8話
「ミサキ様?」
アンバーの不思議そうな声に、三咲は我に返る。
とにかく、神具にする方法は解った。
あとは、バトルホースの方だけど、それについては、ステータス画面の先へ目を滑らせて、一瞬で確信していた。
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【従者】アンバー(神狼族)、名無し(魔物種・バトルホース)、名無し(魔物種・バトルホース)
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バトルホースたちの記載があった従者の欄を見ながら、今度は明確に意向を心中で唱えれば、まもなく予想通り追加のウィンドウが表示される。
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従者の、名無し(魔物種・バトルホース)を二頭、一括で神馬に登録しますか?
はい / いいえ
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きっと、「はい」を選択したら、彼らは二度と引き返せない。
そんな予感がして、三咲はバトルホース二頭に問いかける。
「君らは本当に私の神馬になっていいの?」
私のことをよく知りもしないのに。
本当に後悔しないのだろうか?
そんな三咲の懸念に怒るように、バトルホースたちは嘶いた。
「そっか。ごめんね。君らの覚悟を侮ってた。
私の馬車をずっと引いてくれる?」
ブルル!とタイミングよく鳴くバトルホースに、三咲は軽く触れた。
「名前を贈ってもいい?」
穏やかな目で、こちらを見ている彼らに、三咲は、それぞれホルスとオシリスと名づけた。
名前のもとは、エジプト神話の空の神と、大地の王だ。
ちなみに、兄弟神なので、彼らにはちょうどいいだろう。
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【従者】アンバー(神狼族)、ホルス(魔物種・バトルホース)、オシリス(魔物種・バトルホース)
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ホルスとオシリスを神馬に登録しますか?
はい / いいえ
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今度は迷わず「はい」を選ぶ。
こげ茶のまだら色だったバトルホースは、見る見るうちに肌を白く変えていく。
厳めしい顔や大きな体躯はそのままに、鬣は美しく、彼らは純白の馬に変貌した。
その見た目の美しさと言ったら、権力者は彼らを欲しがるだろうなと、思わずにはいられなかった。
バトルホースは、ソレイルの記憶によると、人族には恐れられている。
人族のつけた魔物のランクでは、Bランク級の強さで、よく訓練された兵が十人がかりで、ようやく勝てるぐらい。
しかも、気性も荒く、人が近づくと暴れるので、見かけたらまず退路を確認するべしという教えがあるらしい。
なので、珍しい上に美しい彼ら神馬は、必ずもめごとの種になるだろう。
まあ、でも、もう私のだから、誰にも渡すつもりはないけれど。
自分の中に強い独占欲があることに気づくが、神になったのだから、まあそれもそうだろうと放っておく。
古今東西、神々の執着というものは、恐ろしいものだから。
続いて、三咲は、古びた馬車に触れて、神具に登録し、馬車を真新しい白い馬車に変えた。
縁に金で装飾されており、服も馬も馬車も白で統一されたことで、三咲はより神聖さが増した。
本人は気づいていないが、三咲は神気をまとっているせいで、他者からは、美しく神々しいものととらえられる傾向にある。
そこに、さらに神聖な白をまとい、見る人にはバレバレであった。
鈍い人族は、それでも神と気づくものは少ないだろうが、貴人程度には確実に間違われるだろう。
少し離れた木陰で、様子を見守っていたソレイルは、ため息を吐くと、アンバーに渡す追加の金品と、大人しめの侍女服を取りに立ち上がった。
平民や商家ならば、しばらく食うに困らぬ金品は渡したが、貴人や王族となると、不安な量だ。
勧められる宿なども、それこそ天と地ほど違う。
ソレイルは、改めて、必要なものを取りに向かったのだった。




