない……。
○5位 侯景(503-551-552 南北朝後期・宇宙大将軍)
侯景の乱で梁を壊滅させ、極めて残忍。大量虐殺。(DeepSeek)
降伏詐欺→反乱→傀儡皇帝乱立→飢餓と虐殺の放置。餓死・虐殺・宮中凌虐とフルコース。クソ君主どころか文明災害枠。侯景の乱で梁王朝と江南貴族社会を物理的にぶっ壊す。建康は廃墟化し、以後「南朝が北朝を主導する」可能性は実質終了。(ChatGPT)
宇宙大将軍。南朝貴族社会を物理的に破壊・餓死させた。魏晋南北朝最悪のジョーカー。(Gemini)
梁朝を壊滅させ、江南を荒廃させた。大量虐殺、武帝の餓死放置。武将出身で皇帝簒奪。(Claude)
南朝梁を崩壊させ皇帝餓死。「宇宙大将軍」自称の狂気。反乱で国家破壊。(Grok)
南梁を滅ぼした叛臣、暴虐の象徴。(Copilot)
順位46:わりと一致
みんな大好き宇宙大将軍!
直近のトピックスだと週刊少年ジャンプ『逃げ上手の若君』で名前が登場して界隈がざわついていました。いっぽうここで「え、実在してる肩書なの!?」とビビってる方が結構いらっしゃり、「まだまだ知名度が低くてキツ伸びしろがあっていいなあ!」と感じた次第です。ちなみに宣伝ですが、宇宙大将軍を主役にしたアンソロジーに参加したので読んでね!
宇宙大将軍侯景SFアンソロジー 梁は燃えているか 大恵和実(編) - 志学社
www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909868206
さて侯景ですが、悪魔化する必要がないですね。悪魔そのものです。結果が「南朝を破滅させ、隋の統一への入り口を開いた」としか言えませんので、この位置にくるのはごく当たり前です。そしてあえて「皇帝」という評価に絞れば、劉劭すら相手にならない、最大火力のワンショットクソと言えます。
ここでひとつ、不思議なことがあります。これだけの悪魔を滅ぼした勢力が、歴史語りだと全然、驚くほど存在感を示さないんですね。つまり元帝蕭繹、その統率下で実際の武力として活躍した王僧弁、そして陳霸先のことですが。たぶんこれは北朝、則ちほぼ隋にとって、結果として侯景は救世主なことによるのかな、と思いました。もちろん北朝は北朝で侯景にひどい目にあっています。けど南朝の弱体化という功績が、あまりにも大きすぎる。なので侯景滅亡後のてんやわんやも「仲間割れののちに摩滅してますねガハハ」みたいになってる気がします。
侯景まじ南北朝最悪の悪魔にして天使。
○4位 石虎(295-334−349 五胡前期・後趙武帝)
後趙を衰退させ、極めて残忍な統治。大量虐殺や虐待。(DeepSeek)
重税・大土木・後宮収集・殺戮。史書からして「殺しすぎ」。虐殺・凌遅系エピソードが多すぎてボーナス確定。(ChatGPT)
建築のための強制徴用で民衆大量死。後趙を事実上滅亡へ導く。
息子の肉を食べる、美女数万収集、終わらない狩猟。五胡十六国の悪の象徴。(Gemini)
後趙乱世。美女集め・生贄・食人級残虐。家族殺し多数。(Grok)
残虐な暴君、後趙を衰退させた(Copilot)
順位47:わりと一致
言うまでもなく、五胡最悪の君主……と呼ばれる人。五胡十六国を語りたきゃこの人の悪行語っときゃええやんみたいなノリがあるんですが、ぶっちゃけその辺かけらも興味ないのでスルーします。ではここで何をするのか? そりゃもちろん、どれだけこのひとに悪魔化されるべき背景があったのか、です。結論としてここが倍率ドン、更に倍過ぎて爆笑です。
