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結衣ちゃんは呪いの神様に憑りつかれてしまった!  作者: けろよん


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第17話 呪術師の戦い

 結衣は窓から身を乗り出すように外を見た。

 夏実は取り乱す様子もなく真っすぐに敵に向かって飛び掛かっていく。

 その態度は冷静で自信に溢れていて、今までに何度もこうした事態に対処してきたベテランの風格を伺わせた。


 夏実の周りに立つ黒い影――それは、巨大な呪詛生物だった。

 飛び込んできた獲物を捕らえようと次々と実体化して姿を現す。

 鋭い爪と歪んだ目、膨れ上がった背中からはどろりとした瘴気が湧き出している。


「どうしよう……!」


 結衣は焦り、頭がパニックになりそうだった。

 今までの敵は単体で現れていたが、今回の敵は背が高く複数いる。加勢した方がいいのだろうか。

 迷っている間にも夏実が一番近い正面の相手に接敵し、手に持つ錫杖を鋭く振るった。


「黒光一閃!」


 瞬間、黒い稲光が迸り呪詛生物を木っ端微塵に粉砕した。


「何今の……?」


 結衣は呆気に取られていた。夏実が錫杖を振るったかと思えば黒い光が迸って巨大な敵がたった一撃で砕け散った。そうとしか見えなかった。


「これくらい何でもないわね。ここは任せて!」

「うん」


 夏実が振り返って下からそう言ってくるので結衣はここは任せる事にした。

 さっきまでは呪詛生物の方が強そうに見えたのに、今では狩られる獲物となったのは奴らの方だった。

 そう判断した敵が逃げようとするが、夏実は逃がさなかった。


「領域結界・闇帳!」


 彼女の動作には無駄がない。敵の集団ごとこの一帯を闇の空間へと閉じ込めて逃げ道を無くしてしまう。

 隔絶された結界の中で、呪詛生物はもう影に溶け込むことも出来なくなってしまった。


「次はあいつ!」


 夏実はまるで風のように飛びかかる。

 身体を軽くひねり、足を蹴り上げるようにして呪詛生物を吹っ飛ばす。

 その動きはまさに流れるようで、何もかもが計算されたようだった。


「すご……!」


 吹っ飛んだ呪詛生物が結界の天井に当たって砕け散る。

 結衣は目を見開いた。夏実はすぐに次の術を発動してまた一体の敵が消えた。

 さっきまでの気楽な態度とは裏腹に、彼女の動きはまさにプロそのものだった。


 空中で足をひらりと翻し、夏実は呪詛生物の背に飛び乗る。

 その姿は、まるで呪詛生物を“狩る”ために生まれたかのような優雅さと力強さを兼ね備えていた。


「グオオオオォッ!!」


 呪詛生物は驚き、鋭い爪を振りかざして反撃しようとしたが、夏実は素早くその攻撃をかわし、呪詛生物の首元に向けて印を結ぶ。


「天迅斉射光!」


 瞬間、空間から光の矢のようなものが放たれ、呪詛生物の体を次々と貫通していく。

 黒い瘴気が一瞬にして蒸発し、呪詛生物はその場でビクッと体を震わせて消滅する。

 夏実が着地すると同時に周囲を残りの呪詛生物達が取り囲んだ。逃げられないと判断して一斉に掛かるつもりなのだろう。

 だが、恐ろしい怪物に囲まれても夏実の冷静な態度は変わらなかった。

 彼女は再び印を結び、深く息を吸い込む。


「これで終わりよ」


 そして、強い力を込めた呪文を唱えながら、呪詛生物に向かって両手を広げた。


「火極・焰羅獄!」


 その言葉と同時に、現れた阿修羅像のような魔人の手から猛烈な火の玉が放たれ、残りの呪詛生物達を全て包み込んだ。

 その炎はどれだけ暴れて悶えようと止まる事はない。呪詛生物の体が猛烈な炎に焼かれていくと、まるで溶けるように姿が崩れていった。


 その光景に結衣は目を見張った。

 こんなにも速く、そして力強く複数の呪詛生物を仕留める様子を見たことは初めてだった。

 あの郷土研究部の人達でも三人で一体の呪詛生物に苦戦していたのに。これがプロの実力というものか。

 呪詛生物は最終的に炎に包まれ、全て消え去った。

 夏実は煙を上げる場所に立ち、息を整えながらゆっくりと術式の結界を解く。そこには普段と変わらない何の被害も出ていない街並みが戻ってきた。


「ふぅ……これで一段落ね」


 あの結界の術には自分の力で町を破壊しない効果もあるようだった。

 結衣はその姿を見て、心から驚きの念を抱いた。


「すごい……夏実ちゃん、本当に凄い術師だったんだ」


 夏実は微笑み、身を軽くする術を使うと軽やかに結衣の部屋へと戻ってきた。


「どう? 少しは私の実力を信じてもらえたかしら」

「うん、凄かった。本当にプロみたいだった」

「当然よ。私の家系は呪術の専門家だから」


 その言葉に、結衣は少しだけ安心した気持ちになる。

 しかし、そのすぐ後、不安な顔にさせられてしまった。


「それじゃあ、あなたと呪いの関わりを初めからじっくり聞かせてもらおうかしら」

「ええーーー……」


 結衣はその言葉にまた胸を締め付けられるような感覚を覚えるのだった。

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