まず、立場ですね。後趙がどういう国か。西晋から東晋に逃げ落ちようとした官僚集団を襲撃して虐殺しました。そして洛陽を燃やしました。東晋の北方を守る遊軍たちを次々に潰して長江近くまで迫りました。もうこれだけで東晋にとっては怖いし憎むべき相手です(ちなみにこれらの事績ははすべて石勒に帰されるんですが、石勒はそれよりも立志伝中の人として讃えられることが多いです。なんだったらこの後に語る石虎の悪魔化の理由として、石勒伝説を踏みにじった、があったとすら想定が許されるレベルです)。更に前燕にとってもいきなり攻め込んできて城を包囲され、あわや攻め滅ぼされかけた国です。
ここで東晋は後の南朝の端緒、文化等は基本的に南に継承されていちおう正統扱い。かたや前燕は、その官僚集団が北魏に吸収され、その系譜の末裔が北斉皇帝家となっています(笑)(※後燕に仕えた渤海高氏の名士を高洋の先祖に設定しているのだが、ンなわきゃねーだろと総ツッコミを受けている)。つまり南朝史観、北朝史観のどちらからもバチクソに悪魔化されるに値する属性持ちでした。以上を踏まえて、ではエピソードをどう見ますか? となるわけです。
現代のあれこれを見てても、人間の宿痾みたいなものを感じるんですよね。いわゆるマスメディアの偏向報道が大ッ嫌いなひとでも、それ以上に嫌いな政治家や実業家についてそのメディアが叩き出したら、ホイホイ信じ込むんです。つまり嫌いなやつを叩くためなら情報ソースはわりと胡散臭くてもいい。たぶんこれ、情報流通が生まれたそばからずっとこのまんまだと思います。人類数十万年の歴史のうちたかだか千五百年ちょいで性質なんて変われるはずもありませんからね。
ともなれば、石虎の記事なんて南北どちらから見てもどんなうんこが混じってるんだかわかったもんじゃありません。最悪の立場のやつだから最悪に書かれた、以上の何を信じられるでしょうか。ってもう、これはいままでにも散々にこすってきたことですけど。
そして逆説的ですが、だからこそこのイメージは保管されねばならない。これも劉禅のところで書きました、我々もそれをやる。なんだったら今まさしくそれが募り得ます。なぜか?
普通に考えて、戦争の危機がじわじわ迫ってますよねいま、あっちこっちから。これ、怖くないです? 俺は怖いです。恐怖及び不安が募れば、人間は恐怖の対象を嘲り、見下すことによって実際の効力から目をそらし、過小評価します。怖さをごまかしたいから。でも、結果何が起こるか。いざ攻め込まれたときに大したことがないと思い込みたかった相手に迫られる。ここで、期待を裏切られた逆ギレで相手への悪魔化が進みます。
平和慣れしている我々は、おそらく外部からの侵攻を受けたときに、驚くほど脆いです。主に心が。簡単に敵、どころか隣人まで悪魔化しかねない。ここを、前提として考えねばならない。
歴史で、クソ君主で笑いましょう。楽しいです。けど一方でこれも見てほしいなって思います。「我々はどのようなメカニズムで他者を悪魔化してしまうのか」。それをあらかじめ知っておけば、まだいざというときの疑心暗鬼がマシになるでしょう。
同時にこれは、他者がこちらを悪魔化しかねない、までセットで考えないと片手落ちという話にもなります。他者を悪魔化せず、その上で他者が誰かを悪魔化せずに済む。そのような道筋を少しでも考えていきたいな、と思ってやみません。
○予告
すでに申し上げたとおり、明日の SSS 3名、苻堅・元宏・蕭衍はあとがきみたいなものです。この3名は悪魔化などするまでもなく極悪なまでの結果を自らの手で形成しました。それぞれ最良の結果のために頑張りました、は結構。で、死んだ人たちはそれで浮かばれるんでしょうか。
頑張る、頑張らないにかかわらず、結果はもたらされてしまう。それはある意味で仕方ないのかもしれない。けど、だからといってその責任から免責されるのは違うでしょう。
明日、そういう目で3人を見ます。まあ一番この企画で書きたかったことは石虎のところで訴えましたので、明日はもうちょいゆるふわになる……
と、いいなあ★




